Blackfield “Blackfield V”
Release : 2017/2/10
Genre : Alternative / Art Rock
Tracklist :
- A Drop in the Ocean
- Family Man
- How Was Your Ride?
- We’ll Never Be Apart
- Sorrys
- Life Is an Ocean
- Lately
- October
- The Jackal ★オススメ
- Salt Water
- Undercover Heart
- Lonely Soul
- From 44 to 48
イスラエルのソングライター兼ミュージシャンAviv Geffen、そしてイギリスのミュージシャン兼プロデューサーSteven Wilsonによるコラボレーションこと、Blackfieldの5作目。
Steven Wilsonが自身のソロアルバム制作に注力するため、数曲のギターや歌のみの参加に留まった前々作及び前作は、内容が伴った良作ではあったものの、二人の対等なコラボレーションあってこそのBlackfieldだと思っていた私としては、やや苦々しい思いで見つめていました。Wilsonは2014年にバンドを去ることすら示唆していたようで、当時のスケジュール調整がいかに困難だったかを伺わせます。間を空けて4年振りのリリースとなった本作について、リリース日の延期など更に紆余曲折あったものの、まずは新作がリリースされた事自体に対して、ファンの一人としてとても喜ばしく思います。また本作は初期2作のように、二人の強力なパートナーシップを基に制作されていて、ヴォーカル・ギター・キーボードの演奏を分かち合い、プロデュースも前作のようにGeffen単独ではなく、共同で行われています。そこも嬉しい点ですね。またプロデュースに関する別の大きなトピックとして、Pink Floydの「狂気」のエンジニアリング等にも携わった伝説的プロデューサー、Alan Parsonsが本作の一部楽曲でプロデューサーを務めています。
美しい海の景色をバックに、漂着したボロ瓶をつまんだジャケットアートが印象的な本作は、海洋と人生の移り変わりをテーマに、情景がリンクしていく13曲が織り成すアルバム。作曲に関しては#1~#12までをGeffenが担当し、Wilsonは#1、#6をGeffenと共同で、そして#13を単独で担当しています。Wilsonの関わりが薄れ始めた前々作から、BlackfieldはGeffenの志向が反映されてか、よりポップな爽やかさや丸みの協調された音像へと変化していきましたが、本作でもその傾向に大きな変化はないように思います。一方で、哀愁の感情をくすぐる独特の抑揚で生み出される歌のメロディーに加え(バンド初(でしたっけ?)女性ヴォーカルを取り入れた楽曲も一部あります)、過去最大規模でフィーチャーされたストリングス(London Sessions Orchestraによるもの)、澄み切った音色のリフレインやリバーブから、伸びやかなソロ、ザラつきのあるブルージーなサウンドまで多彩なギタープレイ、全く衝突を感じさせない、芸術的なほど音の分離の良いサウンドプロダクション等(音質は間違いなく過去最高です)によって、私達の情念に訴えかけるメロディーとハーモニーの説得力は、遥かに強力なものへと生まれ変わっています。
どの曲も素晴らしい出来ですが、特筆すべきキラーチューンは#3. How Was Your Ride?、#9. The Jackal、#10. Undercover Heartの3曲。いずれも哀愁深いメロディーと、壮麗なコーラスワークが他の楽曲よりも抜きん出ていて、陽の光を反射して輝く海の景色、あるいは広大な大空を連想させるような、無限の爽やかさと深みを堪能する事が出来ます。全体的に楽しみどころは後半の楽曲の方が多い印象ですね。
元々派手さの少ないバンドだけに、初めて聴く方は中盤辺りでダレてしまうかもしれません。しかしそこで楽しみを終えるには余りにも勿体無い!どのアルバムもそうですが、このバンドは繰り返し聴く程楽しみが増していくような「スルメ盤の職人」なのです。手っ取り早く彼らの魅力が知りたい方は、上でキラーチューンとして挙げた三曲や、あるいは#7. Lately以降を先に回してみても良いかもしれません。彼らの哀愁の影差すメロディーや幻想的なハーモニーは、日本人の感性にも直に響く魅力があると思うし、本作はそれが最大限に発揮された傑作だと思います。清廉として耳に心地よいロックサウンドをお求めの方には、是非オススメしたい一枚。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません