やなぎなぎ “ナッテ”

Country : Japan

Release : 2018/1/17

Label : NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

Genre : Pop

Samples : Youtube

Tracklist :

  1. snowglobe
  2. 時間は窓の向こう側
  3. over and over
  4. here and there
  5. スーパーヒーロー
  6. あなたはサキュレント
  7. 海を込めて
  8. 瞑目の彼方
  9. 砂糖玉の月  ★オススメ
  10. relaxin’soup
  11. 目覚めの岸辺
  12. 夜明けの光をあつめながら
  13. natte

綯う(なう)ー 糸や藁をより合わせて一本の紐や縄を作る ー 事になぞらえて『ナッテ』と名付けられた本作は、やなぎなぎにとっての宝物(料理、ゲーム、植物、旅行、貝殻…etc)をアルバムという形で収めた作品。尖ったアレンジセンスでポップの概念を広げた『ポリオミノ』(2014)や、「旅」をテーマに開放的なナンバーで攻めた『Follow My Tracks』(2016)とは異なり、彩度抑えめの落ち着いた楽曲達で構成されています。敢えて近い作風を選ぶならデビュー作の『エウアル』(2013)のそれですが、音の一つ一つの配置の心地よさやアルバム全体としての纏まりといった部分で彼女の成長が強く感じられる作品です。

より抽象的で内省的な表現を好む彼女は、テーマである「宝物」の魅力を直接的に描写するのではなく、擬人化した宝物そのものと対話するかのようにしてその魅力を間接的に表現していきます。例えば#5. スーパーヒーロー#6. あなたはサキュレント#11. 目覚めの岸辺などでは宝物に対して思いを語りかけるように歌っているし、また#7. 海を込めてでは逆に宝物である貝殻が主人公となって、海の声を届けるために自らを拾ってくれる人をいじらしく待っている様が描かれます。そしてどの曲も明確なハッピーエンドが描かれることなく、どこか切なさや儚さを残しながらフェードアウトしていく。いつも私たちに想像の余地を残してくれるやなぎなぎイズムは本作でも健在です。きっと、彼女の曲のいつも明るくなり切れない部分に僕は惹かれたんだろうな、と改めて思った次第です。サウンドはロックから王道のJ-pop、エレクトロ、シンセポップまで、またも多彩な引き出しを披露してくれます。そして歌詞に引っ張られるようにどの曲も繊細なタッチで描かれ、『ナッテ』という作品を覆う一貫したサウンドスケープが形作られていきます。

ところでアルバムタイトルに何故「綯って」ではなくカタカナによる「ナッテ」を採用したのでしょうか。アルバムを締めくくる#13. natteでその秘密が明らかにされます。そこでは物事が感性に響いて(鳴って)、そんな経験がより集められて(綯って)、宝物になる(成って)という3つの意味が示唆されます。この「ナッテ」という言葉には複数の意味が込められている、という事を念頭に本作を聴けばより味わい深い体験になるかもしれません。

浸透するような音の粒が最初から最後まで心地良く、リラックスして聴き通す事が出来ました。これまでで最も内省的な歌詞で、最も優しく歌われ、(良い意味で)最もフラットに奏でられる本作は過去作に劣らず魅力的な作品です。即効性では一歩及ばないかもしれないけれど、何度も聴きたいと思わせる作品としての強度はいずれをも凌駕しています。