Hidden Dimensions / Widek

Release : 2017/8/19

Genre : Progressive / Post Rock / Ambient

Samples : bandcamp

Tracklist :

  1. Deep & Shallow (feat. Marco Sfogli)
  2. Blue Moon (feat. Stel Andre)  ★オススメ
  3. Comet (feat. Sithu Aye)
  4. Gravity (feat. David Maxim Micic)
  5. Solstice
  6. Phases (feat. Stephen Taranto)
  7. Satellite (feat. Owane & Paul Wardingham)
  8. Fourth Dimension (feat. Jake Howsam Lowe)
  9. Halo (feat. Adam Rafowitz)
  10. Light-Year
  11. Double Star
  12. Meridian
  13. Euclidean (feat. Gru)
  14. Sphere

宇宙と交信し至高のプログレッシブメタルを生み出す、ポーランドのワンマン・インストメタルバンドWidekの最新作。

ここ数年で実感した事ですが、「横の繋がり」が活性化しているシーンはホント見てて面白いですね。それが最も顕著なヒップホップ・シーンの動向なんて、全く詳しくないズブの素人である私ですら傍から見ていてワクワクするし、「ちょっとヒップホップにも手を出してみようかな」と乱心する程度には、凄まじい求心力が渦巻いています。この熱狂を生んだ原動力の一つであるアーティストの人と人とを繋げる力、更に繋がりを駆使して1+1=2以上の結果を出す力というのは、サラリーマンのビジネス現場だけでなくミュージシャン達にとっても、インターネット環境が当たり前になった今、際立って重要なスキルになりつつあると思う。…なんだか安い自己啓発本のような事を書いてしまった気がするが、今、この時代において世界の最前線を走る音楽エリートたちは、ほぼ例外なく一流の演奏家だけでなく一流のコミュニケーターでもある…と私は思っています。

閑話休題。ところで、そんなヒップホップよりも現在遥かに”静的な”シーンに落ち着いているヘヴィメタル。その中でもプログレッシブ・メタルと呼ばれるジャンルで、しかもギターインストを主な生業とする一部の集団において、活発な「横の繋がり」が巻き起こっていることはご存知でしょうか。PliniやSithu Ayeを筆頭に多数の才能あるギタリストが登場し、そして彼らのアルバムでは必ずと言って良いほどその内の誰かがフィーチャリングされ、チャレンジングなコラボレーションが行われている。これを活発と言わずに何と言いましょうか。今回は密かに活気付く当シーンにおいて、トップクラスの実力と知名度を持つWidekの最新作を紹介します。

Widekは「宇宙」の表現者です。それは彼の作品がすべて「宇宙」に関連するタイトルを冠しているからでもあるし、彼以上にそれをアートとして表現できるギタリストが稀だからでもあります。無限に広がる暗黒空間のスケール感や、銀河や星雲など人知を遥かに超えたスペクタクル的美しさを、ポストロックやDjent、アンビエントの方法論を参照しながら細かく階層化した音像に落とし込む手腕は、まさに職人芸であり彼以外が成し得る技ではありません。また、併せて彼自身がテクニックをひけらかすようなスタイルの持ち主ではなく、メロディーを重視する感性の持ち主である事も伝えたい。「宇宙」と聞くと冷酷さや無機質、無感情、暗黒等を連想する方が多いと思いますが、彼の持ち味である雄大で神秘的なフレージングの数々によって、彼の作品はいつも彩り豊かなメロディーで満たされているのです。

またWidekはアルバム制作時、多くのゲスト・ギタリストを招きます。本作ではSithu Aye、David Maxim Micic、Owane、Paul Wardingham、Gruなど屈指の実力派がそろい踏み。実は本作で初めて名前を知ったギタリストもいるのですが、どの方も超一級の演奏を披露してくれます。内容はこれまでよりも更に濃厚なスペース・メタルと化しており、更に扇情的に強化されたギターとシンセのフレーズ、より効果的に作用させたリバーブ、プログレッシブ・メタル的な展開の妙や、アルバム全体の抑揚付けなど、過去作の延長線上にありながら、あらゆる面でこれまで以上の拘りを感じさせる仕上がり。過去やや目についた淡白さが完全に解消されており、端的に言って最高傑作。別次元の完成度です。

作中最も気に入った曲は、Stel Andreというギタリストをフィーチャーした#2. Blue Moon。サビの高揚感を煽るトレモロリフが最高にエピック。Blue Moonというタイトルも詩的で素敵です。全体的にポストロック寄りの作風ですが、メタル由来の人懐っこいメロディーラインも生きていて、両者の良いとこ取りしたような印象を受けるでしょう。

アルバムジャケット通りの深遠な美しさに満たされた傑作です。