Ihsahn “Ámr”

Country : Norway

Release : 2018/5/4

Label : Candlelight Records

Genre : Progressive Metal / Black Metal

Sample : Youtube

Tracklist :

  1. Lend Me the Eyes of Millennia
  2. Arcana Imperii
  3. Sámr
  4. One Less Enemy
  5. Where You Are Lost and I Belong  ★オススメ
  6. In Rites of Passage
  7. Marble Soul
  8. Twin Black Angels
  9. Wake

長い間、Ihsahnのソロ・ワークでの最高傑作は『Angl』(2008)だと信じて疑わなかったのですが、今年、その信仰が打ち砕かれる事になろうとは。Ámr(古代ノルド語であり、英語だと「dark」とか「loathsome(忌々しい)」とかに置き換えられるらしい)と名付けられた新作は、彼のソロ・ディスコグラフィーの中で少なく見積もっても、最高峰に位置する作品です。私はそんな紛れもない傑作である本作のキーワードを、二種類の「調和」だと考えています。

まず一つは「ポップミュージックとの調和」。特に個人的にも好んで聴くというヒップホップやトリップホップ、R&Bから、自らの音楽に適合するエッセンスを巧みに採り入れている点。サウンドについて「閉じた空間」である事を意識したという本作において、最近のアンビエントやダブ要素の強いヒップホップ、R&Bは大きなインスピレーションとなったに違いありません(実際、とあるインタビューではThe Weekndを愛好している事への言及もあります)。クリアな空間と浮かび上がるように強調されたヴォーカル、重心を落としたマットな低音部などにそれらの影響を感じます。特に#3. Sámrや#5. Where You Are Lost and I Belong、#8. Twin Black Angelsのようなクリーントーン主体の楽曲においては違いが顕著です。更に本作を聴けば一目瞭然ですが、彼がこれまで築いてきたオリジナリティーには欠片の毀損も認められません。つまり従来のファンであっても変わらず楽しめる、紛れもない「Ihsahnの作品」に仕上がっています。本作を聴けば聴くほど、その奇跡的なバランス感覚には驚嘆せざるを得ません。

もう一つは「Jens Bogren(の仕事)との調和」。今回のIhsahnによる音楽的な挑戦が、結果としてJens Bogrenの仕事と過去最高のハーモニーを奏でているという点です。今や「ヘヴィメタル界の傑作請負人」として名高いBogrenですが、やはり相性はあります。個人的な主観が多分に入りますが、攻撃的/金属的/鋭角的なヘヴィメタルよりも、理知的/有機的/鈍角的なヘヴィメタルの方が良い仕事をする事が多いと思うのです。そういう意味では、本作の変化はまさに後者への積極的な移行であり、自然とBogren印のミキシングとの相性が改善されています。記憶が正しければ彼とIhsahnは2nd『Angl』からずっとタッグを組んでいますが、本作での仕事が最も素晴らしい。

現代の優れたミュージシャンはみな音楽家としてのドメインを広く備えている、と私は思うのですが、ことヘヴィメタル界隈で彼に勝る者はいないのかもしれません。それを力強く証明するアルバムだと思います。