Migration / Bonobo

Release : 2017/1/13

Genre : Electronic / Chill out / Downtempo

Samples : bandcamp / Spotify

Tracklist :

  1. Migration
  2. Break Apart (feat. Rhye)
  3. Outlier
  4. Grains
  5. Second Sun
  6. Surface (feat. Nicole Miglis)  ★オススメ
  7. Bambro Koyo Ganda (feat. Innov Gnawa)
  8. Kerala
  9. Ontario
  10. No Reason (feat. Nick Murphy)
  11. 7th Sevens
  12. Figures

米ロサンゼルスに拠点を置くイギリス人ミュージシャン・DJ兼プロデューサー、Simon GreenことBonoboの6thフルアルバム。

多岐に及ぶエレクトロ・ミュージックのジャンルに、”Downtempo”(ダウンテンポ)というものがあります。エレクトロ・ミュージックが好きな方やbandcampでエレクトロ系を漁ったことのある人にとっては、見慣れた単語かもしれません。Wikipediaを見ると、大雑把に言えば『アンビエントに連なるが、よりリズムを強調した、それでいてトリップホップほど煌びやかではない』落ち着いたエレクトロミュージックを指すみたいですね。2001年から本格的に音楽活動を開始したBonoboはそのパイオニア的な一人で、SkrillexやDisclosure、Warpaintといった第一線を走るアーティスト達からも熱く支持を受けているそうです。3年ほど前にリリースされた前作『The North Borders』は、当時bandcampで常に売上上位に君臨していたため、印象に残っています。ただし当時はエレクトロ・ミュージックに殆ど興味が無かったため、記憶に焼き付いたのはジャケットアートだけでしたが…。

今年遂に待望の新作がリリースされるとの事で、過去作と併せて聴いてみましたが、この『Migration』は素晴らしい作品ですね。また過去作も同様に良作しかなく嬉しいばかりです。前作も気に入っているのですが、前々作『Black Sands』は特にずば抜けていますね(彼の代表作としてしばしば挙げられるのも納得)。もし本作でBonoboに興味を持たれた方がいれば、次は是非『Black Sands』を手に取ってみてください。そして、本作もまた『Black Sands』に匹敵する傑作に仕上がっているのは言うまでもありません。

先に彼は”Downtempo”のアーティストだと紹介しましたが、いざ聴いてみると、そもそもジャンル分けする事自体難しい、極めて複合的な音楽だと言うことが直ぐにわかります。基本は”Downtempo”と呼ばれるエレクトロ・ミュージックに属しながら、その内側にはエレクトロニカやチルアウト、トリップホップといった周辺ジャンルをはじめ、ヒップホップやレゲエ、クラシック、ニューエイジ、アシッドジャズ、アフロビートまで、多種多様な音楽が網の目のようにして広がっています。エレクトロ・ミュージックだけに拘らず様々なジャンルを横断することは、電子音だけでなく生楽器やヴォーカルの積極的な起用にも繋がっており、その結果彼の音楽には無機質さは欠片もなく、ただオーガニックな優しさと瑞々しさに満ちています。

本作でもその例に漏れず、多彩なジャンルを調和した新鮮で美しいエレクトロ・ミュージックの世界が構築されています。またゲスト・ミュージシャンも多種多様なバックボーンを持つ個性派ぞろいで、デンマーク出身のソウルユニットRhyeや、Skrillex所属のレーベル「OWSLA」からHundred WatersのヴォーカリストNicole Miglis、ブルックリンを拠点にモロッコの伝統音楽グナワを演奏する6ピースバンドInnov Gnawa、オーストラリアのエレクトロ系シンガーソングライターChet FakerあらためNick Murphyが参加しています。中でもNicole Miglisが歌声を添えた#6. Surfaceは、彼のディスコグラフィーでも珍しいほど甘く切ないメロディーに満ちたキラーチューン。その他で印象に残ったのは、アルペジオギターと美しいストリングスが織り成すBonobo流ポスト・クラシカルを披露した#5. Second Sun、Innov Gnawaの独特な土着感を感じさせるヴォーカルワークと、荒々しいビートが織り成すトライバルなグルーヴチューン#7. Bambro Koyo Ganda、繊細な電子音と生楽器の壮麗な音色に乗せて、女性R&Bシンガー・ブランディーの歌声をサンプリングし”羽ばたかせる”、渡り鳥の群衆から着想を得たという楽曲#8. Kerala、厳かなストリングスと弦楽器の旋律が、メランコリックな電子音と溶け合って哀しげな影を落とす#9. Ontario、Nick Murphyのソウルフルな歌声が響き渡る叙情ナンバー#10. No Reason、ループする女性ヴォーカルと幻想的なストリングスが絡み合い、極限の哀愁と共に作品のカーテンを降ろすラストナンバー#12. Figures等が挙げられます。こうしてみると、中盤から後半にかけて特に強力な楽曲がひしめいていますね。

「人が自らの住まう地域からどのようなアイデンティティーを授かり、また異なる地でどのように影響を受け、変化していくのか」といったテーマを持つ本作は、イギリスに生まれアメリカで活動するBonobo自身のアイデンティティーから着想を得たものなのかもしれません。音楽のジャンルや世界の境界を越えて、様々な情景をモンタージュしたかのような本作は、しかし一貫したテーマを綴った一つの、美しいタペストリーとして見事に編み上げられています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*