Malina / Leprous

Release : 2017/8/25

Genre : Progressive Rock

Samples : Youtube

Tracklist :

  1. Bonneville  ★オススメ
  2. Stuck
  3. From the Flame
  4. Captive
  5. Illuminate
  6. Leashes
  7. Mirage
  8. Malina
  9. Coma
  10. The Weight of Disaster
  11. The Last Milestone
  12. Root

ノルウェー出身のプログレッシブロック/メタルバンド、Leprousの最新作。前作から引き続きInside Out Musicからのリリース。

作品を重ねる毎に深化を絶やさないバンド、Leprous。フロントマンEinarの義理の兄でもあるIhsahnの後援で結成された事は有名な話ですが、今やその枕詞さえ陳腐に聞こえてしまうほど孤高の存在に至っています。King Crimson, Opeth, Tool, Porcupine Tree, The Mars Volta, Radioheadなどインスピレーションの破片はかろうじて見出せても、総体としては他の何にも言い換えようのない圧倒的なオリジナリティーを持ったバンドに成長しました。グルーヴと複雑性を兼ね備えた独創的過ぎるリズムと、ノルウェーのトラディショナルな香り漂う歌メロに支えられ、プログレッシブロック/メタル、オルタナティブロック、カオティックハードコア、マスロック、ジャズ、果ては電子音楽まで通過したジャンル収容不可の音楽を繰り広げます。アンサンブルには誇張や余計な装飾感が一切無く、まるで一流スポーツ選手、あるいは崇高な彫刻のように無駄の無い完璧な肉体美が貫かれています。

本作は、前作『The Congregation』(2015)とはそれなりに趣を異にする作品です。それは丸みを帯びたメロディアスなリードギターやアナログシンセの嘗てない活躍、フレーズやリフのより自然で流動的な繋がり、ストリングスの大胆な導入などに見る事が出来ます。細部を見れば卓越したテクニックが、俯瞰すれば幽玄で美しいメロディーラインが映える二層構造になっており、どちらを重視するリスナーでも満足する仕上がり。またその作風からして前作の延長というよりは、過去の道程を総括し発展させたものと言うべきです。それを今年リリースされたSoenの新作とも同じように、仰々しさよりきめ細やかさや自然な聴き心地を重視したサウンドプロダクションが支えています。併せてレコーディングをDavid Castillo、ミキシングをJens Bogrenというメタル界の傑作請負人が担当。前作に引き続き完璧な仕事を果たしてくれています。

更に注目すべき点として、前作でサポートメンバーとしてクレジットされていたベーシストSimen Daniel Børvenと、長年在籍したギタリストØystein Landsverkに変わってRobin Ognedalが新メンバーに正式加入しています。本作ではこの二名の活躍具合が著しく、Robinはアルペジオやカッティングを交えた多彩なプレイとメロディアスなフレーズによって楽曲に幅をもたらし、Simenのベースは階層化が推し進められた音像の中で水を得た魚のように躍動しています。

特に印象的だった楽曲についても言及します。まずオープナーを飾る#1. Bonnevilleは本作の看板役を果たすキラーチューン。ジャズとプログレッシブロック、ヘヴィーメタルを跨ぐアンサンブルによって静と動、二重に幕開ける仕掛けが心昂らせます。続く#2. Stuckは何と言っても終盤の美しいストリングスの重奏に尽きる。ここで本作の異質っぷりを確信したリスナーは多いはずです。#3. From the Flameはスペーシーなバッキングにコーラスを重ねた派手な歌メロが重なる、活劇的なエナジーに満ち溢れた一曲。#5. Illuminateはアルバムリリース前に先行公開された楽曲で、ユニゾンするアンサンブルが生み出すダークな質感をバックに、Einarの煙たい歌が酩酊感を煽ります。そして#7. Mirageは波打つシンセの宇宙的な鼓動を背に、ダイナミックな歌とグルーヴィーなバッキングが駆けるパワフルなナンバー。続く#8. MalinaはEinarのオペラチックな歌とストリングスにフォーカスし、クラシカルな美しさを極めたバラード。技巧を凝らしたバッキングに、メロディアスでキャッチーな歌メロが対比的に浮かび上がる#10. The Weight of Disasterも良い。#11. The Last Milestoneも表題曲と同じくEinarの歌が主役ですが、こちらはバンドサウンドを完全に廃し歌とストリングスのみで奏でられるポストクラシカルな実験曲。しかしクライマックスとしてはこれ以上無い劇的な情景を映し出します。CD/LP版に収録されるボーナストラック#12. Rootも中々オツな佳曲で、ベースの高速リフとミステリアスでキャッチーなギターフレーズ、歌メロで最後まで惹きつけてくれます。

既に傑作の安売り状態と化している当ブログにおいても、掛け値なしの最高傑作として自信を持ってお勧めしたい名盤です。過去のディスコグラフィーと比べても特に聴き易い部類に入るため、入門盤としても申し分ありません。これほどまでに知的な美しさを湛えたロックバンドを、私は他に知らない。