Anticult / Decapitated

Release : 2017/7/7

Genre : Death Metal

Samples : Youtube

Tracklist :

  1. Impulse
  2. Deathvaluation  ★オススメ
  3. Kill The Cult
  4. One-Eyed Nation
  5. Anger Line
  6. Earth Scar
  7. Never
  8. Amen

ポーランドのベテラン・デスメタルバンド、Decapitatedの7thフルアルバム。

若くしてシーンのブライテスト・ホープとしてデビューし、同郷のVaderBehemothら大重鎮に次ぐカリスマ的地位をほしいままにしてきた彼らですが、その道程は決して安寧としたものではありませんでした。2007年、バンドを乗せたツアー・バスが交通事故に遭い、ドラマーのVitekを喪い、ヴォーカルのCovanが再起不能の重症を負うなど、破滅的な損害を被ります。特に自らを除いた唯一のオリジナルメンバーであり、実の弟でもあったVitekを喪った、バンドの中心人物Voggの悲しみは想像を絶するものだったでしょう。この時点でバンド活動が完全に休止されたとしても、不自然ではない程の悲劇です。しかし4年という歳月をかけ、バンドは新作を引っ提げ再び立ち上がります。この不屈の歴史は、今や彼らを語る上で外せない魅力の一つとして定着しています。

しかし、今のバンドを体現する真の魅力、それは自らを進化させることに常に貪欲な姿勢です。併せて、その鑑識眼とバランス感覚…脈々と変化するシーンを構成してきた、様々なヘヴィーメタルの様式、それらの中から自らのスタイルにフィットし、アップデートを促すものを的確に見抜き、バランスを崩さず採り入れてみせる技術。この点においてDecapitatedを超えるデスメタルバンドは中々ありません。オールドスクールなテクニカル・デスメタルとしてデビューした彼らですが、その道を極めた後、4th『Organic Hallucinosis』辺りからスラッシュメタルやグルーヴメタル、果てはプログレメタルやジェントに至るまで採用し、自らの音楽に装着していきました。彼らの音楽は、激情を音に乗せてひたすら撒き散らすような初期からの傾向に加えて、より知性的な冴えを感じさせるものになります。前作『Blood Mantra』は古典的なデスメタルを脱却したグルーヴ重視のドラミングと、美しくエモーショナルなリードギターが映える新機軸の音楽性で、旧来からの一部ファンに多少の戸惑いをもたらしたものの、それを超える新規ファンを開拓出来るだけのクオリティーを備えていました。

そして、続く本作『Anticult』。これは『Blood Mantra』を更に洗練・発展させた内容になります。鋭いギターリフは更に切れ味を増し、ベースの轟音は更にダイナミックに、ドラミングはよりグルーヴィーかつ攻撃的になり、激高するRafałのヴォーカルは猛獣の咆哮のよう。メロデス顔負けの叙情ギターソロまで登場します。ソングライティングの面では前作から一曲一曲の尺が少し短くなった代わりに、よりキャッチーな変化に富むようになりました。もはや『Winds of Creation』の頃とは別人のようだけど、しかし核は変わっていないように思います。すなわち怒り、憎しみ、破壊衝動…これらデスメタルに必須となるアイデンティティーはむしろ研ぎ澄まされているから、変わらずDecapitatedの音楽として楽しませてくれるのです。特に気に入っているのは頭3曲と、#6. Earth Scar、そして#7. Never。全て、無条件でヘッドバンギングさせてくれるキラーチューン。またデスメタルにありがちな音の潰し合いも無く、分離され臨場感のある音像を堪能出来ます。本作はいつもと違う新しいスタジオでレコーディングされたようなのですが、そのことが影響しているのかもしれません。

「アンチカルト」という苛烈な言葉をタイトルに選んだのは、今の世に憂う気持ちがあったからでしょうか。盲目になるな、操られるな、縛られるな、偽のカルトを殺せ…、ここで語られるカルトとは何か?どこか内省を促すような語調や、「反体制すら計算された効果」(#1. Impulse)という歌詞からも、執政者とか支配者とか分かりやすいアイコンそのものではなくて、私達自身に内在する何かだと思います。もしや日本的に言うところの「空気」に近いものでしょうか?言わば同調圧力。「空気」をカルト的に盲信して失敗する、というのは日本的な感覚で腑に落ちてしまう。自分の首を絞めるな、人生を無駄にするな…少し、啓蒙された気分だ。

ヘヴィーメタルとしてとても普遍的な魅力を持った作品だと思います。それはセールス的な好調さにも表れていて、アメリカでの初週販売は過去最高、ポーランドのナショナルチャートでは2位を記録。旧来のスタイルが好きな人には相変わらず微妙な作風かもしれないけど、個人的にはそれをねじ伏せるだけのクオリティーがあると思っているし、とても気に入っています。