In Contact / Caligula’s Horse

Release : 2017/9/15

Genre : Progressive Metal

Samples : Youtube

Tracklist :

  1. Dream The Dead
  2. Will’s Song (Let the Colours Run)
  3. The Hands Are The Hardest
  4. Love Conquers All
  5. Songs For No One
  6. Capulet
  7. Fill My Heart
  8. Inertia And The Weapon Of The wall
  9. The cannon’s Mouth
  10. Graves  ★オススメ

オーストラリアのプログレッシブ・メタルバンド、Caligula’s Horseの4thフルアルバム。前作に引き続きInsideOut Musicからのリリース。

オーストラリア東端部に位置する美しい都市、ブリスベンにて結成された彼らは、2010年以降に表れたプログレッシブ・メタルバンドの中でも際立って優れた才覚を持っていました。2011年にリリースされたデビュー作『Moments from Ephemeral City』からその非凡っぷりは顕著であり、続く『The Tide, The Thief & River’s End』(2013)、そして前作『Bloom』(2015)に至るまで、安定的に作品のクオリティーを上げ続けています。

音楽性は極めて折衷的かつ流動的で、Dream Theaterに始まり、Pain of Salvation、Opeth、Meshuggah、Porcupine Tree、Peripheryといった面々が浮かぶ、様々なプログレッシブ・メタルの精巧なハイブリッド。曲によってはヘヴィメタルに留まらず、ポストロックやマスロック、果てはクラシック、オールディーズなロックンロールまで、様々な音楽性の欠片が散りばめられています。そこに近年のオーストラリア産らしい、クリアで雄大なサウンドスケープのフィルターを通して、彼らの音楽は出来上がります。同郷のKarnivoolやDead Letter Circus、Chaos Divine等と通じる部分もあるでしょう。

そんなバンドの中核にいるのは、オリジナルメンバーであるSam Vallen。多彩な楽器を操るマルチミュージシャンであり、優れたソングライターでもあり、更にはプロデューサー、サウンドエンジニアまでこなす彼こそが、Caligula’s Horseの進化を導いてきた原動力といっても過言ではありません。デビュー当時こそ現ヴォーカリストJim Greyとの二人三脚でしたが、今は才能あるミュージシャンを加えた5人編成となり、バンドアンサンブルはますます強固なものに、表現の幅も作品を重ねるごとに広がりを見せています。

本作『In Contact』は、プログレッシブ・メタルとして順当に進化を重ねながら、その姿はバンド史上最も「ポップ」なアルバムに仕上がっています。前作でも見え隠れしていたキャッチーなメロディーラインを、過去最高に工夫の凝らされたソングライティングと、超越的なサウンドプロダクションによってくっきりと浮かび上がらせ、非常にカラフルな情景を描いています。アルバムの合計時間も過去最大級の長さとなっていますが、馴染みやすいメロディーとバラエティー豊かな楽曲達によって、体感時間は最も短くなるのではないでしょうか。

また本作の収録曲は4つの「章」に分かれていて、それぞれTo The Wind(#1. Dream The Dead~#4. Love Conquers All)、The Caretaker(#5. Songs For No One~#6. Capulet)、Ink(#7. Fill My Heart~#9. The cannon’s Mouth)、Graves(#10. Graves)と名付けられています。それぞれの章で、時間軸や空間軸の異なる4人の芸術家が、様々な方法で「インスピレーション」を求めようと奔走する物語が展開されます。

偉大な功績を残した人物も含めて、様々なミュージシャンがアルコールや薬物によって破滅していく…、そんな悲劇を私たちは嫌というほど目に、耳にしてきました。ただそれは、彼らにとってはインスピレーションを得るための手段だったのかもしれません。しかし一方で、ミュージシャンが傑作を生み出すためには、人生を台無しにするしかないのか?そういった苦悩についてディスカッションを重ね、戯曲のように作られたのが本作。音楽学、そして社会学の博士号を持つSam Vallenだからこそ生み出せた作品なのかもしれません。

小難しい話は置いて流れる楽曲だけ聴いていても、本作が傑作であることは疑いようがありません。#1. Dream The Deadにおける静と動の美しいコントラスト、これだけで本作におけるとんでもない進化ぶりが分かるというもの。以降も#2. Will’s Song (Let the Colours Run)#5. Songs For No Oneのような、スピーディーでエネルギッシュな楽曲は本作におけるアクセントとして十二分に機能しているし、一方で清涼感溢れるギターリフレインとシンセが降り注ぐ#3. The Hands Are The Hardestや、アコースティックギターを大きくフィーチャーしたバラード#4. Love Conquers All6. Capuletを聴けば昂った心は落ち着き、じっくりと演奏の妙技と美しいメロディーに浸る事が出来る。

そして極めつけは、クライマックスを飾る15分超の長尺曲#10. Graves。まるでDream Theaterの名曲“A Change Of Seasons”を想起させる、それだけで一本の映画を作れてしまえそうな、圧倒的なドラマ性とテクニックが詰まった珠玉のプログレッシブ・メタルナンバー。それまでの各楽曲が”Graves”に収斂していくような、そんな印象を与えてくれます。

ちなみに本作のマスタリングは前作に引き続きJens Bogrenが務めているほか、ドラムとギターにメンバー交代が起きていますが、両名とも本作に好影響を与えているようです。特に本作におけるギターの活躍具合は凄まじく、Sam Vallenとのツインギターによる美しいコンビネーション、スタイリッシュでフラッシーなギターソロが随所で光り輝いています。

紛れもなく、間違いなくCaligula’s Horseの最高傑作です。そして、今年リリースされたプログレッシブ・メタル作品群においても、Pain of SalvationやSoen等と並んでトップを争うクオリティーがあります。彼らのファンは勿論、プログレッシブ・メタルがお好きな方、これを聴かないという選択肢は無いですよ!