Shpongle “Codex VI”

Release : 2017/10/23

Genre : Psychedelic Trance / Psybient

Samples : bandcamp

Tracklist :

  1. Remember the Future
  2. The Magumba State  ★オススメ
  3. Empty Branes
  4. Are We There Yet ?
  5. Herr Gringleflapper’s Secret Stash Box
  6. Strange Planet
  7. I Woke Up As a Shlummutz
  8. Celestial Intoxication
  9. Hammock Therapy

イギリスを拠点に活動する、Raja RamとSimon Posfordによるサイケデリック・ミュージックプロジェクト、Shpongleの6作目となるスタジオアルバム。

70年代においてカルト的人気を誇ったプログレッシブ/サイケデリック・ロックバンドQuintessenceへの参加に始まり、自身が立ち上げたレーベルやShpongle等を通じて以後継続的にサイケデリック・ミュージックを求道し続ける偉大なカリスマRaja Ramと、Hallucinogen名義での諸作品やBenji VaughanとのデュオユニットYounger Brother、更にはTwisted Recordsの創設者としても有名なゴア/サイケデリック・トランス界のキングSimon Posford。二人の天才によるコラボレーションはインドやブラジル、キューバ、モンゴルなど数多の民族音楽を取り込み、結果としてサイケやプログレ、ジャズ、アンビエント、トランスといった既存のジャンルを含みながらもそれらを全く超越した、地球規模のクロスオーバー・ミュージックを生み出してきました。単一の形容が見つからないその音楽性は、Shpongleというグループ名の由来そのものとなっています。

さて、96年の結成から20年という節目を乗り越えた彼らですが、その摩訶不思議なサイケ・ワールドには本作でも全く劣化が見られず、むしろ過去作の美点を吸収しながら「その先」を提示する音楽を披露しています。アーティストとしての意識の矛先はより鋭く、またそのスケールも音楽と同様に拡大しています。Simon Posfordが巨大化したベースラインを軸に、途方もないスケールのアンビエント空間を生み出しながらトランシーなシンセリフで我々を酔わせれば、Raja Ram爺は華麗なフルートや自在なパーカッション捌き、インドやキューバ、ブラジルなど様々な民族音楽を参照した多彩なフレージングやサンプリングによって意識を覚醒へと導く。宇宙人っぽく処理されたサンプリングボイスもいかにもな感じで面白い。過去最高にダークで神秘的な音像となった本作は、彼らが地球規模のクロスオーバー・ミュージックに飽き足らず更なる未知との遭遇へと宇宙船に乗って旅立った事を示しています。極めて総括的且つ野心的作品です。個人的には『Tales of the Inexpressible』(2001)『Ineffable Mysteries from Shpongleland』(2009)にも匹敵するクオリティーだと信じています。

次に大まかなアルバムの流れですが、生音重視のオーガニックな前半部から徐々にアンビエントやエレクトロニカ、トランス的なサウンドへとシフトし、終盤はまた生音中心へと回帰していきます。ただこれまで通り個々の楽曲自体が極めて多彩な内容であるため、生音対エレクトロといった二元論で語る事自体がほぼ無意味である事も記しておきます。またアルバム全体を通じてベースの存在感が非常に大きく、メロディーも積極的に奏でるなど表に裏にとせわしなく動き、SF的雰囲気作りにも大きく貢献しています。サウンドプロダクションについては初期の土臭さや埃っぽさは無くなり極めてクリアになりましたが、宇宙には土も埃も無いのでこれぐらい振り切っている位が丁度良い。曲の尺は6~10分ほどで、上述した特徴と会わせて濃厚な音楽体験が保証されています。即効性は前半部の方が上ですが、聴き込めば中盤以降も同様に楽しむことが出来るでしょう。

キレのあるギター&ベースリフとフルートを中心に攻撃的に攻め立てる#1. Remember the Future、清らかなシンセに艶めかしいアコースティックギターの音色と女性ヴォーカルが乗る前半部から、ダークでシンセティックな後半部へと展開する#2. The Magumba Stateと、乱舞するフルートと凶悪なベースリフを軸に狂気的で妖艶な音像を創り出す#3. Empty Branesの頭3曲は鉄板。中盤以降では、ベースとパーカッション、銀盤を中心にループしながら生み出されるグルーヴが心地よい#5. Herr Gringleflapper’s Secret Stash Box、ミステリアスでポップな生音が小気味良くダンスする#8. Celestial Intoxicationがお気に入り。どの曲も一癖も二癖もありますが、ハマれば中毒必死の劇薬です。

前作はやや煮え切れない思いもありましたが、今改めて聴くと本作までの過渡期だったのだと再認識させられます。地球を抜け出し宇宙へと本格進出した彼らが、これからどこへ向かうのか。かつて一度は活動を休止した彼らが、再開してまで目指したその果てを見てみたい。今年で御年77歳を迎えるRaja Ram爺にはまだまだ現役でいて頂きたいところです。

サイケやエレクトロ・ミュージック界隈に名を馳せる彼らですが、個人的にはこれを機にプログレ好きにも積極的に聴いて欲しいところ。下手なプログレよりよっぽどプログレッシブ(進歩的)な音楽を堪能することが出来ます。元々プログレの影響が濃いバンドに在籍していたRaja Ramはともかく、Simon PosfordもPink Floydからの影響を公言したりと、意外とプログレとの接点は大きいんですよ。