In Vain “Currents”

Country : Norway

Release : 2018/1/26

Label : Indie Recordings

Genre : Progressive Death Metal

Sample : Youtube

Tracklist :

  1. Seekers of the Truth
  2. Soul Adventurer (Featuring Matthew Heafy)
  3. Blood We Shed
  4. And Quiet Flows the Scheldt
  5. Origin
  6. En Forgangen Tid (Times Of Yore, Pt. II)
  7. Ghost Path
  8. As the Black Horde Storms  ★オススメ
  9. Standing on the Ground of Mammoths

Enslavedに始まりIhsahn、Ulver、Arcturus、Solefald、Borknagar…ノルウェーで勃興したブラックメタルというジャンルにおいて、他ジャンルとのクロスオーバーを厭わずその芸術性を追求し続けた一派はいま、世界中の創造性豊かな若手~中堅メタルバンド達にとっての礎となっています。今回紹介するIn Vainもそうした流れを汲んで生まれた、ブラックメタルあるいはデスメタルを基盤に、映画音楽やジャズ、フォーク、プログレッシブロックなどの影を宿した極めて交叉的なサウンドを奏でるバンドです。特に前作『Ænigma』(2013)は、本作までの5年というスパンをものともしない強度を誇り、その驚異的な完成度でもって日本での知名度を飛躍させる契機となりました。

前作によって築いたハードルはとても高いものとなってしまった訳ですが、本作『Currents』はそれすら易々と超える傑作に仕上がっています。上述した他ジャンルの要素を巧みに織り混ぜ、私たちリスナーを何度も驚かせながら展開する壮大にして美しい絵巻は、EnslavedやIhsahn、Opethに匹敵する凄みと芸術性を持ち合わせます。彼らの代名詞(?)ともなったサックスの音色もここぞという時にばっちりカットインされていて、往年のファンもにっこりできる筈です。『Ænigma』から増分した寒々しくも美しいトレモロリフを始め魅力的なギターフレーズの数々は私たちの涙を誘い、リズムチェンジを多用しつつより強靭さを感じさせるドラミング、ただギターに追随するのではなくその隙間を埋めるように奏でられるベースは私たちを唸らせ、エモーショナル極まりない咆哮と美しいクリーントーンのコーラスによる幻想的なコントラストは、私たちを夢想の世界へと容易く導きます。「集大成」という言葉はあまり好きではありませんが、まさに現時点における彼らの「全て」が詰め込まれています。個人的には特にOpethのファンに聴いて欲しいと願います。特に「あの頃のOpeth」を切望するかつてのファン達に。

アルバムは1曲目の”Seekers of the Truth”から高いボルテージで展開。『Ænigma』のオープナー”Against The Grain”に負けずとも劣らない美しいギターフレーズと、過激なリズムチェンジの応酬でのっけからクラクラにしてくれます。続く”Soul Adventurer”はTriviumのマシュー・キイチを招き、美しいクリーントーンのヴォーカルとヘヴィーなバッキングサウンドとの対比によって壮大な心的世界を演出。悪魔的なイントロで始まるヘヴィナンバー”Blood We Shed”ではレトロプログレ風のシンセがキーとなり、妖しげな雰囲気に拍車をかけます。5曲目の”Origin”は本作のハイライト・ナンバーの一つで、Leprousを想起させるリズミカルなベースリフを基盤に、空白を駆使し奥行の広さとメリハリを強調した新機軸とも言える一曲。ただでさえ美しいメロディーの数々が随所にカットインされる空白によって際立つ様はとてもアーティスティック。オルガンの妖艶な音色を仕込みながら、グロウルとクリーンボイスの壮絶なデュエットを披露するミドルナンバー”En Forgangen Tid “(Times Of Yore, Pt. II)、幽遠なアコースティックギターとサックス、シンセの音色が曲名に違わずおどろおどろしいアンビエンスを提供する”Ghost Path”も同様に魅力的。そして8曲目の”As the Black Horde Storms”は、曲名に相応しい嵐のような演奏によって私たちの脳内を蹂躙します。私がこの曲を最もお気に入りとするのは、激しさと同時にそのメロディーの美しさと奥深さが特に際立っているためです。静と動のギャップが極めて大きくもたげる本曲には、Opethに匹敵するアコースティックギターの効果的なカットインと芸術的な展開美、そしてInsomniumにも負けない叙情的なギターフレーズが詰まっています。クライマックスを飾る”Standing on the Ground of Mammoths”ではハイライトである中盤の美しいアルペジオによる静寂の演出から、大団円を彩る爆発的な演奏に移行し最高級のカタルシスと共にアルバムの幕を閉じます。

デビュー作『The Latter Rain』(2007)から本作まで、バンドとしての極点を更新し続ける彼らには畏敬の念を覚えざるを得ません。ノルウェーにおいてはLeprousと共に2000年代デビュー組の中では間違いなくトップクラスのバンドです。そして前作と本作という傑作を立て続けにリリースしたことで、世界的な知名度も更に向上するに違いありません。本作は2018年を代表すべきヘヴィメタルの傑作であり、また去年の早くにリリースされたSoenの新作のように、その年の傑作として認められるか否かの門番としても機能することでしょう。