Compassion / Forest Swords

Release : 2017/5/5

Genre : Experimental / Electronic

Samples : bandcamp / Spotify

Tracklist :

  1. War It
  2. The Highest Flood
  3. Panic
  4. Exalter
  5. Border Margin Barrier
  6. Arms Out  ★オススメ
  7. Vandalism
  8. Sjurvival
  9. Raw Language
  10. Knife Edge

リヴァプール出身のプロデューサーMatthew Barnesによるプロジェクト、Forest Swordsによる最新作。レーベルはこれまでの<Tri Angle>を離れ、名門<Ninja Tune>からのリリースとなっています。

霞みがかったファジーなサウンドプロダクションの中を、琴や尺八を連想させる音色が木霊する、幽玄で女性的な静淑さが立ち込めていた前作『Engravings』。てっきり”そういう”アーティストなのかと思っていたら、本作で期待を(良い意味で)裏切ってくれた。東洋へのオリエンタリズムを前面に押し出した前作はまるで時代劇のワンシーンのような生々しさや、しみじみとした哀愁が込められていましたが、本作では一変して、宗教的なミステリアスさや神聖さに加え、教会に飾られたステンドグラスのような極彩色の美しさや、巨大なスケール感をも感じさせる作風となっています。本作のために投下するレーベルを変えたという話が素直に頷ける程、両者は異なっています。

ただ、作風から受ける印象は異なれど、やっている事はこれまでの延長線上にあるようです。生楽器とエレクトロニクスの実験的な融合・・・ダブやサイケ、トリップホップ、R&Bを包含したタペストリーのような音楽性は以前から変わりません。先述した東洋的な趣も本作で全く消え失せた訳ではなく、フレーバーとしてしっかりと残っています。

本作では(女性の歌声が殆どだった前作に対して)男性による歌の挿入や、美しいホーンとストリングスの音色、多彩さを極めたパーカッションが加わり、ミステリアスな妖しさと壮麗さの間を揺らぐメロディーラインによって、リスナーを夢と幻想の世界へと誘います。

また前作では全編をすっぽり覆う程巨大だったリバーブは、本作では局所的な発生に終始しています。併せてメロディーやサウンド全体のループ性が強くなり、アンサンブルはミニマル化しました。結果的に、細かく裁断されたサウンドが巨大なモザイクアートを成しているかのような、独特で芸術的な意匠を創り出しています。

特にヘビーローテーションとなっているのは、MVとして先行公開された#3. Panic#6. Arms Out、そして#9. Raw Language#10. Knife Edgeの4曲。妖艶さ極まるアンサンブルによって恐怖と酩酊感を駆り立てる#3、クライマックスの壮麗なオーケストラル・サウンドが巨大な感動を喚起する#6、軽やかなビート&パーカッションを背に、キャッチーな歌とストリングスの音色が跳ねる#9、幽玄なサウンドスケープの中で華麗に踊るピアノの旋律が尊く深い#10と、いずれも丁寧に作り込んだことが伝わる精巧な楽曲です。

玄人もビギナーも両方唸らせてくれそうな、エクスペリメンタル・ポップとして非常によく練られた作品だと思います。彼自身もリスペクトしているというBjorkMassive Attackがお好きな方は特にハマるかも。個人的にもオススメの逸品です。