Sampa The Great “Birds And The BEE9”

Release : 2017/11/10

Genre : Hip Hop / Rap / R&B / Soul

Samples : bandcamp

Tracklist :

  1. Healing
  2. Flowers (feat. REMI)
  3. Protect Your Queen
  4. Rhymes To The East
  5. Can I Get a Key
  6. Black Girl Magik (feat. Nicole Gumbe)  ★オススメ
  7. Casper (feat. Syreneyiscreamy)
  8. Karma The Villain
  9. Bye River
  10. Inner Voice (feat. Mwanje Tembo)
  11. The Truth
  12. I Am Me
  13. Healer (feat. Zaachariaha)

ザンビア生まれボツワナ育ち、現在はオーストラリアに拠点を置くヒップホップアーティスト、Sampa TemboことSampa The Greatの最新ミックステープ。Ninja Tune傘下のレコードレーベル、Big Dadaからリリースされています。

2年前にWondercore Islandよりリリースされた1stミックステープ『The Great Mixtape』の素晴らしいクオリティーが話題を呼んでから、Kendrick LamarやThundercat、そして当時のレーベルメイトHiatus Kaiyoteら錚々たるたる顔ぶれからツアーサポートの指名を受け、SolangeやNo Nameらの台頭でにわかに隆盛の兆しを見せる女性R&B/ヒップホップ界隈でメキメキと頭角を表しつつあるのがこのSampa The Great。Hiatus Kaiyote周辺のアーティストらしく彼女の音楽にはジャンルの制約が存在せず、自由自在なクロスオーバーを披露してみせます。ヒップホップ、R&Bに留まらず、ジャズやネオソウル、ファンク、レゲエ、アンビエント、そして自身のルーツであるアフロビートを組み合わせ、ローファイでエキゾチックなメロウ・アートに昇華。他アーティストと比べても傑出した拘りを持って作曲されているのが一目瞭然で、カラフルなサウンドとアフロビートのトライバルなリズムによってまんまと心が踊ってしまう。このダンサブルな側面が界隈に詳しくない私のようなリスナーへの敷居を下げてくれています。本作『Birds And The BEE9』はそういった彼女の”個性”がより濃密な形で現れており、今年の女性Hip Hop/R&B界隈でも突出した逸品に仕上がっています。

ジャマイカの伝説的レゲエミュージシャン、Bob Marleyから強く影響されたという彼女は音楽と政治的なメッセージを重要な繋がりとして認識しているようです。アフリカで生まれ育ち、西洋文化に触れ、今や世界レベルで活躍する彼女だからこそ視える世界があるのでしょう。例え言語的に彼女の言葉が分からないからといって、聴かない理由にはなりません。彼女が込めたメッセージは音楽そのものが持つ説得力へと生まれ変わって、私たちを充分に奮い立たせてくれるのだから。

Kwes Darko、Sensible J、Alejandro ‘JJ’ Abapoという3人のプロデューサーを招いて制作された本作は、『The Great Mixtape』よりも更に”アフリカ”の情景が強く表出した作品です。そして、私自身のステレオタイプに照らしてまだ”真っ当な”R&B/ヒップホップ作品だった『The Great Mixtape』と比べても非常にフリーキーであり、スピリチュアルであり、トラディショナルな作風。特に印象的なのは銀盤やサックスの存在感、そして多彩なゲストヴォーカルの起用で、暖かみのあるムーディな音色によって前作と一線を画した作風へと導いています。一方でSampa自身の研ぎ澄まされたラップは健在で、ソリッドな前作の美点を引き継ぎながら、オーガニックな柔らかさ・美しさを表現する事に成功しています。

トライバルなビート、柔らかなサックスとコーラスが文字通り花のような奥ゆかしい彩りを添える#2. Flowers (feat. REMI)、アクの強いフロウとループする銀盤が強烈にエキゾチックな香を漂わせる#4. Rhymes To The East、優しく包み込むようなベースとサックスの音色が心地良い微睡みへと導く#5. Can I Get a Key、強かなトライバル・ビートに乗って、メランコリックな銀盤とコーラスが軽やかに踊るポップチューン#6. Black Girl Magik (feat. Nicole Gumbe)、ダウナーな銀盤と醒めたフロウがひたすらに悲哀を煽る#7. Casper (feat. Syreneyiscreamy)、アンビエント風のシンセに包まれて、メロウな哀愁感情をそのまま結晶化したかのような#8. Bye River、シルクのようなコーラスとシンセ、ベースがムードを駆り立てるベッドルーム/シンセポップ風の#9. Inner Voice (feat. Mwanje Tembo)、無垢で無邪気な歌がいかにも南国的な癒しを提供してくれる#13. Healer (feat. Zaachariaha)、全てバラバラに聴こえるこれらも、アルバムという流れで聴けば全て一つの繋がりの中で必然的に配置されている事がわかります。

複雑なバックボーンを持つ彼女と世俗との繋がりが、まるで万華鏡のように鮮やかな形で表出した傑作。異文化との衝突によって生まれる喜怒哀楽の感情が生々しく描かれながら、その全てが女性的な優しさに包まれていて、総合的にはヒーリングミュージックといっても差し支えないほど屈託のない”癒し”をもたらしてくれます。同時にサイケミュージックにも劣らない中毒性も備わっているので、過剰摂取による寝不足にはご注意を。とにかくジャンルに収まりきらない音楽を探している方には是非とも知って頂きたいアーティストです。