Rivers of Nihil “Where Owls Know My Name”

Country : USA

Release : 2018/3/16

Label : Metal Blade Records

Genre : Progressive / Brutal Death Metal

Samples : bandcamp

Tracklist :

  1. Cancer / Moonspeak
  2. The Silent Life
  3. A Home
  4. Old Nothing
  5. Subtle Change (Including the Forest of Transition and Dissatisfaction Dance)  ★オススメ
  6. Terrestria III: Wither
  7. Hollow
  8. Death Is Real
  9. Where Owls Know My Name
  10. Capricorn / Agoratopia

正直なところ、後悔していました。先月にIn Vainの新譜をレビューした時に「このアルバムが2018年のヘヴィメタルを測る際の指標となるだろう」と書いたことに。今思えば、あの時の私は興奮していて少しおかしくなっていたのでしょう、冷静に考えればあのクラスのアルバムを超えるものなど、年に数枚リリースされれば御の字なのです。かのアルバムはその化物じみた完成度もさる事ながら、ヘヴィ・メタルシーンそのもののプログレスを体現したかのような挑戦的な作品でした。完成度だけならばともかく、その開拓精神まで匹敵あるいは超えるような作品が存在するとすれば、それはもう2018年を代表すべき作品といっても過言ではないのです。

なのに、まだあれから1ヶ月ほどしか経過していないというのに本作が登場してしまった。米ペンシルバニア州出身の若きバンドがMetal Blade Recordsを通してリリースした3rdフル、『Where Owls Know My Name』が歴史を塗り替えてしまいました。In Vainの新譜と同等以上のポテンシャルを持った作品が全くノーマークの内に投下されました。おそらく、本作は世界中を驚かせる事になるでしょう。

彼らのスタイルは同郷の先輩であるDeathやCattle Decapitation、Hate Eternal等からの影響も匂わせる、目まぐるしいスピードとテクニックで蹂躙していくブルータル・デスメタル。ドラマティックなギターフレーズを頻繁にカットインする、この手の中では聴きやすい部類のバンドでした。1stフルのリリース時から名門Metal Blade Recordsに所属していただけの事あって、そのポテンシャルは相当なものです。それでも前作までの彼らは、非凡ではありつつもまだ突出した存在ではありませんでした。上には上が居たのです。

しかし本作の発表によって彼らは遂に孤高の存在となりました。ジャンルの枠すらも飛び越えて。テクニカル・デスメタルに留まらず、時にCynicやOpethを思い出させるような不気味なアトモスフィアをもたげるサウンドスケープへの変質、同時にアルトサックス、チェロ、トランペット、アコースティックギターやシンセなどを大胆にカットインし、怒涛の緩急の中で「聴かせる」バンドになりました。特徴的だったメロディアスなギターフレーズは更に顕著なものとなり、メロディックデスメタルにも匹敵するエピックな旋律を存分に堪能できます。体感速度は若干落ちましたが気になる程でもありませんし、そもそも楽曲の魅力が何倍増しにもなっている現実の前では減点対象にすらなりません。テクニカル・デスメタルとしての矜持を、かつての魅力を殺さないまま進化を実現しているのが本作の現実離れした部分です。

不穏なアンビエンスを漂わせるイントロ#1. Cancer / Moonspeakに始まる本作は、(良い意味で)イカれたナンバーでひしめいています。特にサックスを大胆にフィーチャーした#2や#5、#9、#10は印象に残るでしょう。テクニカル・デスメタルにサックスを噛ませようと誰が発案したのか、それも全く違和感なく楽曲に融け込んでいるんですがどういうソングライティング・プロセスを辿ったのか、全く想像がつかない。まさに天才の所業。アーティストたるもの凡人の想像の先に君臨していなければ、とでも言うのでしょうか。本作最長を誇るプログレッシブナンバー#5~インダストリアルメタル風の#6で作り上げた不穏な音像を、美しく幻想的なイントロで吹き飛ばす#7までの流れは本当にクールで、私はここをハイライトとして挙げたいと思う。

アルバム全体を通して無駄がなく、極めて洗練されています。本作の異常な変貌ぶりと完成度を鑑みれば、前作からの3年というスパンも短いように感じてくる。一体何があったんだRivers of Nihil、最高の作品をありがとう。