Tom Misch “Geography”

Country : UK

Release : 2018/4/6

Label : Beyond The Groove

Genre : Jazz / R&B

Samples : Youtube

Tracklist : 

  1. Before Paris
  2. Lost In Paris (feat. GoldLink)
  3. South of the River
  4. Movie  ★オススメ
  5. Tick Tock
  6. It Runs Through Me (feat. De La Soul)
  7. Isn’t She Lovely
  8. Disco Yes (feat. Poppy Ajudha)
  9. Man Like You
  10. Water Baby (feat. Loyle Carner)
  11. You’re On My Mind
  12. Cos I Love You
  13. We’ve Come So Far
  14. Follow
  15. Never Moved

私達が偶然にも、クリエイティブな若手ジャズ・ミュージシャンを知り得たとします。そのとき、彼(または彼女)がUK出身である確率は、今この時代が頂点なのかもしれません。何となく「良いな」と思ったジャズ・ミュージシャンが大体UK、特にロンドンを拠点に活動している。これ、控えめに言っても異常事態じゃないでしょうか。そんな魔境化したロンドンにおいて、頭角を表しつつあるのが今回紹介するTom Mischという男。1995年生まれ。この時点で頭がクラクラしますが、彼の作り出す音楽はもっと衝撃的です。

私の聴いてきた音楽はどれだけ「先鋭的」と評されたものでも、殆どが何か既存のジャンルの音楽がベースとしてあって、そこに色々な音楽的要素をトッピングしていく、といったスタイルで作られたものでした。例えば、ジャズをベースにヒップホップやエレクトロニカを、ヘヴィーメタルをベースにジャズやプログレ、ポストロックを、ポップスをベースにフォークやサイケ、シューゲイザーを、といったような具合に。

しかし、彼の音楽からは明確な「下地」を特定できない。ジャズ、R&B、ヒップホップ、ソウル、ロック、ポップス、クラシック…様々なジャンルがクロスオーバーしている事は分かるのですが、その選び取り方がニュートラル過ぎて「何を」聴いているのか、ジャズの人だと思って聴き始めてもそのうちどこか判然としなくなる。しかし間違いなく言えるのは、本作のあらゆるメロディーが、ハーモニーが、リズムが至上の心地良さを与えてくれるということ。そして、彼のジャズ・ギターがこれから飲むコーヒーを際限なく美味しくしてくれるということです。

私たちが普段無意識のうちに縛られる「今このジャンルの音楽を聴いている」という固定観念を断ち切って、強制的に中立状態にしたうえで、改めて音楽の素晴らしさを説いてくれる。そんなアルバム。「かくあるべし」な考えに深く縛られている人ほど、本作の羽が生えたかのような音楽はとても眩しく映ることでしょう。

弱冠22、3歳の若者がここまで自由で創造的なマテリアルを生み出してしまう、今のロンドンの土壌、恐るべしと言わざるを得ません。この勢いのまま、ロンドンが現代ジャズの聖地となるのか注目したいところです。今年のサマーソニック(特に今年はメンツが豪華!)にも出演するとの事で、もしサマソニに足を運ぶ方で彼を知らないなら、是非これを機に予習してみてはいかがでしょう?