The Pineapple Thief “Dissolution”

Country : UK

Release : 2018/8/31

Label : Kscope

Genre : Alternative / Progressive Rock

Sample : Youtube

Tracklist : 

  1. Not Naming Any Names
  2. Try as I Might
  3. Threatening War
  4. Uncovering Your Tracks
  5. All That You’ve Got
  6. Far Below
  7. Pillar of Salt
  8. White Mist  ★オススメ
  9. Shed a Light

結成20周年を来年に控え、いよいよベテランの風格が漂ってきたThe Pineapple Thief。『Magnolia』(2014)、そして『Your Wilderness』(2016)と、2010年代の傑作として語られるべき作品を立て続けにリリースした彼らは、今世界で最も脂の乗ったモダンプログレッシブ・ロックバンドと言っても過言ではありません。当然のように、本作も傑作と形容するに相応しいクオリティーを備えています。

ただこのアルバム、暗い。暗いんです、雰囲気が。イントロ後の実質的なオープナー#2. Try as I Mightのタイトルからして後ろ向き感が凄い。十八番の美しいメロディーラインに支えられて絶望的とまではいかなくとも、鬱屈したサウンドスケープに終始支配されています。しかしそれもそのはず、本作は来るべきディストピアがテーマなのですから。

他者との実のある繋がりの消失や、社会構造の崩壊。それらに警鐘を鳴らしているんだとフロントマンBruce Soordは語ります。僕たちは(悪しき)革命の時代に生きているんだと。その恐怖はSNSを通じた爆発的な情報量の洪水や、相変わらず好転しない身の回りの社会情勢を眺めている内に、だんだんと確かなリアリティを帯びてきます。情報と加速する時代の流れに無力にも押し流されて、あるいは置いて行かれるうちに「自分」がどんどん希釈されていく感覚。アルバムジャケットの無感情に消えゆく肖像は、まさに鏡に映った未来のわたしたちなのかもしれません。

元々彼らの音楽って陽気さは殆どなくて、乱暴に言えばレディオヘッド的な鬱屈感にいつも駆られていたんだけれど、本作は上記の様なテーマも相まってそれが最も「重く」表現されていると思います。特に、前作でゲストとして卓越したドラムプレイを披露していたギャビンハリソン(Porcupine Tree, King Crimson)が本作で正式加入した事は大きい。ロックだけでなくジャズやヘヴィーメタルの影響が垣間見える自由でパワフルなドラミングは、本作に絶大な「重み」を持たせています。

或いは後期のPorcupine Treeに近いですね。この暗さ、力強さは通じるものがあります。ただメロディーセンスに関しては今のパイナップル泥棒達の方がずっと優れているようです。Steven Wilsonが本格的な脱プログレ、脱ロックすら果たした今、Porcupine Treeを継承し且つ超える可能性があるのは彼らだけかもしれません。キャリア的にはともかく、個人的なお気に入り度で言えばもう超えているんですけどね。