FANTASY CLUB / tofubeats

Release : 2017/5/24

Genre : Electronic Pop / Hip Hop / House

Samples : Youtube

Tracklist :

  1. CHANT #1
  2. SHOPPINGMALL
  3. LONELY NIGHTS
  4. CALLIN
  5. OPEN YOUR HEART
  6. FANTASY CLUB
  7. STOP
  8. WHAT YOU GOT  ★オススメ
  9. WYG (REPRISE)
  10. THIS CITY
  11. YUUKI
  12. BABY
  13. CHANT #2

神戸市出身のトラックメイカー/プロデューサー、tofubeatsの最新作。メジャーデビュー後3枚目となるフルアルバム。

仕事帰りの道すがら、駅で電車を待ちながらふと周囲を見渡すと、誰もが手元のスマートフォンに釘付けになっていた。画一的な光景に思わずぞっとしたけど、そんな私もスマートフォンが無ければまともに生きていけない身体である。ましてや、今のインターネット環境が無い世界なんて想像すら出来ない。情報空間が現実世界を侵食しつつあるんだと改めて実感する場面だった。世の中では、国内の某キュレーションサイトに端を発する問題だったり、アメリカではトランプ支持者向けのデマ情報サイトが乱立して多大なアクセスをあげたり、あげくはイギリスでPost Truthなる言葉が流行ったりと、情報の正しさよりも「個人の感性に響くかどうか」という事を力ある発信者ですら信奉している。そんな状況で、自分の認識している世界がどこまで真実でどこまでが嘘なのか、もはや「分からない」という人の方が大多数のように思える(自分も含めて)。ネット上で触れる膨大な情報、全てについてファクトチェック出来る人なんて、いったいどれだけいるだろうか?

この「分からない」に囲まれた世界を”FANTASY”と皮肉というか諦念を持って呼称しつつも、それでも尚「自分」だけは見失わないという確固たる意志を提示したのが本作『FANTASY CLUB』。歌詞の節々からは、虚構と真実が複雑に絡まって「FANTASY」と化した現実世界への戸惑いや、情報に翻弄され、自身の力で価値判断する事を放棄した人々を憂う気持ち、そういったメランコリーがひしひしと伝わってきます。しかし、一方で彼自身のアイデンティティーたる音楽は過去最高に研ぎ澄まされていて、前作・前々作で纏っていたJ-Pop由来の分厚い鎧を脱ぎ去った等身大の姿が、くっきりと映し出されています。パーティーナイト的な喧騒や爆弾のようなポジティブ感情の発露、ローカルなポップ感は抑えられ、自らのルーツたるヒップホップやディープハウスにフォーカスした ー 1stフル『lost decade』ほど好き勝手やってる感じでもない ー 一貫した美しさを持つ理知的で大人びた、国籍不問のエレクトロ・ポップに仕上げています。

#1. CHANT #1~#7. STOPまでは、まるでなだらかな上り道を歩いているような、落ち着いたトーンのメランコリックな楽曲が続きます。中でも#2. SHOPPINGMALL#6. FANTASY CLUBがハイライトで、前者は社会風刺とも受け取れる突き刺さるような歌詞が印象的で、後者はタイトルに恥じない中毒性のあるメロディーと心地良いビートが幻想世界へと背中を押してくれる、トロピカルなハウス風ナンバー。

続く#8. WHAT YOU GOT#10. THIS CITYに至るダンスチューンの連続は、アルバム全体のハイライトとして輝いています。シンセとドラムのミニマルなループから、終盤のスウィング感に満ちた豪勢なアンサンブルへの移行が堪らない#8、同曲をより煌びやかに、電脳的にリミックスして爽やかな余韻を広げる#9、軽やかにステップを踏むビートと、細分化され散りばめられたシンセによるポップメロディーが眩しいハウスチューン#10。ポップメイカーとしてのtofubeatsの才気をこれでもかと浴びることができます。

シンセと女性ヴォーカルの歌(若手シンガー・ソングライターSugar meによるもの)が子守唄のように優しくゆらぎ、木霊する#11. YUUKIも素晴らしい。そしてピッチ修正したイントロをベースに、厚いシンセとコーラスを重ねてクライマックスナンバーに相応しい大団円を演出する#13. CHANT #2で幕を閉じます。

これまでの諸作品にいまいちハマりきる事が出来なかった私でも、本作は驚く程ダイレクトに琴線に触れました。国境を通り越してアピールできる、素晴らしい傑作ポップ・アルバムだとオススメできます。何より前作からの思い切った方向転換、無理に飾り立てずに、悩める等身大の姿を晒したtofubeatsに心からの敬意を。