iamthemorning “The Bell”

Country : Russia

Release : 2019/8/2

Label : Kscope

Genre : Acoustic / Chamber Rock / Progressive Rock

Sample : bandcamp

Tracklist : 

  1. Freak Show
  2. Sleeping Beauty
  3. Blue Sea
  4. Black And Blue
  5. Six Feet
  6. Ghost Of A Story  ★オススメ
  7. Song Of Psyche
  8. Lilies
  9. Salute
  10. The Bell

ロシアはサンクトペテルブルグ出身のアコースティック/チェンバーロックデュオ、iamthemorningの最新作。

「世界の工場」という代名詞でも知られる他国を圧倒する工業力、世界金融の中心を握ったシティ・オブ・ロンドン、あるいはインド植民地支配の確立など、工業・金融・領土全てにおいてイギリスが最も繁栄した19世紀、当時の統治者ヴィクトリア女王をなぞり「ヴィクトリア朝」と呼ばれるその時代は、文化・芸術分野においても嘗てなく華やかだったと聞きます。しかし光あれば影ありと言うべきか、工業化に伴う公害問題や、人口集中に伴う衛生インフラの不足、スラム問題、そして社会進出を果たしながら、その生活様式は厳格な階級制度に縛られた女性たちの葛藤があったとも。前置きが長くなりましたが、本作「The Bell」はそんな19世紀イギリスのスコープから、今を見通した作品。私たちの精神は2世紀前から進歩しているだろうか?と問いかけます。

グランドピアノでクラシカルな音色を奏でるGleb Kolyadinと、透き通る歌声とアコースティックギターを操るMarjana Semkina。この完璧なデュオに加え、ギターのVlad Avy、ベースのZoltan Renaldi、ドラムのSvetlana Shumkovaの他、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ハープ、マリンバ、サックス、トランペット、そして故郷のサンクトペテルブルグ・オーケストラをバックに、当時の古典的な華やかさと、そこに影差すどろどろした悲哀がこれ以上なく美しく表現されています。可憐なハープの導入から、フラメンコ調のギター&ハンドクラップ、そしてヘヴィなロックアンサンブルへとスムーズに移行するプログレッシブなオープナー#1. Freak Show、雪の様に繊細なピアノと、哀愁溢れるMarjanaの弾き語りが優しく身を包み込む#3. Blue Sea、開放的で少しあどけなさを感じさせる歌声と軽やかなタッチのピアノがどこか牧歌的な風を吹かせる#6. Ghost Of A Story、どこかなだめる様な歌メロに美しく折り重なるハーモニーが幻想と畏怖を抱かせる#7. Song Of Psyche、アコーディオン、マリンバ、ハープ、トランペットなどバラエティーに富んだ楽器が多数登場する華やかで演劇的な#9. Salute、そして物悲しさ極まるクライマックスナンバー、ピアノと歌だけで紡がれる至上のメランコリック・バラード#10. The Bellが個人的キートラック。

精神疾患をテーマにした前作「Lighthouse」もそうでしたが、悲哀や苦痛、病といった人間にとって負の側面を繊細な美しさをもって奏でる事にかけて、iamthemorningは突出しています。「The Bell」もやはり少なからず悲劇的な雰囲気を纏った作風であり、固有の魅力やアイデンティティーは引き続き維持されています。私達ファンは本作を今まで通りに楽しむことができ、またレベルアップした表現力に驚き、浸り、感動することでしょう。ヴィクトリア朝時代という明確な世界観的後ろ盾によって没入しやすく、これまでのレコードより華やかで叙情的なメロディーに満ち溢れた本作は、迷いなく傑作と言って差し支えない出来であり、バンドに初めて触れるという方にも優しい作品です。是非、多くの音楽リスナーに触れて欲しいですね。