Queens Of The Stone Age “Villains”

Release : 2017/8/25

Genre : Stoner Rock

Samples : Youtube

Tracklist :

  1. Feet Don’t Fail Me
  2. The Way You Used To Do  ★オススメ
  3. Domesticated Animals
  4. Fortress
  5. Head Like A Haunted House
  6. Un-Reborn Again
  7. Hideaway
  8. The Evil Has Landed
  9. Villains Of Circumstance

米カリフォルニア州出身のストーナー/ハード・ロックバンド、Queens Of The Stone Ageの4年ぶり7作目のアルバム。

今年(待望の!)出演を果たしたフジロックのステージも記憶に新しいQueens Of The Stone Age。恥ずかしながら私はフェスに参戦出来なかったので、せっかくの勇姿を拝むことも出来なかったのですが、インターネット上のファン達を通じてその素晴らしいパフォーマンスと熱狂の一端を窺い知ることは出来ました。いや、生で彼らのパフォーマンスを見られたなんて羨ましい限りです。

Queens Of The Stone Ageは90年代にカルト的人気を博したストーナー・ロックバンドKyussのギタリスト、Josh Hommeを中心に結成され、これまでに6枚のアルバムをリリースしてきました。バンドとして20年の歴史を持つ割には決して多作ではないものの、確かなクオリティーを持つアルバムをリリースし続け、前作『…Like Clockwork』(2013)は自身初のビルボードチャート1位を奪取し、その年のグラミー賞「Best Rock Album」にノミネートを果たすなど、バンドの格を大きく飛躍させた色々な意味で記録的な一枚でした。記憶が正しければ、多くの音楽メディアからも年間ベストアルバムに選ばれていたはずです。間違いなく当時最も「キテる」ロックバンドの一つでした。

5th『Era Vulgaris』(2007)から6th『 …Like Clockwork』(2013)までのスパンに比べれば4年という歳月も短か…くはないのですが、その不満も一発で帳消しにしてくれる程のクオリティー、そして驚きの連続が本作には込められています。

本作は前作ほどにヘヴィーなアルバムではありません。彼らに重低音「だけ」を求めるファンは(実際にいるかどうかは疑わしいですが)肩透かしを食らう内容でしょう。しかしそれ以前の作品を思い返してみれば、彼らの音楽的なコアが「ヘヴィーであること」だけでない事は自明の理です。ストーナー・ロックとしての作法も勿論重要ですが、もっと古典的なアメリカン・ロックンロールやファンク、ラテンミュージックへの志向も同じくらいの比率で込められていた筈です。前作で初めて彼らの音楽に触れた私ですらそう思うのだから、熱心なファンなら尚更そう思ってくれているのではないでしょうか。…というより本作も普通にヘヴィーなんですけどね前作と比べれば軽く感じるというだけで。人によってはこれはメタルだと言う人もいるかも知れないくらいにはヘヴィーです。あまり前作のイメージに囚われ過ぎていると、本作を楽しむことは難しいかもしれません。

そういった余計な固定観念さえ脱ぎ捨てれば、本作は純粋に素晴らしいロック・アルバムだという事が浮き彫りになってきます。上述した「古典的なアメリカン・ロックンロールやファンク、ラテンミュージックへの志向」が本作では非常に濃く表れていて、思わず体を揺らしたくなるくらいダンサブルな作風。これにはプロデューサーの手腕が一枚も二枚も噛んでいて、AdeleやChristina Aguilera、Solangeといった有名ポップ/ソウル系シンガーソングライターを手がけたり、少し前にBruno Marsをフィーチャーしたシングル「Uptown Funk」(※)で数々の音楽賞を総なめにした事で時の人となったヒットメイカー、Mark Ronsonが携わっています。思わず何故この組み合わせ?と唸ってしまいますが、どうやらバンドと彼とは古くから親交があった模様。変革を求めるバンドの意向と上述した音楽的嗜好性が重なって、彼を適役として呼び込んだのかもしれませんね。

※Mark Ronson – 「Uptown Funk ft. Bruno Mars」

彼の手腕によって、作風が良い意味で非常にポップになりました。尚且つストーナー・ロックとしての引き摺るようなグルーヴを残しながら、かの音楽にありがちな「濁らせた」サウンドプロダクションから脱却し、クリーンで奥行のある音像へと変貌しています。バンドは空いた空間を有効活用し、今までに無かったようなシンセやコーラスを加えたり、ギターやドラムの音色を粒立たせたり、ベースをよりメロディアスにして暴れさせたり、ブラスセクションを大胆にカットインしたり、綺麗に階層化された音像の中で凄まじい挑戦劇が繰り広げられています。それでいて、バンドが積み上げてきた美点を全くスポイルしないのが本作の凄いところ。変貌はしたものの、どこからどう切り取ってもQueens Of The Stone Age流のロック・サウンドなのです。

ロックが当初はダンス・ミュージックとしての役割を果たしていたという話を聞いたことがありますが、それを鑑みれば本作はまさに理想的な内容。なのですが、ストーナー・ロックでここまでやり切ったバンドを私は他に知りません。またオールディーズ・ロックンロールからの香りをどうしても色濃く感じてしまう本作ですが、所謂「古き良き時代」への回帰ではなく、時代を背負った上で新しいものを生み出そうとする決意の表れであることは言うまでもありません。現に本作は時代を超えた創作感性が交わって化学反応を起こした、革新的な内容に仕上がっているのですから。

イントロのミステリアスなシンセサウンドと、その後に待ち受ける力強いアンサンブルのコントラストが印象的な#1. Feet Don’t Fail Me、ハンドクラップとステップを踏むようなキャッチーなギターリフ、そしてこぶしの効いた歌が脳みそを滅茶苦茶にかき回す#2. The Way You Used To Do、ローファイなシンセサウンドに乗ってふわふわと流れる歌メロが酩酊感を煽るバラード#4. Fortress、乾いた音像をパンキッシュに鳴らすアンサンブルが清々しい#5. Head Like A Haunted House、今までの彼らなら確実に採り入れようとしなかったであろう音色のシンセを大胆に導入し、艶っぽい歌とコーラスで魅了するQOTSA流ポップナンバー#6. Un-Reborn Again、美しいほどに統制の取れた縦ノリグルーヴがひたすらに心地良い#8. The Evil Has Landed、哀愁を込めて奏でられるギターフレーズの数々と麗しい歌のメロディーがハートを貫くバラード#9. Villains Of Circumstanceが特に気に入ってます。ほぼ全曲ですね

「時代の潮流なんて何のその」そんな彼らの声が聞こえてきそうなくらい堂々と、活き活きとしたロック・アルバムの傑作です。本作を通じて彼らの意外なほどのフットワークの軽さと、柔軟な思考性が分かる事でしょう。本作を筆頭に、創意工夫の凝らされた優れたロック作品は今年も沢山生まれています。