Diablo Swing Orchestra “Pacifisticuffs”

Release : 2017/12/1

Genre : Avant-garde / Progressive Rock / Metal

Samples : Youtube

Tracklist :

  1. Knucklehugs (Arm Yourself With Love)
  2. The Age of Vulture Culture
  3. Superhero Jagganath  ★オススメ
  4. Vision of the Purblind
  5. Lady Clandestine Chainbreaker
  6. Jigsaw Hustle
  7. Pulse of the Incipient
  8. Ode to the Innocent
  9. Interruption
  10. Cul-De-Sac Semantics
  11. Karma Bonfire
  12. Climbing the Eyewall
  13. Porch of Perception

スウェーデン発のアヴァンギャルド/プログレッシブ・メタルバンド、Diablo Swing Orchestraの5年振りとなる4作目。

「名は体を表す」という言葉はよく使われますが、彼らの音楽をイメージして頂くにあたりこれほど便利な言葉はありません。ヘヴィメタル(Diablo)、ジャズ(Swing)、クラシック(Orchestra)の3つを兼ね備えたバンド、Diablo Swing Orchestra。安直に説明出来るのですが、やっている事は狂気の沙汰以外の何ものでもない。これら3要素を接続しながら演奏する半ば曲芸じみた技をやってのけるのは、世界広しといえども彼ら以外に見つかるでしょうか。一聴したところでどうにも呆気にとられてしまう彼らの音楽性ですが、縦ノリと横ノリが混在した暴力的なグルーヴと複雑怪奇な演奏そして極めてポップなメロディーラインによって、第一印象が困惑であったとしても、感動へと実にスムーズに誘ってくれます。「狂気の沙汰ほど面白い音楽とはまさに彼らのためにある言葉のようなもの。

前作までおよそ3年周期でアルバムをリリースしてきた彼らですが、本作に限って5年という期間を要しました。その理由の一つとして、長年に渡りリードヴォーカルとしてバンドを支えてきた紅一点AnnLouice Lögdlundを失った事件がある事は想像に難くありません。どうやら、バンド活動によって彼女のオペラ歌手としてのキャリアが阻害されるのを恐れたためらしい。そしてバンドは新たなヴォーカリストとしてスウェーデン人の女性シンガー、Kristin Evegårdを迎えます。新作の制作に先立って彼女がバンドに馴染むための時間が必要だった事も、また容易に想像できましょう。

バンド側が一目惚れしたという程のEvegårdの歌声は、オペラ調のLögdlundとは違って突き抜けるようなパワーと瑞々しさがあります。これが本作の作風に決定的な影響を与えており、乱高下するアンサンブルにしっかりと追随する、それどころかリードしながら、ハイテンション・コメディーさながらの狂乱を作り出しています。仮にLögdlundの声であれば劇場的なスケール感と共に幾分上品な作風になっていた事でしょう。それに比してEvegårdは良い意味で俗っぽく、フィクション的な狂気を盛り上げるのが上手いようです。彼女の歌いぶりからは、カートゥーンや映画、ドラマ世界で見かける「狂気に囚われた女」の姿を思い出します。アップテンポなナンバーだけでなくバラードですらその狂気がにじみ出ているのだから、彼女は間違いなく本物です。

あと地味にドラマーにも交代が起きていますね。前作で素晴らしいプレイを魅せていたPetter Karlssonは前作リリース後すぐに脱退したようで、Johan Norbäckなる人物が新たに加入しています。しかしそのNorbäckも本作で素晴らしいプレイを披露しているあたり、聴く分には大きなダメージにならないかと思います。

肝心の楽曲ですが、5年待った甲斐があった!と唸らせてくれるほど素晴らしい内容に仕上がっています。#1. Knucklehugs (Arm Yourself With Love)は、新ヴォーカルEvegårdが名刺替わりにと脳天に強烈なパンチをお見舞いするアッパーチューン。その狂気的なテンションでリスナーの不安を吹き飛ばしてくれる事でしょう。続く#2. The Age of Vulture Cultureは彼ら十八番のスウィング・メタルチューン。パワフルなヴォーカル&コーラスワークと美しいストリングスフレーズが互いを引き立てています。#3. Superhero Jagganathは静と動のコントラストが強烈な本作で最もコミカルなナンバー。繰り返される「スッパヒッロ!ジャガノ!」のフレーズがここ数日頭の中で鳴り続けているのですが、来週からの仕事に支障をきたしそうで恐い。また節々のフレーズからはラテンミュージック風の色味が漂い、コミカルさの中にムーディな大人の香気を仕込むあたりも彼ららしさというべきか。#5. Lady Clandestine Chainbreakerはオーケストラ隊のアンサンブルによる映画的演出が壮大な感動絵巻を紡ぎます。先行公開楽曲でもある#6. Jigsaw Hustleは本作では異色の部類で、縦ノリを促すヘヴィでマシーナリーなギターリフと悲哀を滲ませる歌、対して過剰なほど飾り立てるストリングス部隊が奇妙にマッチングした飛び道具的なナンバー。オーケストラの悲劇的な旋律を背に哀愁揺らめく歌を乗せたバラード#8. Ode to the Innocentも彼らの多才さを裏付ける一曲。#9. Interruptionは羽が生えたかのような演奏にポップな歌唱が乗る、ジャズの影響を強く感じるナンバー。後半のヒロイックな盛り上がりも素晴らしい。#11. Karma Bonfireは前作のオープナーVoodoo Mon Amourを思い出せる、強烈なスウィング感が火を撒くキラーチューン。ブラスセクションの乱舞と巨大なグルーヴを隆起させるバンドアンサンブルが快感中枢をひたすら刺激します。最終盤にこの曲を置けるという事自体が、本作の異常なクオリティーを如実に物語っておりますよ。本作最もヘヴィなアンサンブルで、重厚なカーテンコールを演出する実質的なクライマックスナンバー#12. Climbing the Eyewallに至るまで、最後まで全く勢いを落とす事なく駆け抜ける展開は爽快の一言。

まだリリース間もない本作ですが、当ブログでは本作を彼らの最高傑作だと宣言します。今までの彼らの美点が凝縮しているだけでなく、新ヴォーカルの加入によって更に拡張した音楽性を披露する本作は紛れもなく、過去の威光を抜き去って余りある完成度を備えているからです。