You Are We / While She Sleeps

Release : 2017/4/26

Genre : Metalcore

Samples : Youtube

Tracklist :

  1. You Are We
  2. Steal the Sun
  3. Feel
  4. Empire of Silence
  5. Wide Awake
  6. Silence Speaks(featuring Oliver Sykes)  ★オススメ
  7. Settle Down Society
  8. Hurricane
  9. Revolt
  10. Civil Isolation
  11. In Another Now

英ヨークシャー州・シェフィールド出身のメタルコアバンド、While She Sleepsの3rdフルアルバム。本作はPledgeMusicを利用したクラウドファンディングの力を借りて制作されています。

ヴォーカリストLawrence “Loz” Taylorをフロントマンに据えた5人編成で、同郷のBring Me the HorizonAsking Alexandria等と並んでシーンを牽引する力のあるバンド。上の2バンドと比べると、デビューが遅れたために実績や知名度ではやや劣るものの(結成はBring Me the Horizonより遅く、Asking Alexandriaよりも早い)、音楽の魅力では決して劣りません。むしろ個人的な好みに従えば、彼らこそが至高であると信じているくらい。マシンガンの様にリフを刻むリズムギターと、ハードで抒情的なリードギターのフレーズ、ヘドバンを誘うグルーヴィーなドラミング、野太くアップリフティングなコーラス、血を吐くような歌唱で激情を表現するヴォーカル…。流行りに流されず、軸のぶれない圧倒的武骨さと、陰で控え目ながら存在感を放つヨーロピアンな美的感性が私の琴線に触れたのかもしれません。

2年前にリリースされた前作『Brainwashed』はその真っ赤なジャケットアートが如く、マグマの様な激情が渦巻くセンセーショナルな作品でした。メロディックデスメタルやハードコア、オルタナヘヴィ風の演奏を巧みに織り交ぜ、音楽的な面でも広がりを感じさせる画期的な内容だったと思います。対して本作『You Are We』黒と青を基調とした落ち着いたジャケットアート。その内容は前作の延長線上にありながら、より静動、美醜の対比が鮮やかに映えるダイナミック且つカラフルな作風となっています。活躍の機会を増したクリーンヴォイスや、残響を描く美しいリードギター、多彩なハーモニーを奏でるコーラスワークがより効果的に用いられ、過去最高にキャッチーな仕上がり。結果としてメジャーシーンとの親和性は強くなり、それでいて彼らのアイデンティティーは失われずしっかり継承・強化されている点が本作の強みです。聴いている最中に所謂「セルアウト」的な違和感を感じる事はありませんでした。

この創造的な作品を作り上げるために、本作は完全DIYの環境で制作されています。先述したクラウドファンディングの利用、録音は地元の空いた倉庫を自らスタジオに改造して行い、完全なセルフプロデュースによってリリースされました。それでいて、全く粗さを感じさせないサウンドプロダクションにまず驚かされる。ただ金銭的な理由ではなく、より創造に相応しい環境を求めてDIYを選んだあたり、相当な拘りを持って制作された事がひしひしと伝わります。またクラウドファンディングによって支援を行った一部のファンは、去年先行公開された#8. HurricaneのMVに参加しているのですが、それが下の動画になるので是非見て欲しい。

メンバー達がファンに向ける愛し気な表情がグッときませんか。ヴォーカルのLawrence Taylorは前作リリース前に喉の限界を迎えて手術を受けているけれど、その時にファンから貰った励ましや献身も含めた、バンド側のファンへの感謝や愛情がこの表情の中に詰まっている気がする。バンド自身が語るには、彼らは世俗的な問題や政治について直接的に語るつもりは無く、語るとすれば自らのパーソナルな問題を通じて間接的にメッセージを綴るそうだ。今はダウンロード音源しか手許にないから歌詞について詳しくは語れないけれど、本作のサウンドからはこの危険と課題に塗れた世の中で、バンドがリスナー達の味方として並び立って立ち向かってくれているかのような、そんなポジティブな姿勢を感じ取ることが出来る。

アルバムの完成度に比例して本作は聴きどころも多く、疾走感のあるメロからシンガロング必至のサビまでの繋がりが劇的な#2. Steal the Sun、ヘドバン強制装置と化したドラミングの妙とクリーントーンのヴォーカル&ギターの美メロが強烈な#3. Feel、Bring Me The Horizo​​nのフロントマンOliver Sykesをフィーチャリングした、アトモスフェリックなサビが印象的なキラーチューン#6. Silence Speaks、イントロの哀愁そのままに文字通り嵐のように駆け抜けていく#8. Hurricane、ゴリゴリのベースラインと手数の多いドラミングを軸に、中盤以降の強調された美しさが魅力的な#10. Civil Isolationが個人的なハイライト。序盤~終盤までだれる事なく楽しめる構成になっています。それにしても作品を重ねるごとに、彼らをメタルコアバンドと紹介する事に対してどんどん躊躇いを覚えていく。一つのジャンルに収まってしまうようなステージを彼らはとっくに通過しているのだから。

セールス的にも本作は過去最大の成功を収めているようです(UKのオフィシャルアルバムチャートで第8位を獲得)。このロック不遇の時代に8位とは凄い。内容は先述したように最高の一言で、本作を過去最高傑作と見なすファンも多いのでは。また積極的なDIY環境による成功例として後人に良き手本を見せたという意味でも、本作は画期的なのかもしれません。