Atone / White Moth Black Butterfly

Release : 2017/9/1

Genre : Progressive / Alternative / Art-Pop

Samples : Youtube

Tracklist :

  1. I: Incarnate
  2. Rising Sun
  3. Tempest
  4. An Ocean Away
  5. Symmetry
  6. II: Penitence
  7. The Sage  ★オススメ
  8. The Serpent
  9. Atone
  10. III: Deep Earth
  11. Evelyn

UK産プログレッシブ・メタルバンドTesseracTのヴォーカリスト、Daniel Tompkinsと、インド産プログレッシブ・メタルバンドSkyharborのギタリスト、Keshav Dharによるプログレッシブ/アートポップ・ユニット、White Moth Black Butterflyの2ndフルアルバム。セルフリリースだった前作から転じて、今作はKscopeからのリリース。

母体となったTesseracTもSkyharborも、非常に爽やか且つモダンに洗練されていて、高尚な美しさを想起させるバンド。ヘヴィメタルというジャンルにおいて特異な性質を持つ両バンドですが、一方でこんなサイドプロジェクトを動かせるのも彼らならでは。音楽性はメタルのフォーマットからは完全に逸脱したアート・ポップで、母体のバンドサウンドにおける「美しさ」を綺麗に切り取ったかのような幻想的で幽玄な世界観を創り出します。更に元々は「プログレッシブ」なジャンルの住人だけあって、楽曲あたり4分前後の短い尺でも予定調和に収まらない、緻密なソングライティングのセンスが常に驚きと感嘆をもたらしてくれます。本作はアルバム全体でも35分強しかない(前作より少し短くなった)けれど、前作以上に聴き応えのある作品に仕上がっています。

オフィシャルによる説明ではMassive Attack, Enigma, Sigur Ros,  David Bowie, Michael Jackson, Tool, Dredg, Thriceなど、多彩なバンド、アーティストが創造性の源となった事が述べられていますが、比較的彼らと近しいエリアからであれば、プログレッシブでありながらアンビエントを大胆に採り入れているという点で、RiversideのフロントマンMariusz DudaによるサイドプロジェクトLunaric Soulが、またアートポップとしての質感ではSteven Wilsonとイスラエル人シンガーAviv GeffenによるユニットBlackfieldが、ストリングスによるメロディーラインは近年のAnathemaに通ずるものがあります。彼らが好きなリスナーであれば何も考えずに買っても良いくらいですよ。

本作では、Devin Townsend ProjectやPeriphery、Skyharbor(…,etc)でプロデューサー/ストリングスアレンジャー等として活躍したRandy Slaughがキーボーディスト兼オーケストレーション担当として、また前作でも一部楽曲でゲストヴォーカルを務めた女性シンガーソングライターJordan Bethanyが正式にクレジットされ、二名とも獅子奮迅の活躍ぶりを披露しています。特に本作においては音の響きの滑らかさ、特にストリングスセクションの芸術的美しさが印象的で、なればこそアレンジャーでもあるRandy Slaughが進化の中核にいると思われます。次回作以降も是非続投して欲しいですね。この2名以外にも、チェロ、ヴァイオリン、ハープ、フレンチホルン、琵琶奏者、コーラス担当、サポートベース、ドラム、オペラヴォーカル等の部隊まで総勢20名に迫るミュージシャンが携わり、この映画的なサウンドスケープを一体となって生み出しています。更に音質への拘りに定評のあるKscopeレーベルが関わると…どんな化学反応を起こすかはご想像の通り。

どの曲も全く劣るもののない素晴らしい出来なのですが、個人的に特に気に入っているのは#7. The Sage。西洋と東洋の美的感性がコラボレーションしたストリングス・パートが抜きん出て美しく、本作全体のハイライトと言って良い程の存在感を放っています。他にも、Jordan Bethanyのアンニュイな歌が可憐に木霊する先行公開曲#2. Rising Sun、ピアノとストリングスのメランコリックな旋律と伸びのある歌唱が涙を誘う#3. Tempest、DanielとJordanの美しいデュエットがフォーカスされた#4. An Ocean Away、ダウントーンの沈み込むビートに、ウィスパーボイスを絡ませた静謐なアンビエントナンバー#5. Symmetry、アコースティックギターのオーガニックな音色やメロディアスなベースリフなど、バッキングの細やかで美しい旋律が印象的な#8. The Serpent、深みのある空間エフェクトに包まれて、女性ヴォーカルとストリングスの叙情的なメロディーがじわじわとカタルシスを滲み出していく#9. Atone、アコースティックギターを背に、オペラコーラスを交えた美しいヴォーカルワークが哀愁のクライマックスを飾る#11. Evelynまで、全く隙の無い仕上がり。

聴いているだけで天にも昇るような、芸術的な高級感に溢れたアートポップの傑作です。前作とは比較にならない程あらゆる点で順当にレベルアップしていて、今年最高のポップ・アルバムになるポテンシャルすら秘めていると思います。安っぽさなど欠片も見い出せない、壮大にして深遠な音のドームに是非包まれながら多幸感を感じて欲しい。