Leprous “Pitfalls”

Coutry : Norway

Release : 2019/10/25

Label : Inside Out Music

Genre : Progressive / Experimental Rock / Electronic

Sample : Youtube

Tracklist : 

  1. Below
  2. I Lose Hope
  3. Observe the Train
  4. By My Throne
  5. Alleviate
  6. At the Bottom  ★オススメ
  7. Distant Bells
  8. Foreigner
  9. The Sky Is Red

ノルウェーのプログレッシブ・ロック/メタルバンド、Leprousの最新作。前作に引き続き
Inside Out Musicからのリリース。

同じ場所に足跡を残すことを嫌い、作品を重ねる毎にジャンルの檻へ穴を開け続けてきた実験者集団Leprous。そんな彼らが粋を尽くした前作『Malina』(2017)は、オルタナティブロック、マスロック、ジャズ、エレクトロニック・ミュージックからのインスピレーションを想起させる非常に進歩的かつ美しいアルバムで、プログレッシブ・ロック/メタルの明るい未来を期待させる傑作でした。そこから更に2年、後退の2文字が辞書に無いLeprousが本作で行き着いた境地はというと、「プログレッシブ・ロック/メタルの明るい未来」なんぞ生ぬるいものではなく、数10年間かけて凝り固まった「プログレ」のイメージを融解し、現代のメインストリームにも沿った形で再構成した前人未到の秘境でした。

本作における変化は、これまでの作品で象徴的だったJens BogrenやTony Lindgrenという「メタルサイド」のエンジニアが消え、Adam Noble及びRobin SchmidtというThe 1975やWolf Alice、Pale Waves、Auroraといった面子を手掛けた経験を持つ「オルタナ/ポップサイド」のエンジニアを新たに招いている事に集約されます。つまり本作からはヘヴィメタルの情景はほぼ消え去っており、ロックミュージックですら多様な情景の中の一形態でしかありません。大胆な打ち込みの導入や派手なストリングスセクションによって、ポップ/ダンスミュージックに聴こえる事さえあります。あるいは孤高に揺らぐEinarの歌が、ソウルの香気を漂わせるかもしれません。音の壁が消え去り圧倒的に広がった音響空間において、繊細に且つ力強く木霊するリズムとメロディーが、Leprous特有の虚ろでありながらドラマティックな世界観をこれまで以上に緻密に組み上げています。ロックとメタルの世界の外から鳴らすプログレ、という意味ではSteven Wilsonの最新作やDownes Braide Associationのような例もありますが、ここまで現代のストリームにコミットした作品は初めてではないでしょうか。

アルバムオープナーを飾る#1. Belowは、Einarの爆発的なオペラティックボイスに意識が向きがちですが、スローで破砕的なドラム、ゆらゆらと不定形なギター、重厚な弦楽器とコーラスが交互に押し寄せるバックサウンドも面白い。続く#2. I Lose Hopeはヒップホップ風なベース&ドラムが印象的なダンシーな楽曲。#3. Observe the Trainは煌くストリングスとアンビエンスが美しい幽玄なバラードで、#4. By My Throneは変則的なリズムと粘り強いヴォーカルワークが奇妙なドライブ感を生み、#5. AlleviateではEinarのファルセットとストリングスの美しいユニゾンが波のように押し寄せる。アルバムの前半だけでお腹いっぱいになりそうな程、ギミックに富んだ実験性の強い内容になっています。

打ち込みのリズムと共に、アルバム後半の開始を静かに告げる#6. At the Bottom。攻撃的な中盤から、美しいストリングスパートへと山なりに展開する本曲はこれまでとこれからの彼らを総括したかのような楽曲で、個人的にアルバムで最も気に入っています。儚く繊細なピアノと歌によるチェンバーミュージックから、最後に爆発的なポストロック的展開へともつれ込む#7. Distant Bells、The Pineapple Thiefの『Someone Here Is Missing』を想起させるようなソリッドなギターリフの応酬がカッコ良い#8. Foreigner、最後は超越的なクワイアとDjent風アンサンブルによって宇宙的畏怖を植え付けられる#9. The Sky Is Redで幕を閉じます。

Leprousは本作に関するインタビューのいくつかで「『Pitfalls』は誰にも期待されていないアルバムだ」と語ったとの事ですが、それは「誰にも想像が出来ない程に革新的なアルバム」という意味で実現しています。本作での変化は凄まじいものですがLeprousとしてのアイデンティティーはしっかり継承されており、実際のところ『Malina』を聴き通せるファンであれば歓迎する方が殆どではないかと思います。実験性と完成度が極めて高いレベルで両立された傑作です。