Antimatter “Black Market Enlightenment”

Country : UK

Release : 2018/11/9

Label : Music In Stone

Genre : Progressive Metal

Sample : Youtube

Tracklist : 

  1. The Third Arm
  2. Wish I Was Here
  3. This Is Not Utopia
  4. Partners in Crime
  5. Sanctification
  6. Existential  ★オススメ
  7. What Do You Want Me to Do?
  8. Between the Atoms
  9. Liquid Light

Antimatterの結成は1997年にまで遡ります。つまりもう20年を超えて活動している訳ですが、バンドの中心人物であるシンガーソングライター/マルチプレイヤー、ミック・モスの才能はここ最近、急速な開花を遂げているように見えます。それは作品を重ねる毎に最高到達点を更新する本業Antimatterは勿論、ポルトガルはPainted Blackのギタリストと組んだSleeping Pluseや、ヴォーカルを喪う悲劇と共に傑作をリリースしたゴシックドゥームの新星、Trees of Eternityでのコラボレーションが証明しています。そして、3年ぶりの新作となる本作も例外ではありません。明らかにバンド史上最高傑作であり、得意の美しく、退廃的な音世界はヘヴィメタルの強靭な音像によって極めてドラマチックに仕上がっています。

もともと、Antimatterにヘヴィメタルの要素はゼロに近かったのですが、本作で大胆な転向を果たしています。しかし、これは予測不能な事態ではなく、Anathemaや上述したPainted Black、Trees of Eternityなど、彼のヘヴィメタルシーンとの密接な交友関係を考えれば特別不思議ではありません。問題はこれまでのスタイルと如何に結びつくかであり、その点で本作はおよそ想像しうる限り最高の結果を叩き出しています。

オルタナティブロック、アートロック、モダンプログレ、ポストロック、アンビエント等の分野に触れてきたAntimatterは、幽玄、静謐といった言葉の似合うバンドでした。本作はその美点を殺す事なくヘヴィメタルのダイナミズムを採り入れ、更にサックスやカマンチャ(ペルシャの民族楽器)の扇情的な音色や儚げなフィメール・コーラスを伴い、KatatoniaやSwallow the Sunといった北欧のゴシックドゥーム、デプレッシブメタルにも負けない、分厚く抒情的なサウンドスケープを生み出しています。今年はその界隈に目立ったリリースが少なかったこともあり、本作が代表格として君臨してもおかしくは無い程の出来。Antimatterはこれ以上なく自然、かつドラスティックにヘヴィメタル・バンドへの転身を果たしたのです。

デプレッシブ/ゴシックメタルに特有の、メランコリックなギターの轟音に酔いしれる事の出来る#1. The Third Armと#2. Wish I Was Here、そしてサックスとカマンチャの妖艶な旋律が正気を奪い去る#5. Sanctificationと#6. Existentialが本作のハイライト。私たちが廃墟にある種の退廃的美しさを見出すように、『Black Market Enlightenment』もまた同様に美しい。絶望感を美麗に表現することにかけて、ミック・モスの右に出る者は居ない事を宣言する孤高の傑作です。