Yagull “Yuna”

Country : USA

Release : 2018/12/2

Label : MoonJune Records

Genre : Acoustic / Classical Crossover / Folk

Sample : bandcamp

Tracklist : 

  1. Searching For The Moon
  2. Dawn
  3. Sabbath Bloody Sabbath(Black Sabbath Cover)
  4. Muse  ★オススメ
  5. 101
  6. Fall Winter
  7. Riverwas
  8. Mori (Forest Song)
  9. Yuna
  10. Kiri
  11. Searching For The Moon (Reprise)

「病気を治療するために音楽を利用すること」、アメリカでは18世紀の終わり~19世紀初頭に論文などで言及され始めたそれは、その後、第一次・第二次世界大戦を経験した退役軍人に対する効果によって大きな注目を浴びる事になります。それに伴い、ミュージシャンが事前に訓練を受ける必要があったことがすぐに分かり、大学カリキュラムの需要が高まりました。これを受けて1944年、ミシガン州立大学が米国初となる音楽療法士になる為の学位プログラムを作ります(このようなカリキュラムでは、音楽以外にも心理学や解剖学など医学面の勉強も行うそう)。米国音楽療法学会(AMTA)が認定した大学のカリキュラムを修了すれば資格が発行され、晴れて音楽療法士になれるという。

今回紹介するYagullは、バークリー音楽院を卒業し音楽療法士となった神戸出身の女性、上坪可奈と、彼女の夫であり、セルビア共和国出身のギタリスト/作曲家のサシャ・マルコビックによるアコースティック・デュオ。夫婦はYagullとして以外にも、「ハグミュージック」というミュージックスクールの運営を行うなど、ニューヨークを拠点に精力的な音楽活動を行っています。

私がこのユニットを知ったのは前作『Kai』から。ここに引っ越しする前のブログでも紹介したのですが、当時の記事は全て削除してしまいましたので、ここで初めて知るという方も多いのではないでしょうか。Yagullは非常にシンプルで、常に魅力的なメロディーを奏でてくれるユニットです。主に登場するのはアコースティックギターとピアノ。そして夫婦の阿吽の呼吸。流行に媚びる事も、派手に装飾するわけでもなく。そういったものが刺激する快楽心や探求心とは別次元の、もっと何か、人として根源的な部分を癒してくれる音楽。私は音楽の技術的な事は何もわからないけれど、Yagullの音楽を聴くと音楽そのものの尊さにいつも気付かされ、感動を覚えます。特に、本作はそれが顕著でした。

前作から4年振りの新作となった『Yuna』には、これまでと異なり暗いバックボーンがあります。生まれるはずだった命。本作は「彼女」に対するレクイエムであり、そしてそれだけでなく、彼ら夫婦がその辛い経験を乗り越えて歩みだしたことが表現されています。#4. Museや#6. Fall Winter、#9. Yunaのような切なさや悲壮感を掻きむしる曲がある一方で、#5. 101や#7. Riverwasのような力強い意志を感じさせる曲もある事が、その証明になるでしょう。前作よりもシンプル且つ繊細なアンサンブル、そして奥深さを感じるサウンドアレンジによって、彼らの持ち味である美しく深遠な音像が強調されています。しれっとブラック・サバスのカバーを入れているあたり、彼らのお茶目さも健在で何より(前作はディープパープルの”Burn”がカバーされていました)。個人的には過去2作よりも大きく気に入っています。

しんしんと降り注ぐ雪のように繊細で美しく、また私たちに暖かい勇気の灯を点してくれる本作は、冬の寒さを実感し始める今の季節にピッタリと合います。プロの癒し手が生み出した珠玉の音楽で、今年最後のデトックスというのはどうでしょうか?