Drunk / Thundercat

Release : 2017/2/24

Genre : R&B / Hip Hop / Soul / Jazz

Samples : bandcampSpotify

Tracklist :

  1. Rabbot Ho
  2. Captain Stupido
  3. Uh Uh
  4. Bus In These Streets
  5. A Fan’s Mail (Tron Song Suite II)
  6. Lava Lamp
  7. Jethro
  8. Day & Night
  9. Show You The Way (feat. Micheal McDonald & Kenny Loggins)
  10. Walk On By (feat. Kendrick Lamar)
  11. Blackkk
  12. Tokyo
  13. Jameel’s Space Ride
  14. Friend Zone
  15. Them Changes
  16. Where I’m Going
  17. Drink Dat (feat. Wiz Khalifa)  ★オススメ
  18. Inferno
  19. I Am Crazy
  20. 3AM
  21. Drunk
  22. The Turn Down (feat. Pharrell)
  23. DUI
  24. Hi (feat. Mac Miller)

米ロサンゼルス出身のベーシスト、Stephen BrunerことThundercatの3rdアルバム。

今、世界で最も躍動しているベーシストは誰か?と問われたならば、私にとってそれはEsperanza Spaldingと彼、Thundercatだと迷いなく答えるでしょう。二人とも志向する音楽性に若干の違いはあるけれど、ジャンルの垣根を超越した魅力的なパフォーマンスを可能とする「プレイヤーとしての能力」と、ミュージシャン同士の繋がりを通じて得られた経験を貪欲に糧とする「吸収する能力」、そしてインプットした情報を素晴らしい楽曲、ひいてはアルバム作品としてアウトプット出来る「作曲家としての能力」を本当に凄まじい水準で持ち合わせています。他にも、様々なビッグネームとの「引き合わせ」を実現する人脈力や魅力的な人間性も勿論、兼ね備えているのでしょう(むしろ、現代でヒットを飛ばしたり革新的な作品を生み出すには最も重要な資質かもしれません)。

彼はEsperanza Spaldingのようなエリートコースを歩んできた訳ではありませんが(彼女のある意味”異常な”経歴と比べても仕方ない気がしますが)、元々はカリフォルニアのクロスオーバースラッシュ/ハードコア・パンクバンドSuicidal Tendenciesに在籍し(2011年に脱退)、同時にソロのセッションミュージシャンとしても活動していました。セッションミュージシャンとしてFlying Lotusと出会い、彼らの作品に参加し始めてから、個人としても徐々に名を上げていきます。2011年にはFlying Lotusのレーベル<Brainfeeder>から初のソロアルバム『The Golden Age of Apocalypse』を、その2年後に2作目『Apocalypse』をリリースしました。

そして2015年はおそらく彼の人生にとって、最も刺激的な1年となったことでしょう。Kendrick Lamarの大名盤『To Pimp A Butterfly』、そしてKamasi Washingtonの意欲作にして傑作『The Epic』に参加します。特に前者での功績は大きく、Anna WiseやBilalと共にゲスト参加した楽曲「These Walls」によって、グラミー賞の「最優秀ラップ/サング・コラボレーション部門」を受賞、一躍、時の人となりました。そんな彼の最新作『Drunk』は、今まで通り<Brainfeeder>からのリリース。しかし中身は過去の作品と一線を画すほど密度の濃く、そして緻密で完成度の高い作品となっています。

Drunk…酔っぱらった状態でこそ、人の「素」が出る。あるがままの自分を見せる事にフォーカスし、酔っ払いとして自らの「素」を曝け出したのが本作。だから、急に心の闇が膨れ上がってきてふさぎ込むこともあるし、お先真っ暗な状態でも希望の光はきっとあるんだ!と熱く力説する場面もあれば、東京でアニメグッズを買い漁りてえなあとか呟いたり、突然「猫の暮らしは最高だ!猫になりたい!にゃーにゃーにゃー!」と喚き出す事もある。どうか驚かないでください、酔っぱらっているだけなんです。そしてこれが、アートワークのようにちょっと抜けた姿こそが、きっとありのままの彼なのでしょう。

音楽性も過去最高にバラエティー豊かで、歌詞を気にしなかったとしても純粋に楽しめる作品です。ソウルやフュージョン、ヒップホップ、AORからシンセポップまで、ころころと変わっていく多彩な情景が鮮やかに映えます。そんな本作のハイライトは、まずAOR界のレジェンドKenny Logginsと、元ドゥービー・ブラザーズMichael McDonaldが参加した事で話題となった#9. Show You The Way。人生で行き詰った、何を信じたら良いのか分からなくなった、そんな時どうしたら良いのか?二人のレジェンドが語る言葉は重く突き刺さり、同時に私たちを深く励ましてくれるでしょう。続くKendrick Lamarをフィーチャリングした#10. Walk On Byも、ドープでムーディな雰囲気を醸しながら、じわりじわりと心に沁みるバラードナンバーといった趣で素晴らしい。最もセンセーショナルな曲は、ディスコチックでレトロフューチャーなシンセポップ#12. Tokyo以外に無いでしょう。個人的に最も気に入っているのは、ペンシルベニア州のラッパーWiz Khalifaをフィーチャリングした#17. Drink Dat。Wiz KhalifaのスモーキーなラップとThundercatの甘美な歌が交互に木霊し、抗えないメロウネスを生み出すミドルチューンだ。

本作にはプロデューサーにFlying LotusSounwave、ゲストヴォーカルに先述したKendrick LamarWiz Khalifaに加え、Pharrell WilliamsMac Millerが、#15. Them ChangesではサックスプレイヤーとしてKamasi Washingtonが参加と、もはや理解が追い付かないほど豪華な布陣が脇を固めています。まさに一流ミュージシャンの見本市のような状態(もっとも、Kendrick Lamarの新作で更に驚く羽目になりそうですが)。Thundercat自身のプレイも非常に巧みで、#3. Uh Uhのように派手に弾きまくる曲もあったり、裏方に徹して「いぶし銀」的に活躍する曲もあったりと、曲によって様々なスタイルを披露しています。また、甘~い歌声でヴォーカリストとしての魅力も十分すぎるほど振りまいていて、歌手としての成長具合に驚くのも本作の楽しみどころの一つとなっています。

超一流の集まりが生み出した、超一級の作品。作曲も演奏もサウンドプロダクションも世界最高レベル。そんなコテコテの環境に対して、作品から醸し出される飾らず自然体な空気感のギャップが堪らなく魅力的。まさに上半期を代表するレベルの作品であることは疑いようもありません。もしかすると2017年を代表する一枚になるかも、そんな可能性も秘めた名作。

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