Portico Quartet “Memory Streams”

Country : UK

Release : 2019/10/4

Label : Gondwana Records

Genre : Jazz

Sample : bandcamp

Tracklist : 

  1. With, Beside, Against
  2. Signals in the Dusk  ★オススメ
  3. Gradient
  4. Ways of Seeing
  5. Memory Palace
  6. Offset
  7. Dissident Gardens
  8. Double Helix
  9. Immediately Visible

マスロックやアンビエントの衣を纏いながら独自のミニマリズムを探求するUK産ジャズ・カルテット、Portico Quartetの5thアルバム。マンチェスターのGondwana Recordsからのリリース。

サックス、ドラム、ベース、そしてハングドラムの4人による奇妙なエコーは、2007年の1stフルアルバム『Knee-Deep In the North Sea』で大きな産声を上げます。綿密かつ抑制された演奏、慎重なメロディーライン、しかし驚くほどに甘美な味わいのそれはデビュー作らしからぬ完成度で、当時のマーキュリープライズにもノミネートされたほど。e.s.t.の実験性を受け継ぐ新たなバンドはGoGo PenguinやMammal Hands等が名を馳せていますが、彼らはより早く頭角を表しました。

新作『Memory Streams』の音楽性はこれまでの延長線上にありますが、前作『Art in the Age of Automation』程に豪勢なストリングスは存在しないし、そのスピンオフ作品『Untitled (AITAOA #2)』程、実験的な内容ではありません。しかし間違いなく、過去のどのアルバムより洗練されています。徹底的に吟味されたであろう引き算の美学、極限まで肉の削ぎ落された電子音楽的ジャズ。アルバム全体に施された深いエコー処理、そしてハングドラムの優しく、しかし張り詰めたソナー音が私たちを深海の旅へと導きます。

旅の始まり、目まぐるしいドラムとハングドラムの狂宴#1. With, Beside, Againstによって幕を開け、ハングドラムの機械的シグナルと物悲し気なサックスが孤独の世界を演出する#2. Signals in the Dusk、一転して、煌く銀盤のエコーが神秘的に木霊する#3. Gradient、ループするチャイムとドラムに合わせ、ムーディなサックスがうやうやしく舞う落ち着いたダンスナンバー#4. Ways of Seeing、そして#3. Gradientの主題がエコーするインタールード#5. Memory Palaceで前半が終了。続く#6. Offsetはメロディアスなハングドラムとベースに乗っかって、隆起するサックスの音色がステージを瞬く間に幻想色へと染め上げます。#7. Dissident Gardensはオルガンのループがとにかく印象的。らせん状に昇華するサックスと美しい銀盤の音色も。#8. Double Helixでは緊張感を伴うストリングスの波が押し寄せ、発狂の渦中へと叩き落とす様が表現されます。そして最後は、虚ろなハングドラムのシグナル残響の中でサックスとドラムが爆発する#9. Immediately Visibleにてアルバムの幕が降ります。

全体が壮大なクレッシェンドとなっていて、曲を追うごとに深みと広がりを増していく作品。アコースティックとエレクトロニックを繋げるハングドラムの演奏と、抑制と情熱の間で唸りを上げるサックスの音色にとにかく魅了されました。稀代のミニマリスト達による傑出した本作は、読者が今年聴くアルバムの中にもノミネートされるべきです。