Slowdive / Slowdive

Release : 2017/5/5

Genre : Shoegazer / Alternative Rock

Samples : bandcamp / Spotify

Tracklist :

  1. Slomo
  2. Star Roving
  3. Don’t Know Why  ★オススメ
  4. Sugar for the Pill
  5. Everyone Knows
  6. No Longer Making Time
  7. Go Get It
  8. Falling Ashes

イングランドのオルタナティブ・ロックバンドにして、シューゲイザーと呼ばれる音楽シーンの礎となったレジェンド、Slowdiveの22年振り(!)となる最新作。Dirty ProjectorsやMitski等が所属するインディレコード<Dead Oceans>からのリリース。特徴的なアルバムアートワークは、20世紀における屈指の鬼才ハリー・スミスによって、1962年に完成された伝説的アニメーション『Heaven and Earth Magic』のワンカットを利用しています。また本作のプロデュースはバンドの中心人物Neil Halsteadが務め、ミックスはTV on the RadioやBeach House、Yeah Yeah Yeahs等に携わってきた名エンジニアChris Coadyが務めます。

シューゲイザーは90年代初頭における隆盛から間もなく、シーンの潮流をブリットポップに譲りました。しかし、時代を経てなお多くのオルタナティブ/インディーロックバンド、あるいはポストブラックメタルバンド達からシューゲイザーの息吹が強く感じられる事からも、次世代への”橋渡し”としての意義はとても大きかったはず。そんな時の流れに応じた要請として、嘗てのパイオニア達にリバイバルの期待がかかるのもある意味当然なのかもしれません。4年前のMy Bloody Valentineの復活劇に始まり、その翌年にはSlowdive、Rideが復活し、今年に入ってSlowdive、Ride、Jesus & Mary Chainまでが立て続けに新作リリースを実現した事は驚きをもって迎えられましたが、これは上述した”時代の要請”にバンド側が応じた結果なのかもしれません。

シューゲイザーはよく”『Loveless』(1991)によって完成されたジャンル”と揶揄されますが、個人的にはこのSlowdiveこそが、ポスト・シューゲイザーの境地へと到達しかけた唯一のバンドだと思っています。解散前にリリースされた『Pygmalion』(1995)、果てのない大氷原、極北の世界をそのまま音楽にパッケージしたかのようなかの作品は、予め持っていたアンビエントへの志向を更に推し進め、完全な脱ノイズ化を図った画期的な”シューゲイザー”アルバムでした。My Bloody Valentineを代表とする、ヘヴィーなノイズが空間を埋め尽くす典型的なサウンドスケープではなく、アンサンブルはミニマルに終始し、ディレイとリバーブを最大限駆使して透き通った、オーロラのような音像を生み出す才気。他のシューゲイザーサウンドとは一線を画しながら、アンビエントでもポストロックでもドリームポップでもない、独特な立ち位置の『Pygmalion』は賛否両論を呼びました。しかし同時に、Slowdiveを真に唯一無二の存在たらしめたアルバムでもあったのです。シューゲイザーを引き算的なアプローチによって極めたSlowdiveの音楽は、私にとって究極の清涼剤であり続けました。

さて前置きは程々にしておいて、本作の内容の話へ移りましょう。これは『Pygmalion』の続編に聴こえるでしょうか?それは違いますよね。本作を聴いたリスナーのほぼ全員がそう思うに違いありません。では名盤『Souvlaki』の再現か?それとも1st『Just For A Day』への先祖返りか?…もしかすると、1stアルバムに似ていると感じるリスナーはいるかもしれません。本作はとてもメロディアスだから。でも、それだけでは説明仕切れない「新しさ」も本作には沢山詰まっているのです。そこに是非、着目して欲しい。

Slowdiveの解散後、メンバーに何も音沙汰が無かった訳ではありません。NeilとRachelはMojave 3を、ChristianはMonster Movieを始動させ、Simonはソロアルバムの継続的なリリースやThe Sight Below他アーティストとのコラボ等を通じて、今日まで各々が、それぞれの音楽活動に邁進してきました。個人的にはこの”活動”こそが、本作の新しさや瑞々しさに繋がっているのではないかと思います。特にMojave 3の歌心溢れる暖かい歌唱、Monster Movieのキャッチーなオルタナ・ポップ感は、本作にも影響を与えていると思います。これまでの朧げなものでなく、美しいままくっきりと結晶化した歌のメロディー、キャッチーで力強いドラミング、儚げなアルペジオから空間を埋める轟音まで多彩なギタープレイ。過去作からのサルベージだけでは実現できない、彼らの創作意欲が火花を散らす姿が垣間見える、新鮮で極上なシューゲイザー/ドリーム・ポップアルバムに仕上がっています。

ゆったりとした残響の波で夢幻の世界へと誘うオープニングナンバー#1. Slomo、ダイナミックなドラミングが先導するドリーミーなノイズポップ#2. Star Roving、キャッチーなビートに乗って、流れるように紡がれる美声が木霊する#3. Don’t Know Why、深みのあるリバーブとアンビエントシンセが、ノスタルジックな夕闇の世界観を生み出すダーク・ポップチューン#4. Sugar for the Pill、多幸感がそのまま音の壁になったかのようなノイズギターと、天上のハーモニーが至高のドリーム/ノイズポップへと昇華した#5. Everyone Knows、ディープなトーンで奏でられるアルペジオギターとNeilのかすれるような歌が、極上の退廃美を生む#6. No Longer Making Time、巨大なギターノイズと深いヴォーカルのリバーブが、オカルティックな秘儀感を演出する#7. Go Get It、ループするピアノとアルペジオギターを主役に据えたミニマルなアンサンブルで、『Pygmalion』以降の情景を垣間見せる#8. Falling Ashesと、全編において妥協を感じさせないハイクオリティーな内容に仕上がっています。

単なる過去の再現ではなく、解散後も決して留まることの無かった彼らのキャリアやミュージシャンシップが、新しい音楽の形で結実した傑作です。しかし、後追いで触れるしかなかったSlowdiveの新作をリアルタイムで聴く機会があるなんて。来月にはRideの新作も控えていますし、シューゲイザーファンにとっては夢の様な一年になりそうですね。

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