Sampa The Great “The Return”
Country : Australia
Release : 2019/9/13
Label : Ninja Tune
Genre : Hip Hop / Rap / Soul
Sample : bandcamp
Tracklist :
- Mwana (feat. Mwanje Tembo, Theresa Mutale Tembo, Sunburnt Soul Choir)
- Freedom
- Wake Up (Interlude)
- Time’s Up (feat. Krown)
- Grass Is Greener
- Dare To Fly (feat. Ecca Vandal)
- Any Day (feat. Whosane)
- OMG
- Light It Up (Interlude)
- Final Form
- Heaven (feat. Whosane)
- Diamond In The Ruff (feat. Thando, Krown)
- Leading Us Home
- Summer (feat. Steam Down)
- Brand New (feat. SILENTJAY)
- Give Love (Interlude)
- The Return (feat. Thando, Jace XL, Alien, Whosane) ★オススメ
- Don’t Give Up (feat. Mandarin Dreams)
- Made Us Better (feat. Blue Lab Beats, Boadi, Lori)
アフリカ大陸南部に位置する国ザンビアに生まれ、その後ボツワナで育ちながら、今はオーストラリアを拠点に活動しているという稀有な経歴を持つヒップホップアーティスト、Sampa TemboことSampa The Greatによるデビューアルバム。
Sampaはこれまでに、Kendrick LamarやThundercat、そして当時のレーベルメイトHiatus Kaiyoteらからツアーサポートの指名を受けるきっかけとなった『The Great Mixtape』(2015)、そしてAustralian Music Prizeにてベストアルバム賞を受賞した『Birds And The BEE9』(2017)という2枚のミックステープをリリース。その実力に比して北米での知名度はまだまだなようですが、いずれ北米のみならず世界的な実績を収める可能性を秘めた原石的アーティストです。
個人的に彼女の音楽に魅力を感じるのはヒップホップに留まらず、ジャズやネオソウル、ファンク、レゲエ、そしてルーツであるアフロビートをシームレスに組み合わせたソングライティングの幅広さと、特に前作で顕著だった打ち込みとアコースティック楽器を絶妙にバランスさせたサウンドアレンジにあります。それらは本作『The Return』においても顕著で、作風は『The Great Mixtape』のビートとサンプリングの重さ・鋭さと『Birds And The BEE9』のスピリチュアル、アコースティックな柔らかさを内包したハイブリッド。これまでの彼女の美点が目一杯詰まったデビューアルバムとなりました。
デビュー作にして『The Return』と銘打った事について、アイデンティティーを人一倍大事にする彼女らしさを感じました。レコード(会社)の奴隷になる事を否定し、オーストラリアのヒップホップアーティストとしてではなく、ザンビア人としてのSampaの物語が綴られた本作。故郷を離れても自分を見失わないようにと、ある種健気までに自意識を守ろうとする強烈な意志が伝わってきます。様々なジャンルを自在にクロスオーバーする彼女の音楽において、しかし一貫性を持った作風に仕上がっているのはそういった意志も反映されてのものかもしれません。
本作では2015年の1stミックステープ以降、一気に広がった人脈を駆使し各方面からの強力なメンバーが脇を固めています。JonwayneやMsM、またHiatus Kaiyoteでの仕事で有名なAndrei Ereminがミキシング・エンジニアを務め、イギリスの注目株ラッパーSlowthaiのプロデューサーKwes Darko、Hiatus Kaiyoteのバック・ヴォーカリストJace XLとのコラボEPで注目を浴びたメルボルンのSilentjayらがプロダクションを担当。その他にも南アフリカ生まれのオーストラリア人シンガー/ラッパーであるEcca Vandalや、ロンドンのジャズ集団Steam Downらとのコラボレーションが実現しました。才能に富んだ彼女のデビューアルバムに相応しい音質と、更にゴージャスになった音楽性。これ以上求めるものはありません。
曲単位で見ていくと、#1. Mwanaやダンサブルな#8. OMG、大胆なサンプリングが話題を呼んだ#9. Final Formのような即効性のあるトライバルなナンバーと、#2. Freedomや#5. Grass Is Greener、#11. Heaven、#15. Brand Newのようなスピリチュアルなミドル~スローテンポのナンバーを中心に、細かい間奏を交えながら進行していきます。その中でも#13. Leading Us Homeのようなトラップ的なハイハットを採り入れたこれまでに見られなかったような楽曲や、ラストの#17. The Return~#19. Made Us Betterまでの長尺曲3連発が本作で目を引く部分です。長尺曲については前作の”Bye River”のような例はありますが、本作でここまで強調してくるとは思いませんでした。しかし尺の長短に質が左右されることなく、ダレる事無くアルバムのクライマックスを飾っています。
自分が何者であるかを明確に宣言した本作。その立ち位置はこれからも変わっていく事は無いでしょう。しかしキャリアとしてはまだスタート地点に立ったばかり。彼女の旅が今後どのような道程を辿るのか、今後も楽しみに見守っていきたいと思います。
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