Hamferð “Támsins Likam”

Country : Faroe Islands

Release : 2018/1/12

Label : Metal Blade Records

Genre : Gothic / Doom Metal

Sample : bandcamp

Tracklist :

  1. Fylgisflog
  2. Stygd
  3. Tvístevndur meldur
  4. Frosthvarv
  5. Hon syndrast  ★オススメ
  6. Vápn í anda

2017年のヘヴィーメタルは個人的には不作だったのですが、今年はそうではないかもしれません。デンマークを構成する小さな自治領フェロー諸島から発信された傑作『Támsins Likam』を聴いて、その壊滅的に暗いメロディーとは裏腹に私の心は今年のメタル・シーンに対する期待で一杯になってしまいました。

彼らは2008年に結成を果たし同年、地元のレコードレーベル(Tutl Records)から1st EP『Vilst er síðsta fet』を、更に13年には1stフル『Evst』をリリースしていますが、両作ともに今聴いても全く色褪せを感じさせないハイレベルなゴシック・ドゥームメタルを披露していました。ズシリとのしかかる重暗いサウンドはSwallow The SunやDraconianといった同ジャンルのベテランにも引けを取らず、一方で共にツアーを行った仲でもあるAmorphisやMoonsorrowを思わせるような、ペイガニックでダイナミックなヴォーカルラインやギターフレーズが作品に叙事詩的なスケール感を纏わせます。ひたすら内へ内へと沈んでいくゴシック・ドゥームメタルとある種の開放感を備えたペイガンメタル、共通項はあっても繊細な注意がなければ互いを毀損しかねない両者をこれだけ上手に調理出来るセンス、それが彼らのオリジナリティーに繋がっています。デビュー時から既に圧倒的なレベルの違いを見せつけていた彼らですから、本作からMetal Bladeというワールドワイドなレーベルに移ったという事実も驚くべき話ではありません。

そして本作『Támsins Likam』はこれまでの延長線上にある作品であり、従来のファンを裏切るような内容ではないことは断言できます。そして前作から約5年という期間があったものの依然として彼らの魅力は尽きることなく、更に磨きのかかった美しいメロディーと暗鬱な重低音を心ゆくまで堪能できる逸品に仕上がっています。特にBarren Earthの新ヴォーカルとしても経験を積んだJón Aldaráの悪魔的な咆哮と耽美なオペラティック・ボイスはこれ以上ないほど研ぎ澄まされていて、暗鬱な重低音との見事な調和とコントラストによって生み出される深遠なサウンドスケープは本作の特筆的な魅力です。演奏もこれまで以上に多彩で、重々しい音像に差し込まれた銀盤やアルペジオギターによる透き通った空間美、語り部のような歌や重厚なコーラスによって吹き込まれる神々しい息吹には思わず背筋をゾクリとさせられること請け合い。上述したBarren Earthのようなあからさまなプログレ要素はないものの、彼らのファンであればおそらく楽しめるものとなっています。サウンドプロダクションはこれまでよりも生々しくドロッとしたものとなり(決してチープになった訳ではありません)、厳かでありながらアンダーグラウンド感溢れる妖しさや背徳の香気が充満する濃密な世界観が演出されます。

1st EP『Vilst er síðsta fet』、1stフル『Evst』、そして本作『Támsins Likam』はフェロー諸島の民俗学にインスパイアされた概念的三部作と位置付けられています。最終章を飾る本作は生まれては死にゆく生命について、彼らの神話や民族学のレンズを通じて考察された作品。具体的な内容は私にもわからないけれど、死というもののダークな側面や彼らの民族史観に由来する現地の空気や土の匂いは音を通じて伝わってきます。過去最高に暗鬱な作風ですが、三部作の最後を飾るにふさわしいクオリティーを有した傑作です。