Antisocialites / Alvvays

Release : 2017/9/8

Genre : Indie Rock / Dream pop

Samples : bandcamp

Tracklist :

  1. In Undertow
  2. Dreams Tonite
  3. Plimsoll Punks
  4. Your Type
  5. Not My Baby  ★オススメ
  6. Hey
  7. Lollipop (Ode To Jim)
  8. Already Gone
  9. Saved By A Waif
  10. Forget About Life

カナダ・トロント出身のインディーポップ/ロックバンド、Alvvaysの2ndアルバム。

90年代に国際的成功を収めたカナダのフォークグループThe Rankin Familyにおいて、ピアノとフィドルを演奏したJohn Morris Rankin、その娘であるMolly Rankinを起点に結成されたのがこのAlvvays。ちなみに「Always」としなかったのは、既に同名のバンドが居たからだそうな。フロントマンを務める彼女は、そのブロンド髪の美貌と妖精のように可憐な歌を振りまきながら、ソングライティングも担当しメロディーメイカーとしての才も遺憾無く発揮する、まさにバンドの中心人物。ビジュアル的にも音楽的にも、リーダーに相応しい活躍をしてきました。

ローファイなサウンドプロダクションを用い、哀愁深く、そしてクランベリーのように甘酸っぱいメロディーが木霊するロックスタイルは、セルフタイトルを冠した1stアルバム『Alvvays』(2014)で世界中のインディー・ロックファンの心を鷲掴みにしました。Molly自身が青春の音楽として挙げるOasisを代表格として、90年代オルタナティブ・ロックやエモを基盤にネオアコやドリームポップの要素を絡ませた儚げで艶やかな音楽性は、あの時代に思いを馳せるリスナーの郷愁愛を強烈に刺激したに違いありません。こうしてインディー・ロックシーン全体が大きく盛り上がっていた時代性も相まって、Alvvaysは世界中の音楽メディアから絶賛されつつ鮮烈な世界デビューを飾りました。

ところで、Alwaysという単語には「いつも、ずっと、いつまでも」といった意味がありますが、バンド名として選ばれたのには、Alwaysに「郷愁や情趣の積み重なり」という意味合いが暗に含まれているからだそう。私たちの慣れ親しんだ映画に『ALWAYS 三丁目の夕日』というものがありますが、昭和時代への郷愁を描くあの映画でも、同じような採用のされ方だったのではないでしょうか。MVで発揮されるレトロ趣味も含め80~90年代を強烈に意識したそのあり方は、私たちと「思い出」を結びつける儚い美しさとなって、バンドの魅力と不可分に結びついています。

インディー・ロックからヒップホップへと時代の趨勢が移り変わった現在、3年振りの新作となった本作『Antisocialites』においても彼らの魅力には全く衰えが感じられず、それどころか更にレベルアップしてカムバックを果たしています。ツアーやフェスを繰り返し大きくなった彼らの姿は前作よりも垢抜けてややハイソになったものの、やっている事はこれまでと変わりなく、しかしこれまで以上に説得力のあるメロディーで語りかけてきます。前作での「Archie, Marry Me」や「Party Police」、「Atop a Cake」といった個人的名曲群に匹敵するナンバーも多く、アルバムとしての充実度では前作を凌駕します。

前作でのぼやけたブラウン管っぽさがなくなり、クリアな空間で木霊するメロディーはまるでリマスタリングされたレトロ映画のように、ノスタルジーを今を生きる感性に劇的に伝えてくれます。レコーディングをJohn Congletonが務め、リードギタリストでもあるAlec O’HanleyとMatt Estepがミキシングし、マスタリングをDavid Ivesが務めるというバック体制は前作と変わらず。用いたスタジオも同じです。そして同じ環境だからこそ、彼らの成長ぶりが如実に伝わってくるというもの。

前作よりも幸福感が湧き上がる楽曲が多いのは、フォークやロックとしての性格を残していた前作に比べ、本作が「ポップ」であることにフォーカスされているからだと思います。前作ではアッパーになりすぎず、中性的な歌声で抑え気味だったMollyの歌はタガが外れたかのように少女的に、開放的になり、それに引っ張られるようにアルバム全体がポップになっています。ギターとシンセの音が区別できなくなるほど輪郭を暈せ、ドリームポップの領域に近づいた#1. In Undertow#2. Dreams Toniteの冒頭2曲、可憐さを残しつつパンキッシュに踊る#4. Your Typeなど、序盤からその変化に気付かせてくれます。The Jesus and Mary ChainのJim Reidに捧げたらしい甘酸っぱいキャンディー味のナンバー#7. Lollipop (Ode To Jim)などは、その極地とも言えましょう。一方でアルペジオを主体としたフォーキーなギターで哀愁を誘うバラード#8. Already Goneや、影のあるボーイッシュな歌とアンサンブルで魅惑する#5. Not My Babyなど、前作と強く紐付く楽曲もあり、バンドとして着実に進化に向かっている事が窺える作風です。

当ブログで既に紹介したHoopsBeach Fossilsの新作と並んで、癒し系ローファイ・インディーロックの筆頭格になりうる傑作です。美しいメロディーと共に郷愁に浸りたい方は是非。