Soen “Lotus”

Country : Sweden

Release : 2019/2/1

Label  : Silver Lining Music

Genre : Progressive Metal

Sample : Youtube

Tracklist : 

  1. Opponent
  2. Lascivious
  3. Martyrs  ★オススメ
  4. Lotus
  5. Covenant
  6. Penance
  7. River
  8. Rival
  9. Lunacy

去年12月の先行公開曲”Martyrs”のミュージックビデオを見た時、「自由だなコイツら…」と思ったものです。今にして振り返れば、その時すでに彼らの術中に嵌っていたのかもしれない。2017年初頭にリリースされた前作から2年振りの新作、『Lotus』は彼らが身をもって「自由たれ」と啓蒙してくれるアルバムだったのだから。

その内容については本作も文句無い出来。ほぼアナログ機材だけを用いてレコーディングされた事が触れ込みだった前作を上回る、アンティーク調の美しいプログレッシブ/オーガニック・メタル。変更があったというギタリストも前任と遜色ない仕事をし、ヴォーカルはこれまで以上に流麗なメロディーを歌い、ベースとドラムはパワフルなだけでなく時にジャジーに、メリハリの効いた演奏で心地良いグルーヴを生み出します。またミキシングをDavid Castilloが一任され(前作ではいちエンジニアとしてクレジットされていた)、Jens Bogrenがマスタリングを行っています。前作の時点で「これ以上があるのか」と思われていたサウンドスケープの美麗さが、本作で更にレベルアップしている事は驚嘆するのみ。

それよりも、個人的に終始関心の的だったのはタイトルに何故「Lotus(蓮の花)」が選ばれたのかということ。

蓮の花は、実は真水や澄んだ水では育ちが悪く、むしろ泥水のような汚れた水の上でこそ大輪を咲かせる花です。立ち上がった花や葉は泥そのものに汚染されることがなく、必ず美しく咲くといいます。その崇高さはヒンドゥー教や仏教などで神聖なものとして扱われ、国花として採用する国も少なくありません。

“Martyrs”のミュージックビデオを見て、あなたは思わず醜いと感じたかもしれない。そして私はそれを咎めたいとも思いません。自分の人生観や哲学と異なるものを受け入れるのは難しい事ですからね。私たちは弱く、変化を嫌い、つい昨日と同じ自分を維持したがる。それでも、このアルバムのコンセプトを想像しつつもう一度観てみれば、女装し堂々と街を歩く彼らの姿に凛とした美しさを感じませんか?あるいは羨望感を?私が目にした海外のインタビュー記事で彼らはこのように語っていました。「バンドにいると自動的に、ほとんどの人がしないような…何かを言ったり、自分の考えを表現するためのプラットフォームができる。――私たちは世界を変えようとしているのではなく、自分の考えを表現し、私たちの周りで何が起こっているのかを振り返るだけです。」

自分の思想と合わないものを拒絶し恐れ、見えないふりをする。本当の自分を曝け出さず、多数派に合わせたペルソナを被り続ける。それはとても「楽」なことかもしれない。でもそれで本当に幸せになれるんだろうか?結果として訪れるのは孤独であり、空虚感であり、仮初の承認欲求を満たすための空っぽな争いばかりではないだろうか?本作の歌詞からは、そんな警鐘が聞こえてくるようです。

私たちを取り巻く環境は決して清らかなものではありません、不条理や無慈悲、搾取の悪意がそこかしこに散らばっています。そんな状況では抜け出す事よりむしろ自分を偽ってでも適合しようとするのも無理はありません。しかし厳しい現実を直視し、変化を受け入れられるならば私たちはいつか「蓮の花」のようになれるかもしれない。汚泥を這い上がり、凛と咲く蓮の花に。