Fallgrapp “V hmle”
Release : 2017/3/20
Genre : Electronica / Trip Hop / Soul
Tracklist :
- Ouagadougou
- Dym (feat. Juraj Benetin)
- Vietor
- Session (feat. Jimmy Pé)
- Gejša (feat. Nina Kohoutová) ★オススメ
- Akoby
- Akoby pt.2
- V predstavách (feat. Vec)
- Echinacea
- V hmle (feat. Samuel Hošek)
- Uspávanka
スロバキア人プロデューサーJureš Líška率いるエレクトロニックミュージック・プロジェクト、Fallgrappの2ndフルアルバム。アルバムタイトルの”V hmle”は日本語で「霧の中」を意味します。
このアルバムジャケットの印象はどうでしょう?白い霧に包まれて、裸の人間が二人手をつないでいる。霧が演出する幻想的なムード、それと同時に、一糸まとわぬ人間達からは神聖さと、清廉とした自然美を感じられたのではないでしょうか。もしそのように印象付けられたのであるなら、本作に込められた音楽にもスムーズに魅入られる事になるでしょう。音楽も正にそのジャケットアートを体現したものであるから。
エレクトロミュージックのシャープなビートと輝く電子音、ヴァイオリンや女性ヴォーカルの有機的で流麗な音色、この絶妙な組み合わせ。これは前作「Rieka」(ちなみに”Rieka”とは日本語で「川」を意味します)から変わらない彼らのオリジナリティーですが、3年振りのリリースとなった本作では、更にアンビエントやチルウェイブ、ヒップホップ等の要素を積極的に組み込んだ事で、圧倒的に多彩で洗練されたアルバムとなっています。
そしてもう一つ、彼らに魅力を感じた最初にして最大の要素であり、重要なオリジナリティーの一つだと思っている、”和”のテイスト。言い換えれば、情念に深く訴えかける、幽玄な美しさを湛えた旋律。特に前作では「Origami」(折り紙)というタイトルの曲もありました。海外の洗練されたサウンドアレンジとソングライティングで、日本人の心まで揺さぶる情緒豊かなメロディーを紡ぐ「洋魂和才」にこそ、私が最も惹かれた部分でした。
本作でも、艶かしく奥ゆかしい弦楽器の旋律が印象的な#5. Gejša(コメントで教えていただきましたが、これは日本語で「芸者」を意味します)を代表に、和のテイストへのこだわりを感じさせる楽曲が含まれています。そしてこの曲を境に後半にかけて、本作は加速度的に面白さを増していきます。スロバキアの有力なヒップホップアーティスト、Vecをフィーチャリングしたスタイリッシュなヒップホップナンバー#8. V predstaváchや オーロラのように美しいシンセの音色をバックに、ソウルフルな男性の歌が木霊する#9. Echinacea、同じくスロバキアの若手実力派シンガーSamuel Hošekを招いた幻想的なタイトルトラック#10. V hmleがその代表。特筆すべきは後半ですが、もちろん前半の楽曲も素晴らしく、トライバルなパーカッションと壮麗なストリングスに導かれて、男女の歌声がダイナミックに木霊する#2. Dym、女性ヴォーカルの憂いを含んだエモーショナルな歌を、細かいギターリフとパーカッションの雨、ストリングスの旋律が彩る#3. Vietorなど魅力的な楽曲が詰まっています。
その実力の割に日本では知名度が低いようなので、この記事で興味を持たれた方がいれば是非聴いていただきたいアーティストです。本作はもちろん、前作も極めて素晴らしいので併せてチャレンジしてみては如何でしょうか。
ディスカッション
コメント一覧
5曲目の「Gejša」は「ゲイシャ」と読みますので、明確に和テイストを意識しているのではないかと思いますね。
Gasseさん
コメントありがとうございます。
>5曲目の「Gejša」は「ゲイシャ」と読みますので、
ホントだあ…(白目)、となると確かに今作でも和を意識した楽曲があるということになりますね!後で記事内容もそれに合わせたものに修正させていただきます。
ご指摘がなければずっと気付かなかったと思います。ありがとうございました。