TYPHOON “Offerings”

Country : USA

Release : 2018/1/12

Label : Roll Call Records

Genre :Indie Rock / Folk

Sample : bandcamp

Tracklist :

  1. Wake
  2. Rorschach
  3. Empiricist
  4. Algernon
  5. Unusual
  6. Beachtowel
  7. Remember  ★オススメ
  8. Mansion
  9. Coverings
  10. Chiaroscuro
  11. Darker
  12. Bergeron
  13. Ariadne

「生産性」を持て囃しながら、その為に自己を犠牲にするという本末転倒を厭わない私たち。同時に「仕事以外にやる事がない」という生きながらに死んだ、あるいは死にかけのゾンビが跋扈する世の中。斯く言う私もそんな集団の一員になり果てている訳ですが、本作は疲れ切った私に思考停止ポジティブというハードパンチを食らわせることなく、じっくりと癒しを提供してくれる貴重なロックミュージックの一つです。今回紹介するTYPHOONは米オレゴン州出身のインディーロック/フォークバンドで、総勢11名の大所帯。本作は彼らにとって4枚目となるスタジオ・フルアルバムになります。

ロックのスタンダードな編成にピアノ、ストリングス、ホーンセクション、更に可憐なコーラス隊を加えた特別なアンサンブル。そこから生まれるロック、オルタナ、フォーク、クラシックを内包したサウンドは牧歌的で力強く、現代的に洗練されてもいて、理知的ですらあります。様々な書籍、芸術、映画への造詣も深いフロントマンKyle Mortonによる、豪華演奏陣にも負けない圧倒的ソングライティングスキルが屋台骨となっているおかげです。

レーベルをRoll Call Recordsに移して初めての作品となった、2013年リリースの前作『White Lighter』が彼らの音楽に触れる初体験だった訳ですが、フォーキーな前作に対し本作はギターの主張具合が大きく、どちらかと言えばロック寄りの作風です。また、作品全体に大きなリバーブが掛かっていて緩急の幅も大きく、聴きながらまるで夢を見ているかのような非常な酩酊感を体験できます。そこにBon Iverが如く神秘性を湛えたMortonの歌声や壮麗なストリングスがヴェールとなって、生々しくも幻想的な絵巻が描かれていきます。

「記憶」が大テーマという本作では記憶を失った一人の人物を主人公に仕立て、目覚めの曲である#1. Wakeから、”Floodplains”、”Flood”、 “Reckoning”、”Afterparty”という4つの章で構成された物語を歩んでいきます。人から記憶を抜き取ったとき何が起こるのか、未だ歌詞を把握出来ていない私に語る資格はありませんが少なくともサウンドに絶望の色は薄く、むしろ優しさや力強さ、美しさが目立ちます。聴き手に何かを強制することなくじっくりと内省に浸らせ内側から癒してくれる本作は、即効性こそありませんが「気付いたら聴いている」ような持続的な魅力に溢れています。

日本での知名度はまだまだのようですが、大きなブレイクスルーを期待させるだけのポテンシャルを感じます。前作も素晴らしい作品でしたが、本作はそれを優に超える傑作。もたらされる静謐なひと時に是非身を委ねてみてください。