わたしのYUME DIARY – EP / ミカヅキBIGWAVE

Release : 2017/6/3

Genre : Future Funk / Anime Groove

Samples : bandcamp

Tracklist :

  1. Intro (夢の邪魔しないで)
  2. Fairy
  3. You’re the only one
  4. サテライトsatellite
  5. Sweet Days  ★オススメ
  6. Feel So Good!!
  7. midnight highway
  8. 渚nagisa
  9. Heart のbreak
  10. わたしのYUME日記
  11. BLIZZARD
  12. 愛にそうしますhotelシーサイド
  13. Loneliness孤独な少女はいつも (Outro)

Future Funk!このジャンルで遂にハマるアルバムに出会ってしまった。目下、Anathemaの最新作と並んで絶賛ヘビーローテーション中なのが、このミカヅキBIGWAVEの新作である。

bandcampにはそれなりに長く入り浸ってきたけど、Vaporwaveにはとんと縁が無かった。アーティストやアルバム名ですぐにそれと分かるから試聴する機会もそこそこあったのだけど、琴線に触れる作品に出会うことはとうとうありませんでした。Future FunkはVaporwaveの派生ジャンルで、Vaporwaveよりは好みの音楽性なのだけど、これまたどっぷりハマる程の作品に出会うことは無かった、このアルバムを聴くまでは

本作について感動を語る前に、Future Funkの派生元としてのVaporwave、あれってそもそもどんな音楽だったっけ?Wikipedia先生に助力をお願いしておさらいする事にします。

チルウェイヴやウィッチハウスと同様に、ヴェイパーウェイヴはネット上のコミュニティ(Turntable.fm.ほか)から誕生した。音楽的には、1980年代から1990年代にかけての大衆音楽、ラウンジ・ミュージック、スムースジャズ、コンテンポラリー・R&Bなどのサンプリングを基本とし、そこからループ、ピッチダウン、チョップド&スクリュードなどエフェクトを重ねていくことによって制作される。この編集により一種独特な音が生まれ、さながら蒸気に包まれるような感覚を与えることからヴェイパーウェイヴと名付けられたとも、もしくはチルウェイヴのパロディのように生まれた経緯からそう呼ばれるようになったとも推測されている。   出典元:Wikipedia『ヴェイパーウェイヴ』

加えて私の知る限りでは、アーティスト名や曲名が日本語と英語の入り混じった意味不明なものだったり、日本の80~90年代歌謡がサンプリング素材としてグレーを超えたレベルで用いられていたり、ジャケットアートはゴテゴテした色味の背景に昭和アニメ、旧式のPCやゲーム機、美術的な彫像などが映るカオス極まるものだったり、2010年代前半に瞬間的に流行ったと思ったら瞬間的に廃れていったり、それでもFuture FunkSea Punkという派生ジャンルを生みながらしぶとく生き残っていたり。ネタ的にも音楽的も濃いアンダーグラウンド音楽の権化のような認識だ。

Future Funkについては、日本のアニソンやディスコ、シティポップといったサブカル的な色合いの強いものから、AORやヒップホップ、ラウンジ・ミュージック全般を基礎としたアーバンな色合いのものまで、志向性はアーティストによって様々で一枚岩ではなさそう。いずれにせよVaporwave特有の薄気味悪さやグロさに上手く適合出来なかった私にとっては、些か好みの音楽性ではある。なおMVは短い映像を延々とループさせるもので、これはVaporwaveと同じ。しかし映像の素材には違いがあり、Vaporwaveはチープな3Dアニメーション、Future FunkはアニメのワンシーンやOP映像を用いているのが殆ど(だと思う)。ここにも両者の性格の違いが反映されているようだ。Future FunkのMVについてはArtzie MusicというYoutubeチャンネルが毎日のようにアップしているので、このジャンルに興味を持ったら是非覗いてみて欲しい。

VaporwaveもFuture Funkも、外国で生まれた音楽ジャンル。海の向こうの外国人が日本の歌謡曲やアニソンなどを意味の分からないまま一生懸命サンプリングしているのだ。ちょっと萌えません? 一方、このミカヅキBIGWAVEは日本に拠点を置く、おそらくは日本人。だから、曲から漂う「勝手を知ってる」感が凄いし、キメラ的なグロさが抑えられて、新しいポップミュージックにきちんと昇華されていると思う。パーツを外面だけでなく内的な意味まで理解した上で使っているから、かもしれない。更にもう一つ特筆したいのが、キックの心地良さ。アタックの強さとビートの配置がとにかく絶妙で、人間が快感を感じる箇所に的確にミートしたリズムを構築してる。おかげでこのアルバムを聴いている間は、快感中枢を全方位射撃されているような、尋常じゃないトリップ感を体験出来る。

そして素材の元ネタはかする程も分かっていないから当然ではあるけど、それでもジャンルとして不可避であるはずの胡散臭さが驚くほど薄い。本作はその傾向が極地に至った作品です。胡散臭さをポップソングとしてのクオリティーでねじ伏せている。また音楽性は、少女チックで可憐なジャケットアートが全て物語っています。#4. サテライトsatelliteはシティポップ風の軽やかな歌が心地良く、#11. BLIZZARDはローファイなシンセとヒロイックな歌声が郷愁感をそそる。#5. Sweet Days#6. Feel So Good!!#10. わたしのYUME日記はジャケットと特にシンクロした中毒性の高いKawaii-チューン。もう再生が止まらない。レトロ歌謡90~00年代アニメソング、ゲーム音楽、シティポップ、シンセポップなどをミキサーにかけて、かの時代に青春時代を送った人間にドンピシャで刺さる劇薬に仕立てあげています。

慌てて過去作を買い漁って聴いてみたけど、本作が一番クオリティーが高いと思う。どうやらこれが私にとってFuture Funkの本格的な入り口になったらしい。イロモノではあるかもしれないが、個人的には記念碑的な作品だ。