Hand. Cannot. Erase. / Steven Wilson

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Release : 2015/2/25

Genre : Post Progressive Rock

Samples : “Perfect Life”

Tracklist :

1. First Regret

2. 3 Years Older

3. Hand Cannot Erase

4. Perfect Life

5. Routine

6. Home Invasion

7. Regret #9

8. Transience

9. Ancestral  ★オススメ

10. Happy Returns

11. Ascendant Here On…

12. Perfect Life[Grand Union Mix]

ポストモダン・プログの旗手としてPorcupine TreeNo ManBlackfieldおよびソロ名義等での精力的な音楽活動だけでなく、プロデュース業や数々の古典的プログレッシブ・ロックのリマスタリングを担い、更には“Post Progressive”を標榜しAnathemaやNosound、来日を控えるPineapple Thief等を擁するレーベルKscopeの主催者でもあるという、プログレッシブロック界屈指のハードワーカー、Steven Wilsonの4枚目となる最新作。

Porcupine Treeの活動休止から主にソロ名義での音楽活動に専念してきたウィルソンですが、前作「レイブンは歌わない」こと「The Raven That Refused To Sing」(2013)では比較的オールドスクールなプログレッシブロックをリスペクトしたモダン・プログの極地とも言える内容で、同系統の作品群の中でも圧倒的な完成度を誇っていました。実際、英プログレ雑誌「Prog Magazine」が主宰するアワード『Progressive Music Award』ではその年の年間ベストアルバムを受賞するなど、世界中のプログレファンから歓迎され評価された作品でもあります。

ウィルソンの70年代プログレ愛が炸裂した前作、そしてその評価と完成度を鑑みても今回「The Raven~Part2」を作ることは容易だったはずです。しかし前作でオールドスクール・プログレの模範を極めた彼は、それまでの音楽的経験・音楽性の断片を総動員してジャンルの壁を打ち破る”Post Progressive”への本格的一歩を踏み出しました。おそらくその最初の纏まった成果が本作「Hand. Cannot. Erase.」であり、彼のキャリアの中でも特に重要なピースとなりうる作品です。

本作はコンセプトアルバムで、とある女性がロンドンのアパートで孤独死後3年間発見されなかったという悲劇的な実話からインスパイアされた内容らしく、都会で誰にも気付かれず孤独な死に苛まれてしまうような女性について歌われたもののようです。光と影が交差するような美しくも霊妙なサウンドスケープは、容易にこの世ならざる風景を映し出し聴き手を非現実へと誘います。作中に散りばめられたエレクトロニクスやデジタルビート、一部の楽曲で聴かれるポップとすら表現できそうなメロディーラインは往年のプログレッシブ・ロックファンにとってはもしかすると面食らうものかも知れませんが、彼の活動暦を鑑みると決してあり得ない手法ではなく、むしろ”光”と”影”によるサウンドプリズムを生み出すためには極めて有効で、また必要不可欠な要素であることが分かります。

Porcupine Tree時代からの魅力の一つでもあるシニカルな文学性や、要所でカットインされるエッジの効いたハードなサウンドも健在。爽やかさを感じるポップネスはBlackfieldのようであり、アンビエントな音響空間と銀盤による深遠美はNo Manのようでもある、まさに彼のキャリアの集大成とも言える内容。前作と同じ演奏陣によるハイテクニカルな演奏による高揚感と、フェミニンとすら言える柔らかな美しさ、そしてその影で不穏に蠢く闇が凝縮され構築された、一つの生命体として”生きているような”作品です。

古典的なプログレッシブロックを吸収し、他方で培ってきた音楽性の断片をボーダーレスに組み合わせて新たな現代音楽へと昇華・再構築した、世界で彼にしか作りえない見事な傑作。本作をもって、まさしく彼は“Post Progressive”の体現者に上り詰めたのではないかと思います。

コメント

  1. GAOHEWGII より:

    M.A@yugenmelodies様 こんばんは

    Porcupine Tree活動休止以降、ソロには手を出していなかったのですが
    去年のカバー集で再び興味を持ち、本作も気になっています。

     リーダー・トラックの「Perfect Life」おすすめの「Ancestral」、両方を聴いてみましたが
    モダンなアレンジながらジェネシス→マリリオン→の流れを感じさせる
    ドラマティックさは健在ですね。
    買ってみます。

    • コメントありがとうございます。
      Porcupine Treeの作品群の中で敢えて似ている作品を挙げるとすれば、「Stupid Dream」が近いかもしれません。
      前作も非常に評価された作品ですが、彼のオルタナティブな感性に惹かれていた私としては本作の方をよりオススメしたいですね。

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