Ruler Rebel / Christian Scott aTunde Adjuah

Release : 2017/3/31

Genre : Jazz

Samples : bandcamp

Tracklist :

  1. Ruler Rebel  ★オススメ
  2. New Orleanian Love Song
  3. New Orleanian Love Song II [X. aTunde Adjuah Remix]
  4. Phases [Feat. Sarah Elizabeth Charles]
  5. Rise Again [Allmos Remix]
  6. Encryption [Feat. Elena Pinderhughes]
  7. The Coronation of X. aTunde Adjuah [Feat. Elena Pinderhughes]
  8. The Reckoning

ジャズ発祥の地、ニューオーリンズ出身の若手ジャズトランペッター、コンポーザー兼プロデューサーChristian Scott aTunde Adjuahの最新作。Nate SmithやShaun Martin等が所属するアメリカのJazz/Hip Hop/Electronic系レーベル、Ropeadope Recordsからのリリース。

1917年、Original Dixieland Jass Bandという白人5人組のジャズバンドが、ジャズ界隈で初めて商業用レコードを発表したという。つまり、ジャズ音源の歴史は今年でちょうど100年目という節目を迎えたことになります。本作はそれを記念してリリースされた3部作「The Centennial Trilogy」のうち最初を飾る一枚。

張り詰めたようにスリリングで、且つ自由に羽ばたくようなアンサンブルに、サンプリング・パッドを用いた打ち込みのビートや、アフリカンパーカッション、エレキギターの唸るロック風のバイブス、シンセによるエレクトロニックで浮遊感のある音色を採り入れた前作『Stretch Music』。その大胆なアルバムタイトル通り、ジャズに留まらない新しい音楽への飽くなき挑戦心が剥き出しに表れた、野心作であり傑作でした。

本作『Ruler Rebel』はそんな前作から更に先鋭化を推し進めた、極めて攻撃的な作品。サンプリング・パッドの担当を増やし(ドラム、パーカッショニストだけでなくChristian Scott自らも手にするようになった)、ベースの頭数を増やし(前作では1名だったのに対し、本作では3名もクレジットされている)、出番の増えたシンセも組み合わさって、エレクトロ・ミュージックとの垣根はほぼ取り払われれ、最新型のブラック・ミュージックやベース・ミュージックを連想させるような作風となっています。前作で一部披露していたあからさまなロック的要素は無くなっていますが、エレクトロへの理解と習熟は遥かに進んだ事がうかがえます。

では生音が疎かになっているかと言えば全くそんな事はなくて、むしろエレクトロ化が進んでより透明感や奥行きの増したサウンドスケープを、まるで水を得た魚のように活き活きと泳ぎ回っています。Christianによるミドル~ハイトーンの静かに燃え上がるトランペットも、Elena Pinderhughesの軽やかなフルートの踊りも、雫のようなピアノの旋律も、渋いベースのリフレインも何もかもが、かつて以上の臨場感を取り戻しています。電子音と生音が音楽的には融合しつつも、音そのものは明確に分離されて存在感を失うことがなく、当たり前のように共生しお互いを引き立てあっている。Christianのコンポーザーとしての才能がここで強力に発揮されています。

幻想的なシンセに包まれて、哀愁を帯びたトランペットとピアノの音色が幽玄に木霊する#1. Ruler Rebel、エレクトロニクスによる不定形な水面のようなサウンドに、女性ヴォーカルSarah Elizabeth Charlesの歌が美しく融けていく#4. Phases、トラップ風のビートを軸としたミニマルサウンドを背に、トランペットがムーディに歌う#5. Rise Again、ループするベースリフを軸に、ダークな情景を描くギターとトランペットが妖しく木霊する#8. The Reckoningが当面のお気に入り。全体を通じてブラックミュージック的な都会っぽさとドープなムードで充満しています。ジャケットアートの雰囲気とも良くリンクしていて、ひたすらにクールだ。

8曲約34分という短いランタイムですが、ジャズ100周年を祝う記念碑として恥じない革新的な作品です。元々ジャズが好きな人も、そうでない人も是非触れて欲しい傑作。特にブラックミュージックがお好きな方はハマるのではないでしょうか。また3部作の第2弾『Diaspora』も既にリリースされているとの事で、こちらも機会があれば是非紹介したいと思います。