TesseracT “Sonder”

Country : UK

Release : 2018/4/20

Label : Kscope

Genre : Progressive Metal

Samples : Youtube

Tracklist :

  1. Luminary
  2. King
  3. Orbital
  4. Juno
  5. Beneath My Skin  ★オススメ
  6. Mirror Image
  7. Smile
  8. The Arrow

2000年代後半~2010年代初頭、特にPeripheryの出現から一ジャンルとして台頭し始めたた’Djent’。歯に衣着せぬ言い方をしてしまうと、親(Meshuggah)の使っているギターリフを拝借して、如何に”Post-Meshuggah”ひいては”オリジナリティー”を表現できるかという事にフォーカスしたジャンルです。黎明期にはPeripheryや、Animals As Leaders、Scale the Summit、そして今回紹介するTesseracTのような、今のプログレッシブ・メタルシーンを牽引するようなバンドを生み出しました。ちなみに一時期は新しいバンドの殆どが’Djent’なんじゃないかと錯覚するような、所謂ブームが起こったのですが、今はその熱気も落ち着いたように思います。

個人的に’Djent’バンドは2種類に大別出来ると思っていて、一つがAnimals As LeadersやScale the Summitのようなテクニック志向のインスト型、もう一つがPeripheryのような’歌’にも重きを置いたヴォーカル型。TesseracTはPeripheryと並ぶヴォーカル型の代表格で、Daniel Tompkins(及び2nd『Altered State』で彼の代役を果たしたAshe O’Hara)のシャウト~クリーントーンの自在な歌い分け、そして声色の瑞々しさはバンドの大きな武器となっています。

またTesseracTの更なる強みとして、ミックスに対する拘りが生半可では無いという事も挙げられます。’Djent’シーンどころかヘヴィメタルシーン全体を見渡しても際立ってアトモスフェリックで、美しいサウンドスケープを生み出すバンドです。数ある’Djent’バンドの中で唯一、Kscopeレーベルに所属しているという点もそれを後押ししています。

今や”Post-Meshuggah”を通り越してメタルシーン唯一無二の存在となった彼らが投下した新作『Sonder』は、流行期から成熟期に移行しつつある’Djent’そのものを象徴するかのような、総括的で密度の濃い作品となっています。前作『Polaris』は楽曲ごとに異なるアプローチで魅せてくれた挑戦的な作風でしたが、本作はそんな前作も含め、過去作全ての要素を交配してコンパクト(トータル35分ほど)にまとめた内容です。

まず『Polaris』から引き継いだ点とそうでない点があります。引き継いでいるのはアンサンブルそのもので、特に明確なのはDjentのぶつ切り感を解消する流麗なギターリフレインとアンビエントサウンドの組み合わせ。それらは本作の霊的なコンセプトにぴったりハマっています。引き継がなかったのはアルバムの構成。前作は多彩な楽曲が各々独立していましたが、本作は2曲目~3曲目、4曲目~5曲目、7曲目~8曲目のようにブロック単位で繋がっていて、全体としてはむしろ1stや2ndのように一貫したテンポで進行します。更に復刻した要素として、ヘヴィーメタルとしての厚みや重さもあります。バンドの生命線の一つであるDanのヴォーカルはまたも洗練されていて、圧倒的な表現力でサウンドのドラマ性を牽引しています。

まさに過去作の良い所どりしながらも、順当な深化を果たした内容で文句無い出来です。不満点と言えばアルバムのランタイムが短めな事くらいかな。この美麗なサウンドをもっともっと堪能したかった…。

ところでアルバムタイトルでもある”Sonder”とは辞書に載っていない造語であり、アメリカ人アーティスト、ジョン・ケーニッヒが作成した「単語として定義されていない感情を表す造語」を辞書化した『The Dictionary of Obscure Sorrows』にて以下のように説明されています。

n. the realization that each random passerby is living a life as vivid and complex as your own—populated with their own ambitions, friends, routines, worries and inherited craziness—an epic story that continues invisibly around you like an anthill sprawling deep underground, with elaborate passageways to thousands of other lives that you’ll never know existed, in which you might appear only once, as an extra sipping coffee in the background, as a blur of traffic passing on the highway, as a lighted window at dusk.

The Dictionary of Obscure Sorrows – sonder

例えば自分が街を歩いていて、すれ違ったり見かけるその一人一人が夢、家族、仕事、悩み事のような異なる人生模様を歩んでいることを突然意識して、圧倒されたり、自分のちっぽけさに絶望する事はありませんか?彼らから見れば自分など所詮エキストラの一人であり、道端の石ころと殆んど変わらない…そんな事を感得することは?私はあります。ー そんな感情を定義する単語だそうです。本作の霊的な音楽性、そこはかとない憂いを帯びたメロディーラインはそういった背景のもと作られています。前作ほどの多彩さや派手さには欠ける本作ですが、一貫したコンセプトを軸に展開される物語性、パッケージとしての出来は本作が上回っています。従来からのファンであれば変わらず楽しむことが出来るであろう傑作です。