Swallow The Sun “When a Shadow Is Forced into the Light”
Country : Finland
Release : 2019/1/25
Label : Century Media Records
Genre : Melodic Doom / Death Metal / Gothic Metal
Sample : Youtube
Tracklist :
- When a Shadow Is Forced into the Light
- The Crimson Crown ★オススメ
- Firelights
- Upon the Water
- Stone Wings
- Clouds on Your Side
- Here on the Black Earth
- Never Left
前作がリリースされてからの2年間は、いや厳密にいえばTrees of EternityのヴォーカルAleah Stanbridgeの死がバンドを貫いてからは…彼らにとって、特に彼女と交際していたギタリストJuha Raivioにとって耐えがたい苦痛の時期だった事は想像するまでもありません。Raivioは余りのショックで森の中での隠居生活を余儀なくされ、去年の末にようやくリリースされたStanbridgeに捧げる先行シングル『Lumina Aurea』は、14分間もの”慟哭”でした。バンドサウンドを殆ど廃した液体的なサウンドスケープに暗鬱感と悲しみだけが漂う、アンビエントと言っても差し支えない衝撃的な内容。余りに鬼気迫る作風に、彼女の死がバンド生命すら燃え尽きさせてしまうのではないかと心配するほどでした。
本作もまた、Aleah Stanbridgeに捧げるアルバムである事に違いありません。しかし精神的には『Lumina Aurea』の延長線上にある作品ですが、作風は紛れもないSwallow The Sun印のメロディック・ドゥーム。それも過去最高にメランコリックに仕上がったハイクオリティーなものです。歌詞には(影を照らす)「光」という言葉が頻出し、悲しみを背負い前進していく意志をStanbridgeに捧げています。月並みな言葉ですが、死と愛が彼らをより強くしたのです。
前作において、彼らは己のアイデンティティーを3つの属性に分解しました。(北欧の)暗鬱さ、美しさ、そして抗い難い絶望感をそれぞれGloom、Beauty、Despairと名付け、3つのチャプターにして発表するという試みです。その過程で更に磨き上げられた彼らの魅力が、本作で再び一つに統合されているのは感動的ですらあります。クリーントーン中心の耽美なヴォーカル、アルペジオギター、分厚いキーボードサウンド、そしてストリングスを大胆に導入し、エキゾチックな雰囲気を醸し出す本作は過去のどのアルバムより美しい。そんな女性的な流線美を内包した彼らの新たなドゥーム・スケープが、意図的かどうかは不明として結果的にTrees of Eternityの遺作『Hour of the Nightingale』をオマージュしたかのようなものになっている事が、とてもいたたまれなく感じてしまう。ああ、一体どれ程の悲しみだったのだろうか。部外者である私には想像する事しかできないが、いちファン、いちリスナーとして唯一出来る事はただ本作を真正面から受け止めて、一心不乱に楽しむ事だけです。少なくとも、それをさせてくれるだけの圧倒的なクオリティーが備わっているのだから。
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Posted by あっきー(akky)
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ディスカッション
コメント一覧
素晴らしいレビューをいつもありがとうございます。
swallow the sunのNew albumはリリースからずっと聞いてしまっています。
前作からより美しくなっているサウンドは、まさに「影を照らす光」の様でした。
私も一人のリスナーとして一心不乱に聴き続けたいと思います!
>yuさん
お返事が遅くなってしまい大変申し訳ありません。
前作でも示された彼らのアイデンティティ”Gloom、Beauty、Despair”が
コンパクトに凝縮されていて、美しく、スマートな作品ですよね。
本作の背景に思いを馳せつつ聴くと、切なさを越え、導かれるように勇気が湧いてきます。
昔のヘヴィなメロディック・ドゥームをやっていた頃の彼らも素晴らしかったですが、
視野を広げて色々と挑戦する今の彼らも魅力的です。
次はどんな表現のアルバムをリリースするだろうかと、
期待を膨らませてくれる事に一ファンとして喜びを感じます。