Nosound “Scintilla”
Release : 2016/9/2
Genre : Post Progressive Rock
Samples : “Emily”
Tracklist :
- Short Story
- Last Lunch
- Little Man
- In Celebration of Life ★オススメ
- Sogno E Incendio
- Emily
- The Perfect Wife
- Love Is Forever
- Evil Smile
- Scintilla
イタリア出身のマルチインストルメンタリスト兼作曲家、Giancarlo Erra率いるプログレッシブロックバンド、Nosoundの5thアルバム。
元々はGiancarloのソロプロジェクトであったNosoundは、2002年頃からメンバーを集めてライブバンドとしての活動を開始、2005年に1stフル『Sol29』をリリースしてから本作に至るまで、計4枚のフルアルバムと3枚のEPをリリースしています。2ndフル『Lightdark』のリリースと同年にKscopeレーベルと契約、その後リリースされた3rd『A Sense of Loss』はセピア色の幻想的な音景をもたらしてくれる名盤でした。続く4th『Afterthoughts』も清らかなアコースティックギターやストリングスの調べと穏やかなヴォーカルワーク、そして力強いドラミングが光る美しい好盤で、まさにKscopeへ移籍してから怒涛の勢いで成長を続けているバンドと言えましょう。3rdアルバムで悲哀の音楽を極めた彼らが、4thアルバムで淡く穏やかな色彩のメロディーをメインに据え始め、続く新作ではどのような進歩ぶりを見せてくれるのか楽しみにしていました。
そして予想通り、『Scintilla』も前作の延長線上にある作品となっています。セピア色に染まった景色の中で、子供のはしゃぐ姿が眩しいジャケットアートのような、無垢な美しさと懐かしさ、そしてその影に差す哀愁や切なさまでも感じさせる奥深い作風です。3rdまでの過剰なオーケストレーションやストリングス、のしかるようなシンセサウンドは全て抑えられ、ドラムとベース、ヴォーカル、(アコースティック)ギターが主導するミニマルなアンサンブルへの効果的なカットインに収まっていて、彼らの作り出す音楽が新たな局面へとシフトした事が伺える内容となっています。さながら”音の壁”のようだった過去の諸作から、音の”隙間”を意識したソングライティングに変わった事で曲に深みが生まれ、リスナーが曲の世界観へと没入する助けとなっています。
前々作~前作までの美点を凝縮したかのような秀曲#2. Last Lunchや#3. Little Man、#6. Emilyをはじめ、イタリアンな情念深いサビが魅力的な#5. Sogno E Incendio、アコースティックギターとピアノの旋律が幻想的に木霊するバラード#10. Scintillaも素晴らしい。また#4. In Celebration of Lifeおよび#7. The Perfect Wifeでは、AnathemaのヴォーカリストVincent Cavanaghがゲスト参加しており、そのエモーショナルな美声を存分に披露してくれます。特に#4. In Celebration of Lifeは前作のナンバー「Paralysed」のギターソロのアレンジが引用されているのですが、個人的に気に入っているギターソロなので二重に嬉しいサプライズとなりました。
前作の余分な角を取ってバランスを整え、磨き上げた逸品。個人的には前々作と並ぶ完成度を誇る名作だと思います。AnathemaやThe Pineapple Thief等と比べると少しとっつき難い音楽性ではあるものの、彼らのファンであるならば是非Nosoundもチェックしてみてください。特に本作(や前作)には親しみやすい穏やかなメロディーが多く、彼らの独特の世界観にもすんなりと入っていけるはず。
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