Kadhja Bonet “Childqueen”

Country : USA

Release : 2018/6/8

Label : Fat Possum Records

Genre : Folk / Jazz / Soul

Samples : bandcamp

Tracklist : 

  1. Procession
  2. Childqueen
  3. Another Time Lover
  4. Delphine
  5. Thoughts Around Tea
  6. Joy
  7. Wings
  8. Mother Maybe
  9. Second Wind  ★オススメ

米カリフォルニア州リッチモンドで育ち、今はロサンゼルスを拠点に活動するシンガーソングライター/マルチ・インストルメンタリスト、Kadhja Bonet(カディア・ボネイ)。オペラ歌手である父親とミュージシャンの母親のもとに生まれた彼女は、幼い頃から様々な楽器に囲まれ、また厳しいクラシック音楽の訓練を受けてきました。しかし結局のところ、彼女は純粋なクラシック音楽とは袂を分かちます。ジプシーの民族音楽やクレズマー(東欧系ユダヤ、アシュケナジムの民謡をルーツに持つ音楽)に興味関心を抱いた彼女は、それらをネオソウルやスピリチュアルジャズ、オールドポップス、サイケ、R&B、クラシック等と組み合わせ、オーガニックな上品さとミュージカル的な躍動感の組み合わさった複合音楽を生み出しました。実験性と人懐っこさを兼ね備えたデビューアルバム『The Visitor』(2016)は各メディアから高く評価され、一躍、注目株に。固定観念を打ち破る彼女の音楽ですが、広義には「ポップス」の範疇にあるのではと思ってます。だからこそFat Possumに所属しているのでしょう。

そして、そんな前作で高く上がったハードルを本作『Childqueen』は軽々と越えてみせます。クラシカルの重厚な音像と、それに逆らうように軽やかで躍動感のある歌やバンドアンサンブルのギャップ。それらは前作でも特徴的でしたが、本作では更に磨きが掛かっているようです。より優美な方面に表現力を増した歌、それを如実に見せつける#4. Delphineのような曲もあれば、ゴスペル風のコーラスと重厚なストリングスのレイヤーが神々しい#6. Joy、Bonet流ディスコチューンとも言える#8. Mother Maybeのような異彩を放つ曲もあり、バラエティーに富んだ楽曲たちで最後まで飽きずに楽しめる本作。個人的に最も気に入っているのは、哀愁のメロディーが最も強調されている#9. Second Wind。メランコリックが過ぎて泣かずにはいられない。

前作よりも空間が広く使われているようで、ライブ音源を聴いているかのような臨場的な音像。一方で透明感よりも、ノスタルジーを喚起するために敢えてフィルターをかけたかのような、ほんのりざらついた音質。二つが組み合わさって、まるで昔日の演劇を見ているかのようなタイムスリップ感覚が楽しめます。これもまた本作の大きな魅力。

今年の歌もの作品の中だと、間違いなくトップクラスのポテンシャルを秘めた傑作です。ノスタルジックな音像にしっとり融け込んだ上品で哀愁深いメロディーが、黄昏時に似合います。