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Amenra “Mass VI”

2017年11月4日

Release : 2017/10/20

Genre : Post Metal

Samples : bandcamp

Tracklist :

  1. Children of the Eye
  2. Edelkroone
  3. Plus Près de Toi (Closer to You)
  4. Spijt
  5. A Solitary Reign  ★オススメ
  6. Diaken

ベルギー、コルトレイク出身の5人組ポスト・メタルバンドAmenraの6thアルバム。Neurosisのメンバーによって創設された事でも有名なNeurot Recordingsからのリリース。

アルバムタイトルとして一貫し続けてきた『Mass』シリーズ6作目は、Amenra史上最も美しい作品。ハードコア由来の原初的で荒々しい演奏が目立つデビュー作『Mass I』から、後の本格的なドゥーム、ポストメタル方面へと続く源流が確認できる『Mass II』~『Mass III』、暴力的な重低音の奔流へと成長し、磨き上げた悲壮のメロディーと共に全てを飲み込む『Mass IIII』~『Mass V』。過去5作という決して多くは無いリリースにおける、人知を超えた「深化」と「進化」の果てにある傑作です。

ところで前作から5年振りの新作リリースとなったワケですが、その間にも彼らは積極的に音楽活動を行っています。ConvergeとNeurosisをサポートするツアーを含む数多くのライブ、映画音楽の執筆、いくつかのスプリット・アルバムのリリース、サイドプロジェクトのアルバム制作など、多忙を極めていたようです。この多方面な活動が、本作へ何らかの影響を与えたことは想像に難くありません。例えば、本作における最も顕著な変化であるクリーンヴォーカルの積極的な採用、しかもこれまで多用されてきたスポークンワード的な用いられ方でなくしっかりと歌メロを綴るやり方は、アコースティック形式でのライブやサイドプロジェクトの影響が大きいと、バンドの創設者でありヴォーカリストColin H. Van Eeckhoutがインタビューで公言しています。

アルバムジャケットを飾る白鳥の死体は、同郷の写真家Stephan Vanfleterenによるもの。死の悲劇的な写真であるはずなのに生の刹那的な美しさを同時に感じてしまうそれは、光と闇が合わせ鏡である事を悟り、葛藤する人の心を描いた本作のテーマを如実に表現しています。そして奏でられる音楽も、これまでの黒一色だった音像に耽美で叙情的なメロディーが差し込む、二面性がより強調されたものとなっています。例えば個人的なハイライトナンバーでもある#5. A Solitary Reignはゴシックドゥームかと見紛う程メロディアス。本作の進化を最も顕著に表した名曲です。

勿論、ポスト・メタル化してからの持ち味である圧倒的な重低音も健在で、Colinの発狂シャウトと合わせて絶望的な情景がこれでもかと描かれます。本作はその裏面にある希望(あるいはその逆)を暴き出した作品なのであり、彼らの真の魅力である思索的・理知的な音像は損なわれるどころか、むしろ深みを増して色濃いモノとなっています。きっと従来からのファンも、変わらず楽しむことが出来るでしょう。

上に述べた#5. A Solitary Reign以外にも素晴らしい楽曲が揃っています。例えば、Amenra印の強烈なダウナーリフの応酬に始まる#1. Children of the Eye。6分前後からの余りに美しいクリーントーンへの変遷が印象的であり、ここで本作の異質っぷりが直感できます。20秒ほどの小曲#2. Edelkrooneに続く#3. Plus Près de Toi (Closer to You)も、静と動の明確なコントラストが強烈な一曲。これを武器にするバンドは数あれど、Amenraが生み出す悲壮の音像は誰も真似出来ないでしょう。クライマックスを飾る#6. Diakenは11分という作中最大の尺を目一杯活かして、悶えるような苦痛の激情を撒き散らす破滅的なナンバー。

希望と絶望、生と死のパラドックスを誰よりも劇的に表現できるバンドとして、Amenraの右に出るものはいなくなりました。バンド史上最も美しく、エモーショナルな本作はその金字塔として歴史に名を残すべき一枚です。

Review2017 albums, post metal

Posted by あっきー(akky)


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