Distant Satellites / Anathema

Anathema-Distant-Satellites

Release : 2014/6/4

Genre : Post / Progressive Rock

Samples : The Lost Song part 3

Tracklist :

1. The Lost Song Part 1

2. The Lost Song Part 2

3. Dusk (Dark Is Descending)

4. Ariel  ★オススメ

5. The Lost Song Part 3

6. Anathema

7. You’re Not Alone

8. Firelight

9. Distant Satellites

10. Take Shelter

英ポスト・プログレッシブ・ロックバンド、Anathemaの通算10枚目となる新作。

2010年作「We’re Here Because We’re Here」から本格的に始まったAnathemaの『Post – Progressive』への求道は、前作「Weather Systems」で一つの頂点を極めたかのように見えました。ヴィンセント・カヴァナーとリー・ダグラスによるエモーショナルなヴォーカル、美しさ極まるオーケストレーション、そして楽器隊の清廉ながらも感情を掻き毟るような鬼気迫る演奏・・・これらが個々の楽曲でしのぎを削るかのようにせめぎ合い、結果として美しくも非常に密度の濃い緊張感のある傑作「Weather Systems」を生み出しました。そのあまりの完成度の高さに2012年のベスト・アルバムに挙げた音楽好きの方々を数多く目にした覚えがあります。

そんな傑作の発売から二年、早くも新作「Distant Satellites」を手に入れる機会が訪れるとは思ってもみませんでした。何せ前作があれだけの出来だっただけに、新たな作品を作り上げるのには相当なスパンが必要なのではないかと思っていたからです。アーティストとして最盛期を迎えている彼らにとっては、積極的なライブ活動を行いながら新作を練り上げるのにも2年という期間は十分過ぎたようです。

サウンド面では、本作「Distant Satellites」も近作の流れを引き継いだものとなっており、天上から降り注ぐような極上の美しいメロディーを配した、Anathemaらしく後半にピークを持ってくるプログレッシブロックをベースとしています。ただ、アルバム後半(♯7~♯10)ではバンドサウンドを大きく廃し、エレクトロニクスを大胆に導入した実験的な楽曲が並びます。7th「Natural Disaster」からの流れである程度予測は出来た傾向ですが、慣れていない方はここで多少、面食らうかもしれません。

本作で最も耳を引くのは、ヴィンセント・カヴァナーとリー・ダグラスによる過去最高にエモーショナルな「ヴォーカル」ではないでしょうか。暗闇から浮き上がってくるかのような臨場感と美しく透明感のあるヴォーカルは本作最大のポイントといって良いでしょう。むしろヴォーカルに合わせて全体のサウンドメイクを行っているような気さえします。また荘厳で美しいオーケストレーションはさらに大胆に導入され、ヴォーカルを引き立て、共にメロディーを引っ張ります。

逆に言えば、「ヴォーカル」にピントを合わせている分、それ以外の部分はやや引き立て役に徹してしまっているように思えます。安易に「歌モノ」と評する気はさらさらありませんが、過去作と比べバンドとしてのアンサンブルを余り感じることが出来ず、その点は残念に感じました。メロディーは前作と遜色無く素晴らしいのですが、あの伸びやかに唄うギターや躍動感のあるドラミングが、本作では鳴りを潜めているのはやはり寂しいですね。

そして本作で物議を醸しそうなアルバム後半の実験曲群ですが、本作のアルバムタイトルやジャケットアートから抱く宇宙的な感覚には作風がマッチしているため、意外と作中には溶け込んでいるのではないかと思います。しかし曲単体として見れば、やはり「ロックバンドとしてのAnathema」を感じさせてくれる楽曲をメインに作ってくれた方が、個人的には歓迎できる流れかなと思っています。ただ、♯10. Take Shelterはエレクトロニックな曲ながら、「バンドとしてのAnathema」も感じさせてくれるハイブリッドな一曲で面白いと思いました。今後の作品でもこういった曲が一曲くらい入っていると、よりワクワクしながら作品を楽しめるかもしれませんね。

全曲中、最も気に入っているのは♯4. Ariel。ピアノの音色をバックに、まるで恋人に愛を囁くように麗しく歌い上げるリー・ダグラスの歌唱から、徐々に盛り上がっていき、後半、リーの呼びかけに応えるようにヴィンセント・カヴァナーのエモーショナルで力強いヴォーカルがカットインされ、楽曲は最高の盛り上がりを呈します。最後にヴィンセントとリーが、まるで夫婦が熱く語り合うかのようにデュエットし、天にも昇るようなギターソロが挿入される場面では、思わず涙腺を抑えてしまいます。”Anathemaのバラードに外れ無し”をまたしても裏付ける一曲です。

作品の個人的な総評としては、全体のクオリティは傑作である前作に及びませんが、メロディ自体は前作に負けず劣らず、またヴォーカルとオーケストレーションはよりパワーアップしており、全体的に落ち着いた作風の中で光を放っています。ただ一方で”バンド感”がやや減退していたのが残念な点でした。しかし非常にクオリティの高い作品であることには変わりなく、また久々に国内盤も出ており実力の割に国内で知名度の低いバンドなので、知らない方は是非本作を機会にAnathemaに触れていただきたいですね。それだけの価値ある作品であることは確かです。

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