Strawberry Girls “Italian Ghosts”
Release : 2017/2/17
Genre : Progressive Rock / Experimental Rock / Post Hardcore
Tracklist :
- Black Night, Golden Circus ★オススメ
- Vanilla Rainforest
- Thank God ft. Nic Newsham and Kathleen Delano
- Welcome To The Woods
- Little House in the Big Woods ft. B. Rolla
- Step Into The Light ft. Joey Lancaster, Kathleen Delano
- South American Sun
- The Hate of Loving You ft. Mark Banks
- Been There, Done That
- Shadow of the Moon ft. Sarah Glass, Jenna Fournier and Kathleen Delano
元Dance Gavin DanceのギタリストZac Garrenを中心に結成された、プログレッシブ/エクスペリメンタル・ロックバンド、Strawberry Girlsの3rdフルアルバム。Tragic Hero Recordsからのリリース。
Strawberry Girlsとは何とも気の抜けたバンド名ですが、繰り出されるのはファンシーでもラブリーでもなく、エキセントリックで鋭角的な楽曲の嵐。バンド名はUKのパンクバンドSiouxsie and the Bansheesのアルバム『Kaleidoscope』(1980年)に収録された、「Christine」という曲の歌詞から採用したそうな。
バンドの中心人物であるZac Garrenというと、2010年までDance Gavin Danceに所属していたギタリスト。あのDance Gavin Danceに所属していたという事実それ自体が、少なくとも彼の技巧的なレベルの高さを物語っています。そんな凄腕ギタリストの彼が、ドラマーBen Rosettと組んで2011年に結成されたのがこのStrawberry Girlsであり、デュオとしての初ライブ後まもなくベーシストIan Jenningsが加入し、現在のスリーピース体制が確立しました。今も昔もヴォーカルレスのインストバンドです。
演奏は極めてエキセントリックでスリリング、そしてキャッチー。スリーピースならではの圧倒的な一体感とグルーヴがとにかく心地良い。そして技巧的な魅力と同じくらい、メロディーの完成度も注目に値します。Dance Gavin Dance由来のポップさは勿論、よりジャンルクロスオーバー的なアプローチで様々なメロディーを聴かせてくれます。本作では特にそれが顕著で、同じロック由来のメロディーでもサイケデリックロックやマスロック、ストーナーロックを感じさせる部分もあるし、その他にファンク、ヒップ・ホップ、ダブ、レゲエ、エレクトロニックミュージックなど、まるで万華鏡のように景色が入れ替わっていきます。
2012年にリリースされた同名のデビューEPを再録し、更にいくつかの新曲を加えてフルアルバム仕様にしたのが本作。サウンドプロダクションや彼らの演奏スキルが、5年という歳月と共にどれだけ向上したのかを、まざまざと見せつけてくれます。まずは下のSpotifyプレイヤーから、両作品でオープニングナンバーを務めた“Black Night, Golden Circus”を聴いてみてください。
旧EP収録Ver.
本作収録Ver.
もう、全然違いますよね。本作収録Ver. の方が、あらゆる点で洗練されています。こうやって比べて聴くと、まるで別の曲かと思ってしまうほど。芯から身体を揺らすような低音、一体感の増した演奏が生み出す巨大なグルーヴ。このように大幅にアップデートされた既存曲と、ヴォーカリストをフィーチャーした新曲をいくつか組み合わせ新作としてリリースしています。
ゲストヴォーカリストには前作『American Graffiti』でも美声を披露したJoey Lancasterをはじめ、非常に多彩な人材を起用しています。これらヴォーカル入りの楽曲はファンクや、ソウル、ジャズ、ヒップホップなど、ロックの枠組みを越えたジャンル間クロスオーバーが積極的に試みられていて、本作のバラエティー性の向上に大きく寄与しています。
先に挙げた”Black Night, Golden Circus”を聴いて本作を「アグレッシブな」作品だと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、実際にはミドル~ロートーンの楽曲も多く配置されていてそれぞれが半々といった感じです。
1曲目の為だけでも本作を買う価値はあります。ただ全体のクオリティーを見ると若干の煮え切らなさもあり、まだ試行錯誤の最中である事を窺わせます。この作風が、現在の音楽業界の潮流を意識してのものかは分かりませんが、彼らの開明的な姿勢は、ロックという音楽を今後も聴き続けていきたい私にとってはとても尊いものだし、その姿勢のまま今後も突き進んでいって欲しいと思います。再録中心の作品でここまでの完成度が出せるのだから、来る新作が俄然楽しみになってきました。
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