Nosound “Allow Yourself”
Country : Italy
Release : 2018/9/21
Label : Kscope
Genre : Art Rock / Post Progressive
Samples : Youtube
Tracklist :
- Ego Drip
- Shelter
- Don’t You Dare
- My Drug
- Miracle
- This Night ★オススメ
- At Peace
- Growing in Me
- Saviour
- Weights
- Defy
何と超越的な作品だろう。過去作品においてもミニマルミュージックからの影響は多分に見受けられましたが、本作はその側面を最大限に肥大化させ、もはや”プログレ”という狭い枠内にはとても収まらないアートミュージックに仕立てています。1曲目Ego Dripのヴォーカルの重ね方からして、本作のミニマルミュージックへの傾倒ぶりは顕著に見えます。音数をざっくりと削減し、反復されるリズムの上に乳白色のメロディーが優しく織り重なっていく。ロックアンサンブルによって静かに膨張と収縮を繰り返すそれは、しかしミニマルミュージック特有の無機質なものではなく、生命の鼓動を感じさせる有機的な音像。Nosound史上最も分離の際立つ本作は、生物的な機能美と、逃れられない孤独をきりきりと感じさせる傑作と化しました。
作風が故か、前作のIn Celebration of Lifeでのような派手なギターソロは本作に登場しません。しかしながら繊細なタッチのギターフレーズの数々は依然として私たちを楽しませてくれます。また、これまでの作品で猛威を振るっていたストリングスも、ギター程ではありませんが少し登場機会を減らしました。それでも各々の楽曲でのいぶし銀的な彩りは素晴らしく、また#6. This Nightでのダイナミックなストリングスのカットインはアルバムのハイライトに相応しい盛り上がりを演出します。
一方でバンド率いるジアンカルロ・エッラによるヴォーカルワークは、作風による助けも得て過去最大級に素晴らしいパフォーマンスを披露します。リバーブによって膨らみながら、引き伸ばすような歌い方で朗々と木霊する様はまるで狼の遠吠えのよう。#4. My Drugや#8. Growing in Me、#10. Weightsで特に顕著なものを聴くことが出来ます。ミニマルであるが故に銀盤やドラムの存在感も際立っていて、機械的ながらも悲哀をたっぷり含んだ旋律やビートは全体の基礎として作品を支えています。最後にサウンドプロダクションですが、これも素晴らしい調整。纏わりつくような気持ち悪さが一切なく、エアリーでクリアな音像を浴びるほど楽しむことが出来ます。これからの季節、騒音の一切ない静謐の中でこそ本作は輝くでしょう。
素晴らしいという言葉がいくら出てきても尽きない傑作です。「プログレッシブ・ロック」である事に拘りを持つファンには受け入れ難いかもしれませんが…。仮に前作の類似物を出されるよりは、本作の方が圧倒的に面白い内容です。それに本作は突然変異的なものではないと、過去作と地続きでいつかは至る境地であったと思わざるを得ないのです。
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