Winter’s Gate / Insomnium

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Release : 2016/9/23

Genre : Melodic Death Metal

Samples : Album Trailer

Tracklist :

  1. Winter’s Gate  ★オススメ

フィンランドのメロディック・デスメタルバンド、Insomniumの7thアルバム。バンドのヴォーカル/ベーシストであり詩人でもあるニーロ・セヴァネンが執筆し、フィンランド国内で多数の権威ある賞に輝いたオリジナルストーリー、”Winter’s Gate”を楽曲にした1曲・40分のコンセプト作品。

メロディック・デスメタルが全盛だった2000年代前半において、彼らはそれほど目立つ存在では無かったと思います。シーンを代表するようなバンド達の多くがモダンな作風へと舵を切っていく中で、彼らはメロディック・デスメタルの原点に忠実な、北欧の土臭さを残すトラディショナルなメタルサウンドを守っていました。モダンな洗練性が求められた当時の潮流とは真逆の作風だった彼らは、メロディック・デスメタルにかなり思い入れのあるマニア層により受け入れられるようなバンドでした。メロディック・デスメタルがメタルの入口だった私も幾つか彼らの音源を買いはしましたが、やはり当時の潮流に思考が染まっていた為かそこまで熱心に聴く事はありませんでした。

しかし、2009年にリリースされた歴史的傑作『Across the Dark』を皮切りに大きな躍進を果たし、ブームも落ち着き疲弊していたメロディック・デスメタルのシーンで一際の輝きを放つようになりました。嘗てのトップバンド達が軒並み勢いを落とす中、重鎮であるDark Tranquillityと並んで飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けています。『Across the Dark』以降は持ち前である哀愁と悲哀が入り混じるメロディーラインを、ミドルテンポ主体の洗練されたソングライティングとクリーントーンの美しいアンサンブル、そして澄み切ったクリアなサウンドプロダクションによって最大限に活かす独自のスタイルを築き、その後のアルバムも全て高クオリティーを維持しています。本作も1曲40分という挑戦的なアルバム構成だというニュースに最初は驚いたものの、彼らの才能があれば挑戦を乗り越えてきっと素晴らしいアルバムにしてくれるだろうという、大きな期待をもってリリースを待っていました。

本作の基になる”Winter’s Gate”は、とあるヴァイキング船団が冬の危険の中、アイルランド西にある伝説に名高い島を発見しようとする物語。楽曲の冒頭は凍てつく寒さが身に染みるような冷たい風のSEに始まります。イントロを抜けると、ブラストビートとCatamenia顔負けのエピックなトレモロリフが疾駆し、幻想的なシンセが美しいヴェールを張る、ヴァイキングの勇壮さと大胆さを再現したような苛烈なアンサンブルで物語の幕が上がります。6分を過ぎるとアコースティックギターの不気味で艶かしい旋律に彩られた、より神秘的なサウンドスケープへ。ギターフレーズや勇壮なヴォーカルの詩的な美しさが目立つものの、今後の展開でガラリと雰囲気が変わる事を予感させます。13分前後には、ループするミニマルなギターリフと儚く明滅するような銀盤による美しい一幕を挟みつつ、重いアンサンブルが支配するダークでヒロイックな場面へと切り替わり、中盤になると分厚いクリーントーンのコーラスとアコースティックギター、エレクトリックギターの叙情的なハーモニーが本作最高潮の美しさを産み、ハイライトを迎えます。24分頃からはクライマックスへ近づいている事を感じさせる、スローテンポ主体の重厚感のある内容に。前作『Shadows Of A Dying Sun』の”While We Sleep”からのアレンジメロディーも登場し、少し感慨深い気持ちにもさせてくれます。30分前後からは幾重に折り重なったトレモロギターと鬼気迫るヴォーカルワーク、ブラストビートを織り交ぜたアグレッシブなドラミング、それらを彩るこぶしの効いたギターソロや神秘的なシンセサウンド、コーラス、厳かなSEを全て織り交ぜて嵐のように激しく・荒々しく駆け抜けていきます。そして最後はアコースティックギターとピアノのうら悲しい旋律で、”Winter’s Gate”の物語は静かに幕を閉じるのです。

40分間における起承転結を、1曲という枠内に収めた事は必然に近かったのではないでしょうか。歌詞が分からなくてもその世界観へどっぷり嵌まり込めるほど完成度の高い物語です。その連続性を絶ってまで曲を分割するよりは、1曲に収めてしまった方がより没入できるに違いありませんからね。そして何より本作を傑作たらしめているのは、1曲40分の間で一瞬も飽きさせないソングライティング能力の高さ。いつもハイレベルな作品を投下してくれるし凄まじい才能だとは思ってましたけど、本作を聴いてスゴイを通り越してちょっと引きました。ここまでの逸材はメタルシーン全体を見渡しても中々いないんじゃないでしょうか?今までInsomniumが積み上げてきたものを全て凝縮したかのような、抗いがたい魅力が40分の中にぎゅうぎゅうに詰まっています。個人的には『Across the Dark』にも並ぶ傑作として推したい逸品です。

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