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Blindead “Ascension”

2016年11月9日

Release : 2016/10/25

Genre : Progressive / Post Metal

Samples : “Hearts”

Tracklist :

  1. Hearts
  2. Hunt
  3. Horns
  4. Wastelands
  5. Pale
  6. Fall
  7. Gone
  8. Ascend  ★オススメ
  9. Hope

ポーランドの港湾都市Gdynia出身のプログレッシブ/スラッジメタルバンド、Blindeadの5thフルアルバム。前々作、前作に引き続き、地元ポーランドのレーベルMystic Productionからのリリースです。

2011年リリースの前々作『Affliction XXIX II MXMVI』で初めて彼らの作品を聴いたとき、重力の塊のようなリズムセクションとヒリついたディストーションギターが鼓膜を貫き、灯火のように儚く現れては消えるシンセやアコースティックギターの音色がじんわりと心を焦がしてくれる、ただひたすらに退廃的な美しさを追求したサウンドスケープに魅了されました。当時の彼らはまるでCult Of LunaとKatatoniaの美点を集約したかのような、重厚にして耽美、深遠でいて構造的な、贅沢な二面性を兼ね備えたバンドでした。ところがその2年後にリリースされた前作『Absence』では、過剰なギターサウンドの歪みやドラムの音圧を抑え、代わりにポストロックや同郷のRiversideにも通ずる美しいギターリフレイン、アコースティックギターによる哀愁の調べ、リバーブによって美しく化粧付けされたクリーントーンのヴォーカル、そして浮遊感を持たせたシンセサウンドが支配する、アトモスフェリックなプログレッシブロック/メタルへと変貌を遂げていました。一聴した際には表面的な変化に対する驚きが勝りましたが、彼らの本質的な魅力はむしろ磨き上げられ、変貌というよりも先鋭化と呼ぶに相応しい進化を果たしていました。

そして3年振りとなる本作は、大まかには『Absence』の延長線上に身を置きながらも、メタル~ポストロック~アンビエントまで振り幅を広げたサウンドアレンジ、そして無音が生み出す余韻や揺らぎを最大限活用したソングライティングによって更なる先鋭化を果たし、映画のサウンドトラック顔負けの広大な音響で、彼らの十八番である悲哀の世界観をどっぷりと堪能できる傑作。彼方まで透けて見えそうな透明感と奥行の広さが、彼らの描く退廃的なメランコリック・メロディーをこれでもかと引き立てます。

タムとバスドラムの低音が支配する重量感のある空間に、美麗に輝くギターやSE、祈るように歌い上げる歌唱が次々と現れては溶けていく、多幸感と退廃感の入り混じったオープニングナンバー#1. Heartsに始まり、ヒリヒリした緊張感を背に、粗いノイズを纏ったギターが気だるげなヴォーカルを乗っけて津波のように押し寄せてくるアグレッシブナンバー#2. Hunt、圧倒的な手数で嵐のようにビートを刻むリズム隊に対し、浮遊感のある歌唱でアトモスフェリックな叙情を演出するヴォーカルが対比的に浮かび上がる#3. Horns、クリーントーンの美麗な歌唱とギターフレーズ、漂いながら神秘的に輝くシンセサウンドが、純度の高い退廃美を描くバラードナンバー#4. Wastelands、攻撃的で重厚な演奏の中に、悲哀の滲む歌唱とアコースティックギターの音色が覆い隠されるように潜む慟哭のナンバー#5. Pale、不定形なノイズと絶叫を交えた歌声が朗々と木霊する小曲#6. Fall、霧のように薄く広がるシンセを下敷きに、ヒラヒラと光が舞うようなギターフレーズがこの世から切り離された霊妙な音像を作り出す#7. Gone、星の瞬きのように儚く輝くシンセとベース、アコースティックギターと揺蕩うヴォーカルによる調べが美しい中盤までの流れから、徐々に厚みと熱を帯びていく演奏が、巨大なグルーヴを伴って最高潮のボルテージへと上り詰めていく壮大なハイライトナンバー#8. Ascend、そして痛切な叫びを交えたエモーショナルな歌唱がアコースティックギターのさざ波に揺らめくラストナンバー#9. Hopeまで、張り詰めた緊張感が支配する珠玉のメランコリックチューンがひしめいています。

過去3作の中では最も型にはまらない、破天荒な作品だと思います。隙間のない構造的な精巧さよりも、音の揺らぎや空白による余韻が強調された事によって、純粋な衝動感がより強く演出され、且つ画一的でない多様な情景が掻き立てられる懐の深い作風に仕上がっています。もちろん、彼らの魅力に欠かせない美麗で退廃的なメロディーは健在で、これまでのファンも引き続き楽しめる内容。KatatoniaやRiverside等がお好きな方には過去作と併せて、是非オススメしたい逸品です。

Review2016 albums, post metal, progressive metal

Posted by あっきー(akky)


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ディスカッション

コメント一覧

  1. Awalinより:
    2018年5月13日 1:05 PM

    こちらでは、初めまして。
    Twitterにてお世話になっております。
    あっきーさんのブログ、更新される度に未知なるバンドの探求として、密かに参考にさせて貰っております。

    Blindeadは、あっきーさんのTesseractの『Sonder』の記事の関連から、初めて知りました。
    ダークなアルバム・ジャケットに惹かれました(笑)。
    デス・ヴォイスを主体としたポスト・メタルは苦手としておりますが、Blindeadの場合は試聴する限りではクリーン・ヴォイスを多用した作風で、アルバム・ジャケット程の暗黒性を感じさせず、とても聴きやすいですね。

    素敵なバンドを教えて下さり、有難うございます。

    返信

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