signs from the past / films

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Release : 2016/11/3

Genre : Electronica / Post Classical / Post Rock

Samples: bandcamp

Tracklist :

  1. intro
  2. snow in midsummer
  3. wind flower
  4. kumoito  ★オススメ
  5. gentle rain
  6. wild hunt
  7. 8.15
  8. sympathizer

二人の女性ヴォーカリストによるエレクトロニカ/ポストクラシカル・ユニット、filmsの3rdアルバム。Anoiceやyuki murata等が所属するRicco Labelからのリリース。美麗なジャケットアートは前作から引き続き、岡田尚子氏によるもの。

どの言語にも属さない独自のことばで、揺蕩うように謳い上げる透き通った女性ヴォーカルと、ゆっくりとまどろみへ導く抒情的な銀盤の旋律を主役に、壮麗なオーケストラルサウンドや穏やかなダウンテンポのビート、さざ波のように美しいノイズがヴェールを張る幻想的なエレクトロニカ/ポストクラシカルミュージック。本作ではmatryoshkaのヴォーカリストcaluをゲストヴォーカルとして全面的に採用し、作曲をYuki Murata、演奏面をAnoice、ミックスとアレンジをAnoice在籍のコンポーザーTakahiro Kido、マスタリングをKASHIWA Daisukeが担う、Ricco Labelのドリームチームともいえる豪華なサポート体制のもと制作されています。

冷たくメランコリックなメロディーが痛いほどに突き刺さる、美しくもシリアスな音像が印象的だった前作から、本作では淡く幻想的なファンタジー世界を強く彷彿させる、良い意味で”日本的”な作風になっています。その繊細で幽玄な音像から生み出される世界観は、まるでジブリ映画の『もののけ姫』を想起させるような自然崇拝感や神秘性に満ちています。レーベルの公式説明文にも”ジブリ映画”の名前が出てくるあたり、ある意味確信犯的な試みなのかもしれませんね。そういえば最近『もののけ姫』にインスパイアされたというアルバムをリリースした、ポストブラックメタルのパイオニア的バンドがいたような気がしますが、ジブリっぽさはこちらの方が遥かに上です。Alcestよ、これがジブリだ。

銀盤の細やかで悲し気な旋律が木霊する小曲#1. introから、鼓動するエレクトロビートとピアノ、伸びやかに歌唱するハイトーンの歌声に導かれ、美しいノイズとストリングス、重厚なコーラスを徐々にレイヤードさせていく壮大なナンバー#2. snow in midsummerの時点で、このアルバムが傑作であることを確信させてくれる程の説得力があります。さめざめと泣くピアノの流麗なアルペジオと、無垢なウィスパーボイスとファルセット、滑らかなストリングスの音色が雪のように儚く溶けていく#3. wind flower、抑揚を効かせた内省的なヴォーカルラインを筆頭に、深みのあるハープの音色、抒情的な旋律で高揚感を煽るヴァイオリンとヴィオラが至高のサウンドスケープを生み出す#4. kumoito、薄霧の様なアンビエントシンセに溶けるウィスパーボイスが幻想的な序盤~中盤から、ハイトーンのコーラスと脈動するビート、ざわつくノイズやストリングスが折り重なるドラマティックな後半へと展開する#5. gentle rain、控えめなピアノの旋律と穏やかなダウンビート、ノイズに彩られ、まどろむようなファルセットボイスのコーラスワークに焦点が当たった#6. wild hunt、軽やかなピアノの旋律に乗ってシルキーなストリングスと歌唱の応酬が多幸感を喚起する#7. 8.15、オーケストラルサウンドによる重厚な低音の世界から、ピアノとストリングスを交え徐々にドライブするアンサンブルによって光明を切り開いていく壮大なラストナンバー#8. sympathizerまで、物語性の強い楽曲たちがタペストリーのように美しく編み込まれています。

『ダークファンタジー』と称される彼女らの音楽性ですが、本作ではその幽玄な世界観の中にも自然や生命の尊さや力強さをひしひしと感じさせてくれる、光の側面が印象的な作品でした。個人的には今年聴いたエレクトロ作品の中でも屈指の出来です。哀愁を含んだポストクラシカル、エレクトロニカ等がお好きな方には是非ともお勧めしたい傑作。

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