Ibrahim Maalouf “Levantine Symphony No. 1”

Country : France

Release : 2018/9/13

Label : Mi’ster Productions

Genre : Jazz / Classical

Sample : Youtube

Tracklist : 

  1. Prelude
  2. Overture
  3. Theme 1
  4. Movement I
  5. Theme 2
  6. Movement II
  7. Movement III
  8. Theme 3
  9. Movement IV
  10. Movement V  ★オススメ
  11. Theme 4
  12. Movement VI
  13. Theme 5
  14. Movement VII
  15. Epilogue
  16. Final

1980年、中東レバノンの首都ベイルートで彼が産声をあげた時、レバノンは歴史的内戦の最中でした。すぐに母国を去ったため育ちはフランスのパリですが、マーロフは西洋のクラシックやジャズだけでなく、ロック、エレクトロミュージック、ファンク、そして古典的なアラビア音楽にも熱心だったと聞きます。そんな彼が生み出す音楽はジャズを基調としながら、フランスらしい瀟洒な香りだけでなく、アラブの土っぽい熱気が共存しています。彼が手にする微分トランペット(彼の父親が製作)も、トランペットでアラブ音楽を再現する為に必要不可欠だからとか。幼少期に故郷を離れなければならなかった苦痛は私の想像を超えるものですが、それが逆説的に彼の強烈な郷土愛を形成しているのかもしれません。

不幸をはらんだ出生とは正反対に、トランぺッターの父親とピアニストの母親、ジャーナリスト、詩人、音楽学者を兼ねていた祖父という音楽一家に生まれ、英才教育を受けた彼のキャリアは華々しいものです。余りにも超人的で詳しく紹介すると余白が足りないので、詳しくはユニバーサル・ミュージックの彼の公式バイオグラフィーを読んでみてください。

本作は、The New Levant Initiative(以下NLI)というコミュニティが発案したプロジェクトが発端となり、交響曲の第1楽章はマーロフへの委託、あるいはコラボレーションによって製作されました。NLIは彼の生まれ故郷であるレバノンのみならず、トルコ、シリア、イスラエル、エジプトを含む東部地中海沿岸地域(レバント)の活性化を目指す集団。様々な著名音楽家、作家、歴史家、経済学者、ジャーナリスト、ビジネスマン等で構成されており、レバントを盛り上げるあらゆる分野の活動への支援や、本作を例とする様々なプロジェクト活動を率いています。レヴァントの賛美歌たるこの交響曲は、パリ管弦楽団、パリ国立オペラ座の公式児童合唱団という極めて豪華な布陣のもと制作され、勿論マーロフ自身もトランぺッター兼コンポーザー/アレンジャーとして参加、ギター、ドラム、ピアノからなるジャズバンドのアンサンブルを実に違和感なく溶け込ませています。”Theme 1~5″では管弦楽隊とコーラス隊が主役となり、哀愁深くも美しい主題が繰り返し提示され、それらを挟むように配置された”Movement I~VII”では、バンドアンサンブルが前に出てスリリングな演奏と展開の妙を楽しむことが出来ます。そして締めくくりとなる”Final”で大団円の演奏によって主題が壮大に再現され、映画的・地球規模的なスペクタクルと共に幕を閉じていきます。

交響曲といっても純粋なクラシックではなく、ジャズの要素を大いに含んでいるし、場面によってはフュージョン、ロック、果てはエレクトロミュージック風のミニマルな演奏まで多彩を極めた本作。クラシックの形式を知らない私でも大いに楽しめました。過去あらゆる音楽ジャンルを修めてきた彼だからこそ創り出せる、マーロフ印のジャズ・クロスオーバー・クラシック、2018年を象徴し得る音楽作品である事は疑いようもありません。